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02:(他人の指図は受けない)

──数日前

「今何と…?」


シーンと静まりかえる部屋に、冗談だろうとでも言いた気な男の声が響いた。


「二度も言わすなよ、……一成さんが薬を調べていた時に偶然別の資料が混ざってたんだ」


それがお前等三人のことで、と一度話したことをもう一度話し出す彼に、放心状態に近い二人は耳を傾ける。


「よく時空の歪みってのが出来んのが、嵐の夜なんだってよ」


その歪みで一時的に繋がった時空間がお前等のいた世界、と淡々と言ってのける少年は、ある資料を二人の前に出した。


「このリストに乗ってる奴らが今までにこっちに飛ばされたことのある奴らだ」


スッと手に取り中をのぞくと、自分たちの名前と顔写真。その他にも、見たことのある顔触れや、知らない輩までたくさんの人間が載っていた。


「結論から言う。つまり、異世界からここに飛ばされるのはごく稀ってわけじゃねぇのよ」


お前等が偶然飛ばされた先が愛だったから、と彼は話を進める。


「見つけ次第、政府に連絡する決まりがこの世界にはある。ただ愛がたまたまそれを知らなかったから、これまでこうして長居出来たんだ」


「連絡したらどうなるの」


自分たちが運の良かった連中だという風な言い方をする彼、九条夕吏に問いかけるのは、飛ばされてきた一人、白蘭だった。


「んなの速攻取り調べ、お前達なら使い道があると判断され一生こき使われる運命になるんじゃねぇの?」


思いっきり人事の様に椅子に寄りかかりながら、そう口にした九条に二人は目を見開く。


「それで帰れなくなった奴なんかごまんといんだ。お前等は¨帰れる¨だから、次の嵐の晩、必ず帰れ」


「「──」」


「沢田にも伝えとけ、愛と過ごせんのも、あと二週間だってな」


「「──」」


「それに兄貴が気づいちまったら、政府に売り飛ばされる。これ以上、愛の問題に首を突っ込むな」


二人の意志は無視で、サラサラと紙に書かれたことをそのまま読むかのように告げる九条の言葉は、二人に反感しか買わない。


「愛は俺が守──」


「たとえ二週間であろうが、何であろうが僕らは愛の傍にいると約束した」


「それを今更なしにするなんて事はしないよ、守るのは僕らのつとめだからね」


さっきまで放心状態だったはずの白蘭と骸の二人は、柔らかい笑みを浮かべて、そう断言した。


まるで、¨お前なんかに愛は渡せない¨とでも言っているかのように─。


「恐らく、綱吉も同じ事を言いますよ」


「同感」


「でもな、二週間で片づくわけ──」


九条がまた口を開いたそれを二人は立ち上がり、サラリと聞き流して遮る。


「ならば留まり続けます」


「は?だから無理って言ってんじゃねぇかよ」


「守るって決めたから」


遂にしびれを切らしたのか、声を荒げる九条にニコッと笑った白蘭は、そう言って部屋を後にした。


「他人に指図されるのが大嫌いなんですよ、僕ら全員」


骸は最後に真剣な声色でそう言う、と部屋を後にした。


パタンッ───、


「ったくよー、人が親切に教えてやってんのに……」


呆れたような、それでいて嬉しそうに九条は笑っていた。




....
(愛のこと、)
(一緒に守ってくれる奴がいる)
(それが何だか嬉しかったのかもしんねーや)


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