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小説(魔法少女リリカルなのは:二次創作)
第10話 『ファースト・アラート 4』





 進行を妨げるガジェットを駆逐しながら進み、目標の第7車両へと近付いていく。
 途中で屋根の上を走るエリオ達を合流し、第8車両の屋根を通過しようとした瞬間。


《 危険です、下がって 》

「っ!? エリオ、キャロ、下がれ!!」

「えっ?」

「きゃっ!?」


 ブレイブハートの警告に、2人の襟を引っ張って無理矢理後ろへと飛ぶ。
 すると、直前まで俺達がいた場所を、ガジェットの機械の豪腕が屋根を吹き飛ばして通過した。
 あっぶねぇ……直撃してたらリニアレールから落ちて、崖下へダイブするとこだったな。


「一体どんな奴が……ってデカっ!?」


 突き破られた屋根から見えたのは、第7車両への扉を護るように鎮座した、球型の大型ガジェット。
 でか過ぎだろ、俺よりも上背あるぞ!?


「新型かよ、厄介な!」

「でも、やるしかないですよ!」

「わーってる! エリオ、キャロ、殴られるなよ!?」

「「はい!」」


 羽を広げたフリードよりも更に太いガジェットのアームを見ながら、2人に注意する。
 あんなので殴られたら、俺ならともかく子供2人は一発KOされちまう。


「くるぞっ!!」

「「!」」


 高速で迫る2本のアームを、全員でバラバラに飛んで避ける。
 なんだアイツ、あんなデカイ癖にスピードあるとか、ゲームだったらクソゲー認定だぞ畜生!


「キャロ、フリードでブラストフレア! お前は威力強化準備!」

「はい! フリード、ブラストフレア!」

「きゅく〜〜〜っ!!!」


 フリードの口元にできた火の玉を、俺の魔力で包む。
 即席の多重弾核だ、通ればそれなりで効くだろ。


「ファイア!」

「きゅっ!!」


 吐き出された炎の弾丸が、ガジェットに迫る!
 これで決まれば……っておいおいおいおい!!!


「う、打ち返した!?」

「何じゃそりゃあっ!!」


 あろうことか、大型ガジェットはそのアームでフリードの火の玉を殴り飛ばしやがった。
 何その硬さ!? 反則じゃねぇの!?


「くっそ、エリオ! キャロに威力強化して貰ってストラーダで突っ込め!」

「分かりました! うおりゃあああああっっ!!!」


 咆哮と共に、ストラーダに雷を纏わせてエリオが切り掛かる。
 威力強化さえしちまえば、あいつのストラーダは大概のモノは切れるから、これなら何とか……!


「でやあっ!!」


 ガキィンッ!!


「って嘘ぉぉっ!?」

「くっ、硬っ……!!」


 ある意味頼みの綱だったエリオの刃は、AMFも発生してないガジェットの装甲に止められた。
 いやいや、無いから! 硬すぎだから!!
 ……ん? 待て、AMFが発生してない……って事は!?


「エリオ、離れろ!!」

「え?」


 エリオに声を飛ばしたが、遅い。
 ガジェットの3つあるオレンジのカメラが光を放つ。


「くそっ、多重弾核!!」

《 Yes. 》


 援護する為にスフィアを展開しようとするが……AMFが発生した瞬間にその全てが掻き消える。


「ええっ!?」


 驚いたキャロの声に振り向けば、威力強化していたキャロの魔方陣も消えている。
 嘘だろ!? あいつからここまで10m以上離れてんだぞ!?


「……そうか、本体がデカイんだから、その分AMFの出力が増えててもおかしくないってか」


 ちっ、何で気付かなかった俺!
 気付いてたら、もう少し対策の立てようも……いや、それを嘆くのは後だ。
 今はまずエリオの援護を――


「くうううっ!!」

「エリオっ!?」


 苦しげなエリオの声に、慌てて破れた天井から中を窺う。
 そこにはストラーダでガジェットのアームを受け止めているエリオ。


「大丈夫か、エリオ!?」

「は、はい! 任せてください!!」

「……よし、じゃあちょっとだけ耐えててくれ! 対策を考えてすぐに援護する!!」

「分かりました!」


 情けない話だが、ここで俺が行っても何にもならん。
 なら、一旦エリオに任せて俺は打開策を考えるべきだろう。
 エリオに指示を飛ばしてから、ちょっと距離をとって思考に専念する。


(どうする。AMFがある限り魔力行使は難しい……かといって、エリオ一人であのデカブツを抑えるのは無理。
 ……ん? そういやAMFには有効範囲ってあったよな? ならそこから抜ければ……いやいや、アイツのAMF有効範囲から抜けてて、かつアイツを狙える場所なんて空中しか……空中? そうか!)

「キャロ!」

「ふぇっ!? は、はい!」

「竜召喚だ! 空からアイツを狙うぞ!!」

「はい! ……ってええええっ!?」


 キャロ、何故そんな素っ頓狂な声を出す?




●魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜とある新人の日常〜
 第10話 『ファースト・アラート 4』




 10mで駄目なら20m離れるし、それでも駄目ならもっと離れる。
 こちとら射撃型、遠距離攻撃はお手のモンだ。


「という訳でキャロ。さっさと竜召喚しておくれ」

「ど、どういう訳ですか!?」

「かくかくしかじか」

「分かりません!」


 よしよし、ツッコミのキレが良くなってきたな。
 八神部隊長並のツッコミストになれる日も近いぞ。だが、それはツッコミ談義はまた今度。


「AMFの効果範囲から抜けて、かつアイツを狙うには上に行くしかねぇ。でも俺は飛行魔法使えないし、何より今この場所じゃ使えないだろ? だから竜召喚だ」

「でも私、力の制御が出来なくて……」

「高町隊長から聞いてる。でもなキャロ、今エリオを助けつつアイツを倒すには、竜召喚して空中から攻撃するのがベストの選択肢だ。俺はセンターガード、ベストの選択肢があるなら、多少危険でもそれを選ぶ」

「でも……でも!」

「平気だよ、キャロ」

「え?」


 怯えた顔をするキャロに、安心させるように笑いかける。


「お前なら出来る。他の誰が信じなくても、キャロ自身が信じられなくても、俺が信じてる。
 高町隊長も大丈夫だって言ってたろ? それに、失敗したって誰も怒りゃしねぇよ」


 多分怒られるのは俺だからな。指示したのも、最初に戦術ミスったのも俺だし。
 まあそんな事言ったら、キャロのことだし余計に緊張するだろうから、言わないけどな。


「……」

「踏ん切りつかないならアレだ、リーダー命令。さっさと竜召喚なさい」

「……それ、横暴だと思います」


 お、笑った。どうやら踏ん切りついたみたいだな。


「できるな?」

「はい! ……あっ!?」

「ん? っておいおい!!」


 こっちで青春ドラマやってたら、エリオがアームに捕まって放り投げられそうになってた。あー、ありゃ完璧に気を失ってるな。
 ……あ、投げられた。
 おー、さすがに軽いだけあってよく飛ぶなぁ……。しかし、気絶しててもストラーダをしっかり握ってるあたり、ちゃんとしてるねぇ。


「じゃなくて!」

「ど、ど、どうしましょう!?」

「どうもこうも、追っかけるしかねぇだろ!!」

「は、はい!」


 気を失ってるみたいだし、あのままじゃエリオの奴、確実にあの世直行コースだしな!
 まあ、キャロが竜召喚すればきっと平気! 駄目だった時でも、最悪俺の体を盾にしてやれば2人は無事だろ!


「行くぞキャロ!」

「はい!」


 途中でバラバラにならないように手を繋いでエリオの後を追いかけてリニアレールから飛び降りる。
 1日2回の飛び降りとか、新記録ですよ姉ちゃん!
 俺ってこんな無茶するキャラじゃないんだけどなぁ……スバル達のがうつったか?
 とかいってる間に気を失ってるエリオ確保! キャロと手を繋いでない左手の方で小脇に抱える。


「キャロ!」


 右手の方を見れば、そこには力強く頷くキャロ。
 信じてるからな、頼むぜ!



 side:キャロ=ル=ルシエ


 護りたい。
 私を信じてくれたハヤトさんを、優しくしてくれたエリオ君を。
 私の居場所を、私の力で、護りたい!


「キャロ!」


 ハヤトさんを見て、頷く。
 きっとできる。ハヤトさんが信じてくれるならって、そう思える。


「きゅくる〜」

「ごめんね、フリード。今まで不自由な思いをさせてて」


 今度は、ちゃんと制御するから。
 皆を護る為に、力を貸してね。


「いくよ……竜魂召喚!」


 ケリュケイオンが光って、魔方陣が展開される。
 ちゃんとできる。
 根拠は無いけど、そう確信できる何かがあった。


「蒼穹を走る白き閃光。我が翼となり、天を駆けよ。来よ、我が竜フリードリヒ……竜魂召喚!」


 私の声に答えるように、フリードの咆哮が響く。
 魔力光が消えた時、そこには本来の姿になったフリードがいた。


「できた……!」


 ちゃんとフリードが制御下にあるのが分かる。
 できたんだ、私!


「ハヤトさん! 私……私、できました!」


 side:キャロ=ル=ルシエ 了




「ハヤトさん! 私……私、できました!」


 嬉しそうにはしゃぐキャロに頷いてから、俺は自分の乗っているフリードに視線を送る。
 まさかあのチビ竜の本来の姿が、こんなご立派な竜だったとは……。
 これからは「チビ助」ってからかうことも出来ないなぁ。


「なんて、アホな考えてる場合じゃないな。エリオ、起きたよな?」

「はい」

「よし。それじゃあ反撃と洒落込むぜ!!」

「「了解です!」」


 キャロがフリードを操って、大型ガジェットのいた車両に追いつく。
 ガジェットは車両から出て屋根の上に鎮座していた。
 野郎、ちょっと有利だからって調子こいてやがんな!? 今から目にモノ見せてやっからなこん畜生!


「フリード、砲撃準備!」

『グルルル!!』

「あ、あれ? 何でハヤトさんの言う事聞くの、フリード!?」

「人徳です」

「そ、そうなんですか……」

「ブレイブハート! 砲撃は何が登録されてる!?」


 悲しいことに、俺って固有の砲撃魔法は無いんだよね。
 前使ってたのもデバイスに元々登録されてたのを使ってただけだし。


《 姉に登録されている魔法は、私にも登録されています。もちろん、使えるかどうかはマスターハヤト次第ですが 》


 ……初耳ですよ。いや、今日貰ったばっかだから当然だけど。


「ってことは、もしかしてディバインバスターいける?」

《 マスターハヤトの魔力量では1発だけですが、撃つことは可能です 》

「上等! フリードと同時に撃って、あのデカブツ吹っ飛ばすぞ!!」

《 了解しました、マスターハヤト 》

「キャロ、聞いてたよな?」

「はい! フリード!!」

「ブレイブハート、砲撃準備!」

《 Load cartridge. 》


 フリードの頭の上に乗って、ブレイブハートを構える。
 カートリッジが2発排出され、先端に赤い魔力が集まり、塊を作り出す。
 フリードの口元には炎が集まり、巨大な炎の塊となった。


「ディバイン……」

「ブラストレイ……」

「バスター!!」 「ファイア!!」


 赤い魔力の砲撃と、炎の奔流が一つとなってガジェットを襲う。
 うおぉ……ディバインバスター辛い……一気に魔力空になったぞ!? 高町隊長は毎回こんなのポンポン撃ってんのか。マジで化け物じゃね?
 そして炎と魔力が通り過ぎた場所には――


「おいおいマジかよ」

「そんな……」


 2つのアームとケーブルを失ってはいるが、本体には傷一つ無くピンピンしているデカブツがいた。
 硬すぎ。何お前、そこは空気読んで「や〜ら〜れ〜た〜」って言うとこだろうが!


「あの装甲形状は砲撃じゃ抜き辛いですね。僕とストラーダがやります」

「……そうだな、悪い。頼むわエリオ、キャロはブーストな。援護は俺がやる」

「「はい!」」


 魔力切れで崩れそうになる膝を奮い立たせて、援護の準備をする。
 大概はフリードが避けてくれるだろうが、それでも準備しとくのとしないのとじゃ違うよな。


「我が請うは青銀の剣。若き槍騎士の刃に、祝福の光を」

《 Enchanted Field Invalid. 》

「猛きその身に、力を与える祈りの光を」

《 Boost Up. Strike Power. 》


 キャロの両手に、桃色の光が宿る。
 それを確認しながら、エリオと場所を交代した。


「突っ込む時は心配すんな、何が来ても全部撃ち落してやるから」

「はい。行きます、キャロ、ハヤトさん!」

「よっしゃ、行ってこい!!」


 走り出すエリオの背中に、精一杯の声援を送る。


「てやああああっっ!!」

「ツインブースト、スラッシャードストライク!!!」


 エリオが飛び降り、キャロの魔力がそれを追いかけてストラーダの刃に吸い込まれる。


「っ!?」

「ブレイブハート、シュート!」

《 Variable Barret. 》


 途中でエリオ目掛けて撃ち出されたレーザーは、全て俺のなけなしの魔力弾が撃ち落す。
 魔力が空のところから搾りだすのってかなりキツイ。
 そしてエリオは無事リニアレールに着地し、カートリッジロードしてガジェットと対峙する。


「一閃必中!」


 決め台詞と共にガジェットに突進し、その中心にストラーダを突き立てた。


「でりゃあああああっっっっ!!!!!」


 そのまま刃を上へと振りぬき、ガジェットを両断。
 振りぬいた格好のまま爆発を背負う。


「やった! やりましたよハヤトさん!」

「ああ、やったな。ブツの方はスバル達が回収したみたいだし、これで終わりか?
 じゃあ後はさっさと隊舎に戻って寝るだけ、と」


 フリードの上で思い切り背伸びをして息を吐く。
 やーれやれ、とりあえず終わったな。いやぁ疲れた。
 キャロも終わったと安心したのか、後ろで小さく息を吐いて、エリオに手を振ったりしてる。
 いいねえ、青春ですなぁ。


「キャロ、エリオ拾って先に帰ろうぜ。俺らの仕事は終わりだろうからさ」


 そう言いながら振り返ると、キャロではなく、満面の笑みを浮かべた八神部隊長(の映ったモニタ)と目が合った。
 この笑顔は危険だ、悪いこと考えてる笑顔だ。
 八神部隊長とはそんなに付き合いないけど、分かる。分かってしまう。


『帰る気マンマンのとこ悪いんやけど、ハヤト君とライトニングの2人はそのまま現場待機。
 現地の部隊の人らに引継ぎとかお願いな?』

「……八神部隊長、俺のこと嫌いですか?」

『大好きやよ? せやから仕事の引継ぎっちゅー面倒……げふんげふん、重要な仕事を任せるんやないの』

「面倒って言ったでしょ!? 今絶対面倒って言ったでしょ!?」

『言うてへんよ。変な疑りするのはあかんで?』

「畜生! 裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったんだ!」

『何で君がそれ知っとるん!?』


 最後が締まらなかったが、俺達の初出動は、こうして無事に終了した。
 余談として、この後疲れて眠ってしまったライトニング2人の代わりに、仕事の引継ぎとその際に起きた苦情の処理。
 そして初出動のレポートなど、事後処理を全て俺が一人で終わらせたことをここに記す。

 ……八神部隊長、許すまじ。






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