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小説ZS<海賊>
ベイビィ・チック@


「ほぎゃーーーーーー!」





深夜のダイニングから奇怪な声があげられた。

鍛錬の後、シャワーを浴びてボトムだけ履いたところで、ゾロは急いでダイニングへ向かった。

今夜はゾロとサンジだけが船に残り、他のクルーは島の宿に泊まっている。

手薄なところを狙われたか?
周囲を見ても敵がいるようではないが・・・。

「コック!?!」

荒々しくドアを開け中に踏み込むが、敵どころかコックの姿さえない。


警戒しながらキッチンを見渡すと、作業途中の材料や調理道具。

怪訝に思いながら柄に手を当てて、テーブルの向こうに回る。



ふと、足元に蠢く何かが見えた。


ジタバタと上下に動く黒い布の塊。

鞘の先でそっと布を剥ぐる。

「ああ?!」

小さな塊を見つめたまま、ゾロは立ち竦んだ。



チョッ…チョッチュッチョッチョッチョパッ…。

小さな音を立てながら、その小さな塊は小さな口を尖らせ懸命に動かしていた。

ゾロは困惑しながらも小さな塊を見つめ、したいようにさせる。

たぶん、何を言っても通じないだろう。


ため息をついたら、小さな塊はピクリと震えて目だけでゾロを見上げた。

何も言わないが怯えている風だ。

「大丈夫だ。好きにしろ。」

通じないと思いながらも出来るだけ穏やかな声をかけ、背中をさすったら安心したようにまた口を動かし始めた。


チュチュチュッチュッチュパッチュチョッ…。


通じたのか?

ゾロはほんの少しだけ笑みを浮かべ、塊を見つめることしかできなかった。








朝早く、ナミは宿泊先から船に戻ってきた。

昨日手に入れた新しい本をゆっくり読もう。

サンジくんのおいしい紅茶を飲みながら。

彼のことだからお菓子も出してくれるに違いない。


ウキウキした気持ちで扉を開ける。

ダイニングに入ってすぐ、ナミは手に持っていた本を落っことした。


ゾロとゾロの腕の中の塊を見て、逆毛を立てて怒りだし。

「ゾロー!!!あんたってヤツはーっ!!」

有無を言わさずゾロの頭にゲンコツを喰らわす。

「いっってぇ!何しやがんだ、てんめぇ!」

「うるさい!ああぁ!!あんた、とうとうやってしまったのね…。」

ナミは頭を抱えながらしゃがみ込んでしまった。

「とうとうってなんのことだ?」

ゾロは身に覚えのない制裁を加えられたうえに、訳の分からない難癖をつけられて不機嫌だ。

「いつかこんな日が来ると思ってたのに、あたしとしたことが…。」

ナミはテーブルのそばを行ったり来たりしながらブツブツと呟く。


散々ターンを繰り返した挙げ句にゾロをキィっと睨んだ。

「ちゃんと責任とるんでしょうね!バックレたら承知しないわよ!」

鬼も裸足で逃げそな面持ちで詰め寄られゾロはたじろぐ。

何を言ってるのか、何を怒っているのか全く検討がつかない。

徐々に頭が横を向くゾロに呆れたようにを言葉を吐きかける。

「お母さんは?」

「はぁ?おれが知るかよ!」

「もうわかってんだからハッキリ言いなさい!」

「何かわかってんなら教えろ!」

「二人とも、どうしたの?外まで声が聞こえてたから、驚いちゃったわ。」

特に驚いた表情も見せず、ロビンがダイニングに入ってきた。

「聞いてよ、ロビン!!」

真っ赤な顔でナミは叫び、ビシッと指を差してゾロを示す。

「ゾロってばサンジ君にいかがわしいことして、子供産ませたのよ!」

ゾロはびっくりして口が利けない。

ロビンは「まあ!すごいわ!」と微笑んでいる。



淡い金色の髪の毛をぽわぽわ揺らし、片方の青い澄んだ瞳でゾロを見上げながら。

愛嬌のある、くるりん眉毛をピコピコ動かして。

チュパチュパと可愛らしい小さな唇でゾロの乳首に吸い付いている赤ん坊。



「それで、どうして赤ちゃんはお父さんのおっぱいを吸ってるのかしら?」

「誰が『お父さん』だ!」

「え!?まさかあんたがお母さんなの?」

「そんなわけあるか!」

「じゃあ、やっぱりサンジ君が産んだのね…。」

繰り返される押し問答にゾロは辟易して黙り込み、赤ん坊は変わらずチョピチョピと口を動かしている。

顔を覗き込んで懇願するような声で呟く。

「なんとか言えよ。ヒヨコック…。」













「じゃあ、そいつはサンジだってことだな。」

深く頷き、ルフィは了解した。

「うん。どう見たって見た目はまるっきりサンジのミニチュアだし、背中に小さな手術後があるんだ。検査の結果、間違いないよ。ただ、どうしてこんなことに…。」

内診を済ませたチョッパーは訝しい顔をして、赤ん坊のサンジをゾロに戻す。

「なんだっておれに渡すんだよ!?」

「え?だって…。」

チョッパーは涙と鼻水で濡れる赤ん坊の顔をタオルで拭き上げながら答える。

「ほら、唇がチョピチョピしてるだろ?おっぱい吸いたいんだよ、きっと。可愛いよな!」

キューンと可愛らしい笑顔で言われて、ゾロは仕方なく赤ん坊を抱き取る。

「どいつもこいつも、何だっておれにヒヨコックを押しつけるんだ?」

ヒヨコのようにぽわぽわの髪を小さく揺らしてサンジはゾロの裸の胸に縋りついた。

チュッチュッ。乳首を見つけると一目散に吸い付いて満足そうに目を瞑る。

「ほらー。ね?」

チョッパーが嬉しそうに言うので睨んだら、ひゃーと泣きながらフランキーの後ろに逃げて行った。

「ま、諦めろや。おれの乳も吸わせようとしたんだがよ、スーパー青ざめてヤな顔されちまったぜ。」

「僭越ながら私もお役に立てればと試みたのですが、…私、乳首ありませんでした!ヨホホホホー!骨でしたらいくらでもしゃぶって下さって結構なんですけどね〜。」

いつの間にそんなことをしたのかとフランキーとブルックのヘンタイぶりに呆れたが、じゃあなぜ、自分ならいいのか疑問が起きる。

「どうせなら女共の方がいいんじゃねえのか?」

「じゃあ、試してみる?」

ロビンの答えに一同はどよめいたが、本人はサンジの顔の近くに胸元を近づけて手を差し出してみる。

「こちらにいらっしゃい。」

優しく声を掛けられて、ふいとロビンを見上げるサンジ。

目前にはたわわな房が掲げられ、ゾロのそれよりずっと心地よさそうだ。

サンジは赤ん坊らしからぬ、鼻の下を伸ばした顔でデレンとしたが、ロビンの胸に縋りつこうとはしない。

小さくふぅふぅと苦しげに息を吐いて、振り切るようにまたゾロの乳首に吸い付いた。

「あら、やっぱりダメなのね。」

確信めいた声で言うと、にっこり微笑んでいる。

「何がやっぱりなんだよ。」

「たぶん、インプリンティングに因るものなんじゃないかしら。」

「インプリ?」

「特に鳥類に認められる学習の一形態なのだけれど。生後間もない内に目にした物体を母親と認識して、以後それを見ると追随反応するのよ。」

ロビンの言っている半分はわからなかったが、生まれたての雛(サンジ)が初めて見た物体(ゾロ)を親か何かと思って慕っているということのようだ。

「すっげーな!ゾロ!!」

ルフィは楽しそうにゾロを褒めたが、当人はみんなの前で赤ん坊サンジに乳首を吸われるという羞恥プレイにげんなりしていた。

しかし、吸わせていなければ泣き出す始末で、夕べからゾロは上半身ムキムキの裸のままだ。

チョッパーは可愛いなーと覗き込みながら、それでも心配そうな顔をする。

「これから育てていかなきゃなんないのかな?どうやったら元に戻るのかな・・・。」

「・・・こいつ、なんか最初より大きくなってると思わねぇか?」

ゾロの言葉に赤ん坊を覗き込むが、皆にはよくわからない。

最初を見ていたのはゾロだけで夕べのことだ。

ずっと抱かされているせいか、重みが増しているのをひしひしと感じる。


「じゃあ、一時間毎に体重を計っておこうよ。何か戻る方法がわかるかもしれないし。」

チョッパーが提案した。

そうだ、戻す方法を探さなければ。









サンジが小さな寝息を立て始め、ゾロはホッとした。

ようやく解放された乳首は少し鬱血していたが、大したことはない。

「ご苦労さま。お父さん。」

「お父さんじゃねぇ!」

「しーっ!起きちゃうでしょ。」

ナミはサンジの頭をヨシヨシとなでた。

普段ならばこんなことしてやらないのだが、今のサンジは可愛らしくてつい手が伸びる。


「おい、ところで朝のアレはどういう意味だ?」

「アレってなによ?」

「おれがコックにナニしたって?!」

「だって、あんたがサンジくんそっくりな赤ちゃん抱いてるから。てっきり、強引にアンナコトして…ってね。」

ナミは舌を出して目配せした。

「何が『強引に』だ。誓っておれはコックに指一本触れちゃいねぇ!」

ゾロの妙な言い回しにルフィとロビン以外は乾いた笑いをこぼす。

それって触れるの我慢してますって聞こえるけど?

というか、サンジは男の子だから、例えどんなにゾロが頑張っても子供は産ませられないだろ。

ウソップは食後の皿を洗いながらゾロに諭す。

「サンジに触りてーんなら、それなりに仲良く接すればいいだろ。」

うんざりと投げやりな口調。


「デキねぇ!」

ゾロはギラリと眼を光らせて即答した。


ひきつりながらウソップは首を振る。

ヤッパリ本音は触りたいんだな。

そこは普通「触りたくなんかない」って否定するとこだ。

ゾロは隠すつもりもないかもしれないが、いつもなんとなくサンジをじっと見ている。

みんなは「ああ!」って察しがついているのにサンジときたら鈍いらしく、視線に気づくと怒りだしてケンカへと雪崩れ込む。





「せっかく刷り込みが出来たんですから、これをきっかけに仲良くなってはどうでしょう?」

ブルックの助言にゾロは顔を上げ、傾げた。

「んもう!こういうことにはホント鈍いのね。サンジ君が元に戻るまで、あんたがしっかり面倒見なさいってことよ。まさか出来ないなんて言わないわよね?あんたのおっぱいしか吸わないんだから。」

ナミは最後のあたり語尾が震えており、明らかに面白がっている。

だいたいゾロの乳首をどんなに吸ったって乳はでない。
実際、サンジはしゃぶってチューチューしていただけだ。

ちゃんと重湯を飲ませて(もちろんゾロが)お腹がいっぱいになっても、やっぱりゾロのおっぱいを求めてふにゃふにゃと泣く。



いや、


でも、



可愛いかもしんねぇ・・・・。


ゾロは貧乏くじを引かされたと思っていたが、腕の中で安心しきった小さなサンジを見たらちょっとその気になってきた。





うっし!!

そんならひとつ、刷り込んでやろうじゃねぇか!



【ベイビイ・チック1:終わり】


***********************

お読み頂き、ありがとうございました。

何だか、ゾロ地区のお話で申し訳ありません!(^^;ゞ

ちいさなサンジを可愛がるゾロがツボなので、おっぱい吸わせてみました(*≧艸≦)

さて、うまい具合に刷り込みが出来るのでしょうか?

そして元にもどるのか?(←思わせぶりな・・・(・ω`・*) 。)

ゾロの子育てライフをお楽しみいただけましたら幸いです。

そんなに長くならない予定ですが、続きます。(ごめんなさい!(人;´Д`) )

2012.12.19

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あきゅろす。
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