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月へ唄う運命の唄
prologue...00

「桜(サクラ)様!桜様!」

――どうしたのかしら。何やら外が騒がしいようだけれど。

「桜様!…桜様ぁ!!」

――もう、私を探しているのなら、居場所はもう決まっているのですから叫ばずとも速やかに此処まで来ればいいのに。

「桜様!さく……!?…!」

――あら?妙な所で声が…?

「見つけたぞ!!長(オサ)!長!こんな所にいました!」

――いつもの小間遣いではない…この出で立ち…装束………!まさか!…っ

「…ふん、身構えるのが瞬き一つ分、遅い。心構えを整えるのが二つ分、遅い。残念だ。危険視されたが故に、山へ捨てられ野垂れ死んだはずが、まさかの生存」

――…知って…いる、のですか。…と、いうことは、里の…暗部…

「ご明察。…続きだ。その幼子を哀れと思い拾った、とある武家に引き取られ、並の女子として育てられていては、さしもの貴様とて腕は鈍る」

――…恨むなら、養父母を恨めと?…普通の子として、女…として、幸せを与えようと、してくれた方々を…うら、め、と…?

「違うな。悔やめ。里を甘く見た事を。鍛練を怠った事を。そして、逝け」

――あ、く…!…っ…。

駄目、命が尽きる。灯が消えてしまう。小さくなるのが見える。消える前に、術式を…!

ごめんなさい、育ててくれた父上、母上。

…ごめんなさい、

…あね…う…え……………………


「…尽きた、か」

くるり、男は踵を返すとその場から去ろうと脚を動かす。
動かそうとして、ちらりとその背中越しに横たわる女を見やり、哀しげに眼を細めて。
今度こそ、脚を静かに動かし始めた

――最期に何をする気であったかは知らぬが、発動前に灯が消えてはどうにもなるまい。

「…お前の幸せは来世で見つけてくれ」

ぽつりと溢した、誰にも聞こえない声。
だがしかし、その言ノ葉は確かに世界に溶けていったのであった。

2011/07/19

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あきゅろす。
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