SIDE 双子 「くっ! このままではまずいか……」 『白皇帝の銀剣!』 シオンを助けるようにリオンが攻撃魔法を放つが鎧武者にはたいしたダメージが行かなかったのか鎧武者は平然としている。 「リオン……」 「全然、効かないね。シオ姉、これってもしかして絶体絶命ってやつ?」 口ではふざけたことを言っているリオンだがその目には今の状態を理解しているのか戦士の目をしていた。 「理解しているならそんなことを言うな」 チャキと剣を構えた剣を構えた瞬間、鎧武者の上から人が落下していた。 落下してきた人物は刀を構えていたのか鎧武者の肩部分に刀が突き刺さっていた。 「戒斗!?」 「戒斗さん!?」 「らしくないな」 鎧武者から剣を抜き、その上から飛び降り驚きの声を上げる双子と向かい合う。 「どうしてここに?」 「企業機密だ」 相変わらず無表情にいう戒斗になんだか差を見せ付けられているように思えてシオンはぐっと拳を握った。 「気をつけろ! そいつはまだ動いている!」 そんなとき、頭上からエリックが慌てた声を上げる。その言葉で戒斗達が振り返ると鎧武者がガチャガチャと音を立てて落ちあがるところだった。 『神……食ラウ』 鎧武者はチャキと音を立てて刀を構えると勢いよく突っ込んできた。それをシオンと戒斗が迎え撃つ。そして後衛ではエリックとリオン補助魔法などで二人の援護をしている。 嫌な均衡は平常に戻ったが果たしてこの先はどうなるか。 SIDE サハラ 「あらまぁ、地球には綺麗な子がいるじゃない」 水鏡を覗き込みながらサハラがうっとりと呟く。 「この子にはきっと紅が似合うわね。血のような紅が」 血に染まる青年を想像するだけでぞくぞくと鳥肌が立つ。その美しさは自分が集めたどのコレクションにも劣りはしないだろう。 欲しい。欲しい……ほしい、ホシイ、ホシイ……。 サハラの欲望があふれ出し、黒い風が渦を巻く。花瓶が音をたてて割れ、ブロンド像が倒れ、壁にかけてあった絵画も落ち、ついに窓ガラスが割れ黒い風が外に流れていく。 「きっと彼は美しい人形になってくれるわ」 フフフと笑いながらサハラは荒れ果てた部屋を出る。 もう風は止んでいた。 サハラは自分以外誰も入れさせない、宝物庫へとやって来た。そこにあるのは数多くの人形。 悪魔、天使や亜人、獣人挙句の果てにはアンドロイドまで実に様々な種族、年齢、性別の人形が並んでいる。唯一の共通点はどの人形も美しい外見をもっているということ。 けれどサハラはどの人形にも目を向けることなくまっすぐ奥へと進む。宝物庫の一番奥には赤い皮製の二人掛けのソファーがあり、サハラは優雅にソファーに腰掛ける。 まだ、隣に座らせることのできる美しい人形はいない。ただ、もしかしたらあの黒髪の人間を美しい人形にできたとしたら……。 そう考えるだけでサハラは歓喜の声を上げずにはいられない。 「ついに見つけたわ。わたくしの隣にあるべき美しい人形を……ね」 宝物庫にサハラの笑い声が響く。美しい人形達に囲まれた中でのその姿は異様な光景だ―――否、もしかしたらこれこそ本来の姿なのかもしれない。 残酷な魔王だからこそ、もっとも美しい姿で永遠の眠りについた人形を平然と観賞できるのだ。 「貴方はどんな声で鳴きながらわたくしの人形になるのかしら……ねぇ、鳳戒斗。ふふふ……さぁ、お前達行きなさい。そして彼を美しい血で染め上げて……真っ赤にね」 サハラの声に反応して人形達が動き出した。歓喜の声を上げながら地球へと向かう。 自らを死に追いやった相手を人形となった今では敬愛しているのだ。 人形師を愛してやまない人形達が人形師の最も愛する人間を狩りに行く異様すぎるその姿は……まさに、狂愛。 |