あたし、何イジケてるんだろ…。皆が気を紛らわそうってしてくれてるの分かってたはずなのに──、
話聞いてくれて、それでもあたしを受け入れてくれた三人には正直吃驚してる。だって、漫画の中の人だよ?この世界には存在しない架空の人物なのに─…。それに加えて、白蘭さんと、ツナ、骸さんは敵同士だっていうのに。
こんな風に同居生活してるのも信じられないけど、自分が彼らに救われてるだなんて何か不思議だ。
「あたし、ちゃんとさよなら言えなくなりそう…」
だって、三人がいない生活なんてもう考えられないもん。
骸さんと学校行ったことも、白蘭さんとお買い物いったことも、ツナとお菓子づくりしたことも…全部全部──、
彼らが帰ってしまえば消えてなくなる。ただの思い出に変わる。
そしてまた、白蘭さんはツナと骸さんと敵対してしまう。どちらかが倒れてしまうまで…。でも、そんなのやだよ…。もう、マフィアとかそんなの全部捨てて自由に生きれればいいのにっ。
これからもずっと四人でいたい…。
コンコンッ───
ポロッと涙が頬を流れた瞬間、控えめなノックが聞こえて慌てて涙を拭う。
「?!─」
「愛チャン。お腹空いたでしょ、ご飯食べよう」
「い、いらないっ!」
ドア越しに聞こえてくるのは白蘭さんの優しい声色。本当はお腹空いてるのに、意地張って出られなくなったあたしはそう言うしかなかった。
「折角愛の好物作ったのに残念ですね」
え───?
「捨てるの勿体ないしどうしようか」
え、あっ───
「置いといて俺たちはもう休もうよ」
そのツナの言葉を最後に、皆が同意してその場からいなくなる。
ドア閉まった音したしもういないよね?あたしは、そっとドアノブを回して扉を押すと、そんなに力を込めていないはずなのに勢いよく開く扉。
「うえ?!」
「やっと出てきたね」
「全く、単純な思考回路してますね」
「愛らしいけどさ」
前につんのめったあたしを受け止めてくれたのは、いないと思っていた白蘭さんで─。その後ろには溜息つきながら、難しい事言う骸さんと、苦笑するツナの二人がいて──。
「っ!」
「こらこら」
さっきのが芝居だったと気づいたあたしはバッと離れて、自分の部屋に戻ろうとUターンしたんだけど、後ろから引っ張られて、白蘭さんの膝の上に抱っこされる。
「は、放してッ」
「ご飯食べたらね」
「意地張らないで素直になりなさい」
「なっ」
振り返って白蘭さんを見上げると、横にいた骸さんに頭を小突かれた。サラッと垂れた彼の髪があたしの頬を掠めて、頭に触れる心地いい感覚。
「愛がいないとこの二人止められないから助けてよ」
「ツナ…」
その感覚は、ツナがそっと置いてくれた温かい手の感触で──。
「さ、食べようか」
「わっ」
いきなりの浮遊感に吃驚して白蘭さんにしがみつくと、笑顔を返された。
「くっつき過ぎです」
「羨ましい?」
「僕がいつ羨ましいと言いましたか」
「今(ニコッ」
「ちょ、ちょっと二人とも!」
ああ、わかった…。
あたしは───、
「──ありがとう」
「「「?!──」」」
あたしは、白蘭さんの腕の中から身を乗り出し、三人に抱きついた。
そうだ。あたしが今一番大切にしたいのはこの三人と過ごす時間…。さよならする日のことなんか、まだ考えなくたっていいんだ──。
三人と過ごす今がまだ続くなら、あたしは素直に一緒にいたいって言えるから──…。
....
(愛っぐるぢいっ)
(あっごめっ)
(クハハッ!今のは見物でしたね)
(ハハッ、愛チャン首絞めてるし)
(な!そんな笑わなくたってっ)
────…
(じゃあご飯食べようか)←白蘭
(うんっ!)←愛
(……炊飯器の中空ですよ)←骸
(えっ)←ツナ
((((……はあ)))) |