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唐笠
6 八雲side
「っ!」

少し困ったようにどこか憂いをおびた笑みを浮かべた薫に動揺する。

目を伏せて軽く口元をあげた薫からは色気が漂っている。

何かフェロモンでも出ているようで目がそらせない。


どうしようもなく惹き付けられて、これが誘惑だとしてもそれもいいとさえ思わせられる。


話しかけたときからどこかおかしかった薫。
会話をしていても終始違和感を感じていた。


確かに顔は整っているがいつもおちゃらけていて、言うならば誰にでもなつく犬みたいなやつのはずなのに。
こいつの口からまさか敬語がでるとは本当に驚いた。


まるで別人だ。


「風紀委員長。もう行きますね。」

「っまて。」

「なんでしょう。」

「あ、いや‥」


思わず呼び止めてしまったが特に用なんてない。
なんとなく行かせたくなかった。

何て言ったもんか思い浮かばない。

「委員長?」

「いや、いい。これからはあんまサボンじゃねぇぞ。」

「はい。それでは。」

そのままあっさりと背を向けて去っていく。
そのことにも腹が立っている自分に気付き、苦笑いが浮かぶ。

ったく‥、なんだってんだ。
頭を冷やしたほうがいい。


後ろ髪を引かれながら、気にしないふりをして俺もその場から立ち去った。

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