「ん…、?」
「おはよう、愛チャン」
「おはよう、?……え」
あたしが目を覚まして、ごろっと横に寝返りを打った先にいたのは、白蘭さんで…。しかも、あたし抱きしめられてない?
パチクリと何度も瞬きをして眠っている頭を叩き起こそうと、目をこする。
「ぎゃぁああ!」
やっと状況を理解すると、布団にくるまってバッと白蘭さんから体を離す。
「な、なななっ」
バンッ──
「愛!」
「どうしたの!」
あたしの叫び声を聞きつけて部屋に飛び込んできた二人に、白蘭さんを指さして、何で何で!と連呼する。
「酷いなあ、愛チャンが僕に抱きついて離れないからそのまま寝てたのに」
「嘘ー!」
白蘭さんは、余裕たっぷりの笑顔であたしをからかってるようにしか見えない。ていうか、寝起き見られたのが一生の不覚だよ。
「抜け駆けはなし、じゃなかったんですかね」
「やだな、これはほんの冗談だって。その物騒なものしまおうよ」
「クフフ…、このまま地獄への道へ誘いましょうか」
「骸君、僕は売られた喧嘩は買う主義だからね」
睨み合う二人を本当は放っておきたい状況なんだけど、くるまっていた布団から出て二人の間に割ってはいる。だって放っておいたらあたしの部屋が壊れちゃう…。
「あたしが悪かった、です…」
「「──」」
あたしがそう言うと二人から放たれていた殺気が消えた気がした。何とか収まったみたい。
「じゃあ、ご飯にしよう」
「うんっ」
二人の喧嘩に収拾がついたところで、ツナが笑顔を向けてそう言ってくれたから、パジャマのまま、彼についてリビングに出た。
「自分の気持ち認めちゃうと、こうも甘くなっちゃうものかな…」
「どうでしょうか…、ただ─」
「?」
「甘やかしてやりたくはなりますね」
「はは、骸君も同じじゃない」
愛がツナと朝食の準備をしている光景を眺めながら、珍しく、否、始めて笑い合った二人だった。
....
ガシャーン───
(あ、やっちゃったっ)
(俺やるから、あっち並べて)
(ごめん、ツナっ)
(いいよ、それよりまた余所見して割─)
パリーン───
(……あは)
(愛)
(早く行かないと、また割るよあの子)
(同感です、行きましょうか─) |