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>>04

『ダルクにとって、この石は何よりも手に入れたく、けれど何よりも触れたくないもの。だから、まだ大丈夫。でも、これを持つのは危険だよ。欠片とはいえ、ダルクの闇の力を持っているからね』

「俺の研究室はそこまでいい設備じゃねぇから、ずっと置いとくわけにはいかねぇーぞ。なぁ、ここにはそういう施設ないのか? ロシア軍と言えばアルタイルの機械技術が一番の所だろ」

エリックはしばし考え、難しい顔をしながら口を開く。

「一つだけ心当たりがあります。科学班チーフのカレン殿なら何とかしてくれるかもしれません」

「よし、じゃあ、そのカレンって奴のとこ行くか」

ハングがイスから立ち上がったところで、ドアをノックする音が聞こえた。
そして、返事を待たずにドアが開く。

「ハング先生、すいません。なんか向こうであったみたいで、皆さんキレッちゃってて中々話を聞いてもらえなかったんです」

入ってきたのは時也だった。
随分長い間、電話してたと不思議に思っていたが、よぽっどのことがあったのか、顔色が悪い。

「お疲れ。この魔石だがな、ちょっと問題があってうちじゃ管理できなくなった。これから科学班のとこ行くけど、お前も来るか?」

「勿論、行かせてください」

魔石のこともあったが、ロシア軍の科学技術が見れる、ということもあって時也は二つ返事で返した。

二人はエリックの案内で科学班の研究室を目指す。
人の気配がだんだんと無くなり、窓の数も減っていく。
地下へと来たのか、いつの間にか人口の明かりしかない、薄暗い廊下を歩いていた。

「凄い場所にあるんですね」

「私もここへ来るのは初めてですが、研究者というのは、こういった暗い場所を好むのですか?」

ハングや時也からのイメージでは、そういった物を感じはしないが、もしからしたら彼等も研究の事では人が変わるのかもしれない。

「暗い場所……つーより、人気のない場所が好きだな。研究の邪魔はされたくねーし。たぶんカレンも人をさけたら、ここへ来るしかないってだけだろ」

ハングは自分を含め、様々なタイプの研究者達を見てきたが、どんなタイプでも共通することはただ一つ。
自分の研究の邪魔をされるのを何よりも嫌うということだ。
そのせいか人気を避ける傾向にある科学者達は変わり者と言われ続けてきたのだ。

「そうなんですか……。あぁ、ここが科学班の部屋のですね」

エリックがドアをノックすると、「どうぞ」と女性の声が聞こえた。

三人が部屋の中へ入ると一人の女性が部屋中に散らばる書類を掻き集めていた。

「ごめんなさいね。今ちょっと手が離せなくて。もう少し待ってくれます?」

机の上にはよく崩れないな、と思わせるほどの書類が山のように積まれている。
さらに、その山の上へ彼女は手に持っていた書類を重ねた。

「ふう。これで良し……。待たせてごめんなさいね。えーっと、初めましてよね? 私はカレン。ここのチーフをしているわ」

ふりかえり、笑顔を向けるカレンを見てハングは口笛を吹いた。

(黒人か、ここらじゃめずらしーな)

後ろ姿では分らなかったが、カレンはロシアでは滅多にお目にかかれない褐色の肌をしていた。

肌とは正反対の明るい金髪に、紫色の瞳。
シンプルなデザインの眼鏡と白衣。
大人の女性を思わせるスタイルの良さ。

(それにしても、俺好みのねーちゃんだな……)

「クロフト軍医……でしたよね。何か私に用ですか?」

「カレンチーフに用があるのは私ではなく彼等です」

エリックが一歩、横にずれるとハングと時也は軽く頭を下げる。

「俺はハングレイブ、こっちが時也。俺達はアルタイルの研究をしているんだが、ちょっと保管が大変な物をみつけっちまってな」

「それで、私の所で保管をしろと? とりあえず物を見せていただかないと……」

ハングが時也に目で訴えると時也は頷いてバッグから小箱を取り戻した。
ハングが小箱を開けると闇色の魔石が顔を出す。

「ただの石……ではないですよね?」

「あぁ、どうやらアルタイルから流れてきた魔石らしいが……暫くここに置いてもらえないか」

魔石の持つ力を読み取ろうとしているのか、カレンは無表情で魔石をじっと見つめている。
小箱を持っているハングですら冷や汗を流すくらい、何もかも見透かそうとしている瞳。
その眼差しがふと反らされて、彼女は苦笑いしながら返事をした。

「保管は恐らく出来ると思いますが、私も見たことの無い魔力を含んでいるようですから、安全にとは言い切れません」

「あぁ、それで構わない。宜しく頼む」

ハングはほっと一息ついてカレンに小箱ごと石を渡した。
これで、自分への害が無くなる……と、緊張を解き、安心した表情を見せた。

「はい、ではお預かりしますね」

カレンがガラスケースに石をしまうのを見てから、ハング達三人は部屋を出た。

軍の入口までエリックに送ってもらい、挨拶をしてからハングと時也は自分達の研究所へ戻るため、駅へと向かった。



ACT.14 魔石の、調査 END



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