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FINAL FANTASY VII
1









ーーぇ……、ねぇ!しっかりして!





「……、…ぁ?」



肩を揺すられ、自分に呼び掛けてくる声に意識を引き戻され、うっすらと目を開ける。



「よかった!気がついた!ねぇ、大丈夫?」

「……ぇ?…ぁ、あぁ。………………誰だ?」

「私はティファ。ティファ・ロックハート、あなたは?」

「……俺は…………おれ、は…」

「?」

「…ロイド……そう、ロイド・"セトラ"・コールフィールド」



ーー危なかった……記憶が飛びかけた…



自分はどれだけ記憶が飛びやすいんだと呆れながらロイドは目の前にいる女性を見詰めた。
長いストレートな髪を後ろでひとつくくりにし、クリっとした茶色の瞳に所謂ナイスバディという肢体を引き立てるような白いタンクトップにミニスカート。



ーーマティアスが見たら飛び付きそうだな……



呑気にもそんなことを思いながらロイドはちょうどティファの頭上で視線を止め、唖然とした。



「とりあえず、なかに入って?
お店の前にいたのも何かの縁だし…?どうしたの?」

「…いや、何でもない」



ティファと名乗った彼女の頭の上にはなにも見えなかった。



ーー…刑期がないってことは、市民ーシヴィリアンー……なのか?
いや、シヴィリアンは皆総じて短躯なはずだ。
だとすれば、元…咎人……でいいのか?



本人に確認すれば済む話なのだが、なぜかそれは躊躇われた。
今は聞くべきではないと彼の中のなにかが直感的にそう感じたのだ。
改めてティファに催促され、その"店"の中に入ろうとしたとき、ふと回りに目を向けて今更ながらに気づいた。


ーーアクセサリがいない…


常に自分を監視し続けている生体アンドロイドの姿がどこにも見えなかった。
ロイドは未だアクセサリと別行動できる権利を獲得していなかったから、自分の部屋とも言える"独房"の外の行動には常にアクセサリが同行しているハズなのだ。
現に彼はアクセサリと共に独房を出ていた。

そんな彼に追い討ちをかけるように次々と"情報"が彼の視界を通じて脳に叩き込まれる。


ーー…………………え?どこだ、ここ?


逆に今までなぜ気づかなかったと言うほど回りの景色はロイドの"常識"とはかけ離れていた。
荒廃した雰囲気は己がよく知っているモザイク街と似通っているのだが、明らかに違うのだ。
見たこともない文字、道行く人々はティファと同じく刑期がない……かといって刑期を終えた咎人にしては失礼だが、資源価値が見受けられなかった。
そもそもこれだけの多人数が刑期を終わらせられるのか?

空を見上げればその空を塞ぐように何かが建てられていた。
一度気づいてしまえば、そこから溢れるように沸いてくる疑問を無視できなくなってくる。



ーーここはどこだ?



ーー何でアクセサリがいない?



ーー何で誰にも刑期がない?



ーー今俺が踏みしめているこの資源はなんだ?



ーー何で……どうして…………










ーーどうして俺はここに来た経緯を思い出せない?









** ** **











「ティファちゃーん!おかわり!あと酒も!」

「はーい、ちょっと待ってて。
…ロイド?顔色悪いけど、本当に大丈夫?」

「…あんまり、大丈夫…じゃ、ないな……でも大丈夫だ」

「……つまり、大丈夫じゃないってことね」



ティファが覗き込んだ顔はまさに蒼白と言っていい程だった。
そもそもティファがロイドに気づいたのはティファの仲間の娘であり、彼女が営んでいるここ"セブンスヘブン"のお手伝いもしてくれるマリンという女の子のお陰だった。
普段は人見知りな彼女だが、常連さんのお見送りとして店先に出たとき、知らない人がいる!とティファに知らせに来たのだ。



「お兄ちゃん、大丈夫?」

「…あぁ、大丈夫じゃないけど……大丈夫だ」



カウンターに隠れながら聞いてくる女の子こそがマリン。
毎日と言っていいほど子供のような短躯なシヴィリアンを目にしてきたが、本当の意味で咎人でもない子供に出会ったことがないロイドは最初、文字通り穴が開くほどマリンのことを見詰めてしまったのだ。
元々人見知りな面があるマリンがそんな視線に耐えられるワケがなく、見事にロイドを怖がってしまった。

しかし、そんなマリンからも心配されるほど今のロイドは酷い顔色なのだろう……



「大丈夫じゃないなら素直にそう言いなさい!」

ーポスッ
「!」



自分が聞いたときとほぼ同じ反応を返すロイドの頭におしぼりを乗せると同時に、彼の目の前にひとつの料理を置いた。



「……」



目の前に現れた黄色いソレ…、上には赤いなにかが波線上に引かれ、全体的に丸っぽいモノだった。
ソレから漂ってくる香ばしい臭いは食欲をそそられるモノだったが……



「コレ、食べる…のか?…食べられる、のか?」

「「「「!!?」」」」



悲しいかなロイドはソレを"食べ物"だと認識することができなかった。
彼の目の前におかれたのは誰が見てもわかるだろうオムライスだったが、咎人である彼はそんな華やかな料理に出会ったことがなかった。
そもそも今まで食べてきたのはなんの味もしないただ栄養をとるためだけの物で料理と呼んでいいのか微妙なところだった。
…ついでに言えば彼は渡された"おしぼり" の意味も用途も理解していなかった。



「テメェ!ティファちゃんバカにしてんのか!?」

「は!?」

「そうだぜ兄ちゃん…いい年してんだから言っていいことと悪いことの区別くらいつくだろ?」

「???」



ロイドはただ純粋な疑問を口にしただけで、なぜソレがティファをバカにすることになるのか分からず、疑問符を浮かべるばかりだった。
そんなロイドを尻目にティファは険悪な空気になりつつある現状をどうすべきか迷っていた。
自分の料理を食べられるのか否かを聞かれたとき、不思議と怒りを感じなかったのだ。
むしろソレよりも驚きの方が大きかった。
言ってしまえば、ロイドの問い掛けはバカにするとかではなく、子供が親に「これなーに?」と聞くようなそんな純粋さがあったのだ。

その時、タイミングがいいのか悪いのか…今にもロイドに飛び掛かりそうな客越しに見知った大きな人影が見えた。











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マティアス・"レオ"・ブルーノ : Shazな親友(シャズなマブダチ)
ロイドの仲間兼ライバルでもある咎人。
「Shaz」という口癖を持っている。







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