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>>03

SIDE:サハラ



どこまでも続くような長い廊下を一人の青年が明かりを頼りに歩いている。青年が歩くたびに規則正しい音が響く、やがて目的地の部屋に着いたのか扉を開け中に入いった。

青年は慣れたように明かりを近くのテーブルに置き、部屋の奥にあるベッドに視線を向ける。

「サハラ様、お目覚めになりましたか」

「ウェネストね。えぇ、眼が覚めたわ。明かりをつけて頂戴」

はい、とウェネストは返事を返し、指を鳴らす。するとパッと部屋の明かりがつき、ウェネストはサハラの足元に跪く。

「ウェネスト、わたくしはあなたの顔を見ていると胸が……痛いの」

「私もサハラ様を見つめていると胸が痛くなります」

「その痛みが私と同じなら嬉しい……」

「私もこの痛みがサハラ様と……貴方様と同じなら嬉しゅうございます」

「ウェネスト……」

「サハラ様……愛しております」

ウェネストは立ち上がり、サハラへと近づいた。そして、二人は強く、強く抱きしめ合う。

「私の心は貴方のものです」

「ウェネスト……」

「永遠に誓います」

そういってウェネストは再び跪き、サハラの右手を優しく取りその手の甲に口付けを落とした。



「これで満足ですか? サハラ様」

先程の熱い眼差しは何だったのかウェネストは無表情な表情で立ち上がり、サハラが好んでいるお茶を淹れサハラに差し出す。

「えぇ、上手くなったじゃない。堅苦しいあなたがここまで上達するとは思わなかったわ。そうそう、ウェネスト。おかしな夢を見たのよ」

「おかしな夢でございますか」

サハラは夢で見たことを話す。行ったこともない地球で、神を持つ人間を相手にしたこと。
それをウェネストはただ黙って聞いていた。

「なるほど、確かにおかしな夢でございますね」

そう言うウェネストの表情は変わらない。普通の人間なら少しは腹を立てるかも知れないがサハラは魔王、そしてウェネストの性格を知っていたので気にしていなかった。

「どう思う? ウェネスト」

「そうですね。夢の事もありますから作戦を変えましょう。内側から混乱させるというのはどうでしょうか。サハラ様に敬愛を送っているアンドロイドにコンピュータウィルスを作らせ地球にばら撒くのです。地球の技術ではアルタイルの技術には追いつけませんので……」

ウェネストは淡々と感情の篭らぬ声色で述べるとサハラの空になったカップにお茶を入れる。

「そうねぇ、いいかも知れない。ウェネスト、フィーナに伝えてきて」

「貴方様がそれを望むなら」

ウェネストはサハラに一礼すると、部屋を立ち去ろうとサハラに背を向けようとする。

「そうそう、ウェネスト。貴方に大事なものってある?」

「大事なものですか。……記憶にはございません」

そう、とサハラは呟くとウェネストに行ってもいいと腕でサインを送る。それを見たウェネストは失礼します、と立ち去った。



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