永遠なんてないと泣いた君はきっと誰よりも永遠を信じていたね
もうすぐ、3年か……あいつと別れて。
現在も相変わらずなんだろうな。
そんな風に感慨に耽るようになったのはある意味こいつのお陰だ。
猿飛佐助。
私の隣の席に座る、あいつと良く似た風貌の男だ。
とは言っても、中身は全然違う訳だけど。
猿飛の方が優しい。
…まあ、あいつは自分本意で動いてるやつだったしなぁ。
「名前ちゃん?ちょっとどうしたの?」
ヒラヒラと手を振る猿飛に私は首を横に振り、何でもないとアピールする。
「そう?なら良いんだけどさ」
「おい、猿飛!」
そこで聞き覚えのある声が猿飛を呼んだ。
「ん? チカちゃんじゃん。何、どうしたの?」
「さっきこの辺りで元就のやろ………って、あ?」
「…………」
「あん時のやつじゃねぇか」
「あの時は飴、ありがとう」
「構わねぇよ」
声の主は長曾我部元親だった。
「……って、ちょっ二人とも知り合いなの!?」
驚きの声を上げ、猿飛が聞く。
「あ? この間会ったんだよ」
「いつ、何処で?!」
「やけにしつけぇな……猿飛、お前まさか」
「えっ、いやー何の事?」
「………ああ、そうか。やっぱそういう事か」
「あはー、」
何だかよく分からないけど、仲が良さそうだ。
「まあ頑張れよ」
「………」
「それじゃあ俺は行くからよ」
スタスタと教室から出ていく長曾我部元親を見送り、私は猿飛に視線を移す。
「顔真っ赤だな」
「なっ……」
「冗談だ」
軽くからかいの言葉を言えば驚いた様な顔をする猿飛。そんな様子に自然と笑みがこぼれるのだった。















「…雨、か」
ざぁざぁと降り注ぐ雨に溜息を吐く。
あいにく今日は傘を持ってきてない。
さてどうしよう、と空を見上げれば聞き覚えのある声と呼び方。
「………」
「久しぶり、だな名前」
「…満愚」
今更、何の用なんだ。
あんなにも酷いフリ方をしておきながら、まだ何か言うつもりなのか。
「何の用?」
「俺達さ、その…やり直さね?」
「…………」
「お前と別れてから、もの足りなかったんだよ」
目を見開いたまま、私はただあいつを見つめる。
何を……今更、何を。
「どうせ、彼氏とか居ないんだろ?」
まるでそれが当然だと言わんばかりの口調。
あれから、全く変わっていない。
「………」
「なあ、良いじゃねーか?」
近寄ってくるあいつに、私は小さく身震いする。
「……」
「良いって言えよ。お前は逆らわないだろ、いつだって」
「わ、私…は「悪いけど」」
ぐいっと後ろから腕を引っ張られ、誰かの背中が目の前へと入る。
「俺様さ、そうやって強要してる奴見るのだいっきらいなんだよね?」
夕焼けの様な橙の髪を揺らして、猿飛は言った。
…猿飛とあいつはそっくり、だと思ってた。
でも実際は。
猿飛の髪は綺麗な地毛で、あいつは染めたのが分かるくすんだ髪。
声色だって似てはいるけど、猿飛の声は落ち着く。
………なんだ、似てなんかなかったじゃないか。
そんな場違いな事をぼんやりと考えながら、猿飛の後ろ姿を見つめた。
「お前には関係ないだろ!?」
「そっちこそ。さっきから聞いてれば自分勝手な言い分ばかりじゃないの?名前ちゃんはアンタの所有物なんかじゃないのにね」
さっさと帰ったら?と若干声を低くして猿飛は言い放つ。
あいつは、悔しげな顔をして去っていった。
「…猿飛、」
「大丈夫だった?名前ちゃん」
「私は、平気だった………」
「名前ちゃん」気付いたら私は猿飛に抱きしめられていた。
「泣きたいなら、泣きなよ」
若干力が込められた腕を感じつつ、私は静かに涙を零した。
あの頃は、ずっと幸せな日が続くと思ってた。
そんなものは崩れてしまった。
そして今、また。
私は幸せな日を送っている。
今度こそ。
私はずっと続くと信じて良いですか?





永遠なんてないと泣いた君はきっと誰よりも永遠を信じていたね
((抱きしめてくれているこの腕に愛しさがわいたなど、言いはしないけれど))


あきゅろす。
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