[おはようございます] いつもと変わらない一日のはずだった。 いつもと変わらない感情のない電子音の声で目覚めて、 いつもと変わらない今日の予定を聞いて、 いつもと同じように貢献活動に勤しんで眠る。 いつもと変わらない視線を感じながら、アクセサリが言い終わらない内に立ち上がり、ボランティアに備え、装備を確認する。 起きてすぐ目にする大きな液晶に反射して見える、 己の残りの刑期。 { 0,875,623 } 最初の1,000,000に比べれば大分減ったように思えるが、124,377分のボランティアの間に随分たくさんのことがあったな、と思い返すと同時にまだまだ先は長い、と小さな苦笑をこぼす。 [本日のご予定をご連絡いたします] いつもと変わらないハズだった。 ようやく戻ってきたいつもと同じ日常が続いていくんだとなんの確証もなく信じていた。 [サイモンに会いに行く] 「!」 思わずバッとアクセサリの方に顔を向けるが、反応が帰ってくるハズもなく、いつもと変わらず俺を監視している。 --サイモン 妙な運命の照らし合わせで繋がりを持つことになった、妙な男…初めて対面した時も、丸腰にも関わらず圧倒的な何かを感じさせる男だった。 あえて言葉にするなら、そう…"神"のような…… ーーまたサイモンの気まぐれに付き合ってあげてネ フイに別れ際、サイモンの傍に寄り添っていた"彼女"が俺に囁いた言葉を思い出した。 彼らは時折なんの前触れもなく俺の"いつも通り"に滑り込んでくる。 サイモンの無茶なボランティアを遂行したのはまだ新しい記憶なのが余計にため息を誘う。 「気まぐれってこんなに頻繁に起こるものなのか? ……いや、だからこそ気まぐれなのか」 今度はどんな無茶なボランティアー気まぐれーを言われるのか、少し憂鬱な気持ちになりながら彼のもとへと向かう。 ……このときは、俺の"いつも通り"がしばらく奪われることになるとは思いもしなかった。 [いつでも声をお掛けください] 己の独房を出る際に決まって投げかけられるアクセサリの言葉…… それが俺が最後に聞いた"いつも通り"だった…… |