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見知らぬ土地とウサギ人間





『あ、れ…?』




私は目を開けた瞬間、もう一度目を閉じたくなる衝動に駆られた。目の前は一面木、木、木。道なんてものはなく、ただ草木が生い茂っているだけ。
上を見上げると星が輝いていた。だが、辺りは明るい。空だけが暗いというなんとも矛盾したこの場所は、どこなのだろうか。




ついでに、さっきから視界に入れないようにしていた物体も謎だ。
そう、強いて言えばそれは……人、に近い。白のシルクハットを深く被り、白いスーツを着てそこの切り株に座っている。そこまでは完璧に人間なのだ。
だが、シルクハットの下、いや中から出ているものが明らかにおかしい。普通人間には無い。現に私にもそんなものは無い。









シルクハットからはみ出しているもの、それは――――……白く、長い耳。そう、それはよく知っている動物の耳にそっくりであった。





『(うさ、ぎ…)』




作り物なのだろうか、なんて思ってみたが、それはあまりにも良く出来過ぎていた。さらに時折ピクリと動いた。それは間違いなく本物だと、認識してしまった。




俯いているので、顔は見えない。だが、間違いなく置物だと信じたかったうさぎ人間が言葉を発した。



「よぉ、姫」


『!!』



その声は男の子の低くもなく、高くもないものだった。そして今、言われた短いものの中で納得できない単語が聞こえた。



『………姫?』



何の話なんだろう。生憎私はただの一般人であるし、そんな王族とは全く関係がない。



「とうとう来たんだな」



私の問いかけはまるで無視のようだった。そしてこの人(?)はまた訳の分からないことを言う。



『とうとうって……』


「記憶を、探しに来たんだろ」



記憶?記憶って、思い出だとか、あの人間の脳にあるもののこと?私は記憶喪失になった覚えはないし、そんなもの探そうとした覚えもない。



『記憶なんて探してないんですけど……』


「さぁ、行こう」



……………彼(?)の中で私の問いかけは無意味なものらしかった。会話が全く成立しない。


彼は切り株から立ち上がり、顔を上げた。その顔はやはり人間。でも普通と違うのは、目の色が赤だということ。
もう一つは、やはり白い耳は生えているんだということ。ああ、目眩がする。
















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