只ひたすらに君を… 13 「や………」 水月殿の瞳が、恐怖に揺らいだ。 「さぁ、渡せ」 何も知らない容保様は、水月殿を要求する。 「できません。水月は、渡しません……いえ、渡せません」 一歩も引かない斎藤くんと、たじろぎもしないトシ。 「命令違反で切腹だぞ」 トシは、言う。 「それでも、俺は…水月を渡せません」 引かない斎藤くん。 「そうか…。残念だ」 トシは刀を抜くと、斎藤くんに剣先を向けた。 斎藤くんは水月殿を抱えたままで、向かい合わせに剣を翳した。 「勝負です」 「ああ」 俺達は止めることができなかった。 . [*前へ][次へ#] |