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19:(覚悟は出来てるよな?)

皆のおかげで落ち着いたあたしは、食事の後取りかかる薬のことは一度忘れて、ゆっくり入浴中。


「ふぃー」


体も髪も洗って、湯船に浸かると、ぶくぶくとしずんでみる。考えてみたら今日は一気にいろんな事がありすぎた。それから、あの薬は骸さん達には投与されていないんだって事もちゃんとわかった。


あのクソ野郎が言ってたことはデマだったのね、今度会ったら覚えとけ!←


握り拳を作ってふるふる震えていると、ふと鏡に映った自分の鎖骨を見て目を見張った。


「なっ!」


そこには赤い痕が残っていて、それがアイツによって付けられたものだと分かると、余計に腹が立ってきた。


「油断したー…」


あの時はいろいろ言われて、頭が混乱してたから、そんな抵抗まで頭が回らなかったんだよね。


頭にタオルをのせて、お風呂から立ち上る湯気を目で追いながら今後のことについて考えてみる。


まずは、薬の精製。だってツナは帰らなきゃならないんだから、あのままにはしておけない。


それに颯斗だって、投与されてからかなりの時間が経ってる。間に合わなくなる前に、完成させなくちゃ。


それが全部片づいたら、さよならの準備。もしかしたら明日かもしれないって恐怖に打ち勝たなきゃ笑顔でバイバイできない。


あたしは、皆の人生をねじ曲げてるんだから、今以上に迷惑かけて、¨行かないで¨なんてことは口が裂けても言えない。ううん、言っちゃダメ。


「はあ……」


お風呂の縁に腕を乗せて、その上に顔を乗せる。何だか考えすぎてのぼせちゃいそう。そう思い、あがらなきゃと顔を上げた瞬間、目の前が真っ暗になった。


「えっ」


それが停電であるという事は分かったけど、天気も悪くないのに何でそんな事になるのー!


「愛、大丈夫ですか!」


「矧[さん!怖いっ無理!」


パニクってる時に聞こえた骸さんの声に、慌ててそう叫んでみるが、今この状態で入ってきてもらっては困る。だ、だって!あたし裸じゃん!


「今、浸かってますか?」


「え…あ、うん」


「じゃあ問題ないですね」


いや、あるよ?あるって!
暗闇でも目が慣れちゃえば見えるんだから。


そんなあたしの心の叫びは無視で、開いたお風呂の扉に、反射的に体を縮める。バシャッと水面が揺らぐ音がして、目を瞑ったあたしにかかるバスタオル。


「誰も見ませんよ、何隠れてるんですか」


「は、恥ずかしいですから!普通にっ」


一応暗闇でも分かる骸さんを見上げると、バカですねって言いた気な表情。あたしはバスタオルをギュッと握って、小さくお礼だけ呟く。


「で、何で停電ですか?」


「電気を一度に使いすぎてブレーカーが落ちたんです」


「……」


大真面目にそう言った骸さん。信じらんない…、まあ確かに今は何かと電気が必要になってきてるけどさっ。


「くしゅっ」


そんな事を考えていたら、急に冷えたことでくしゃみがでた。めっちゃ寒い。そう思ってたら、いきなりグッと体が引かれて温かい腕の中に来た、て、え。


「む、むむ骸さっ」


「寒いんじゃないんですか?」


あたしの耳元で悪戯っぽい言い方をする彼に、頬に熱が集まってくる。


「だ、だめですってー」


「いい香りがしますね」


「ち、ちかっ近いー!」


僕の腕の中で必死に暴れる愛に濡れることも構わず、抱きしめていた。


直に感じる肌のやわらかさに飛びそうになる理性を抑え、ほんの悪戯心で抱きしめてみたものの……、放したくなくなりましたね。


「骸さん、あ、ああ後でぶん殴りますっ」


「クフフ…、それは楽しみですね」


出来る訳ないでしょうに。


「冗談抜きで無理ですってばーっ」


愛がそう言うや否や、落ちていたブレーカーが上がり電気が戻った。それと同時に聞こえる焦ったような足音。


「終わってし──」


「み、見ないでっ」


愛の頭を撫でて最後にからかおうと口を開いたそれは、最後まで口にすることは出来なかった。


「愛チャン無事!?襲われて─」

「骸お前──」

「俺の愛に手──」


「い、い、いやぁああっ出てってー!」


愛の叫び声とともに洗面器やら何やら飛んできたもんですから、僕らはびしょぬれになりながら風呂場を後にした。




....
(骸君)
(骸)
(六道)

(((覚悟は出来て(るよね)んだろーな?)))
(…)


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