クライトの非日常的な日常
消したい記憶V
クリス『フフ…油断しましたね…』
イワン『クレイブ…すまない…』
フ『ヌガァ』
足元のクリスを踏み潰し背後に居るイワンの首を尻尾で締める…
尻尾?
何故?
クリス『ガッ…』
ミシミシと音を立てるクリスの胸の辺り…このままではクリスが…
フ『クアァァァ』
頭を抱え壁に倒れ込むフェンリル
フ『貴様ら…よくも…』
ドクン
心臓が脈動するように体が震える
フ『お…俺が消える…俺はまたあの牢獄へ戻るのか』
体が少しずつ薄れ消えていく
フ『………俺は自由だ………牢獄などに戻ってたまるか』
その瞬間足元に呪印が発生しその光が全身を包む
体が元の姿を取り戻し体の自由が戻る
ク『体が動く…どうして…?』
フ(俺は貴様の体を借りて眠る…)
イブ『なっ』
フ(お前はやがて俺に肉体を明け渡し、俺の代わりに封印の牢獄につながれる…そうなれば俺の封印は不可能となる…)
イブ『やめろ』
フ(無力な人間…希望を失い肉体を明け渡す日を待ちわびているぞ…これはしばしの別れの挨拶だ…受け取れ…)
フ『カァーー』
その吐き出された光弾は町を焼き払い城を一瞬の内に融解させる…
あまりの出来事に言葉を失い、放心するクレイブ…沢山の城詰めの人間や家族が…そして町の人の命を一瞬で奪い高笑を上げるフェンリル
フ(最後のプレゼント…気に入ったか?…クレイブ、絶望に身を堕としたその時に…)
イブ『あ…あぁ…町が…俺の家…どうして…どうして…』
?『ク…クレイブ、坊ちゃん…』
イブ『イ…イワン…』
そこには血まみれで大剣をつえに息絶え絶え歩いてくるイワンがいた
イワン『良かった…正気に戻った…みたい…だ』
倒れ込むイワンを支えてやる
イブ『イ…イワン…すまないわかってたんだでも体が効かなくて…』
イワン『知ってます…坊ちゃんが…魔族に魂、売るわけない、って信じて…ました…』
イブ『ゴメン…ゴメンよ…』
イワン『なら…この剣、形見代わりに持ってって…下さい…』
イブ『これは…』
イワン『もう…俺は…ながくありません、それなら剣だけでも坊ちゃんのそばに…いさせて下さい、坊ちゃん…』
体を地面に投げ出し剣を持ってくように訴えるイワン…
イワン『早く町を離れて…下さい…指して進軍を開始してるはずです…』
イブ『わかった…』
目にいっぱいの涙を浮かべイワンの指示を聞く…あえてイワンに一緒に行こうとは言わなかった、イワンの目は生きた人間のものではなくなり始めていた
?『坊ちゃん…俺の方にも来て下さい…』
クリスも呼んでいる…
クリス『すいません、イワンの話だけ聞いて行くつもりかと…』
普段はクールで長い髪をいつも後ろに掻き揚げる仕草の似合う男だが泥と血で見る影もない
イブ『そんなわけ…ないだろ…』
クリス『フフ…わかってますよ…イワンは何て言ってました?』
イブ『魔術騎士団がこっちに向かってるらしい、早く町を出ろって…』
クリス『で…餞別にその剣ですか…弱ったな…俺にも何か…そうだ、大剣を貸して下さい…』
大剣を彼の脇に置く
クリス『我が肉体に宿り集う魔力、この刃に宿り魔を封ぜる力と為せ…プリーストチェーン』
光の鎖が刃の周りに絡み付き消える…
クリス『坊ちゃん…絶対にこの剣を手放さないで下さい…あなたの中にある魔を少しでも長く封じてくれる…』
イブ『わかったよ…クリス?』
俺は地図から町を消し、2人の死を看取って町を後にした…
…続
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