「で、本当は何があったんだよ」 「君の兄と接触して、我慢の糸が切れたようですよ」 愛を部屋に寝かしてから落ち着いた僕らは、あったことを簡潔にまとめて話した。まあ、僕が話したんですが。 「骸君、紅茶ー」 「自分で淹れて下さい」 何なんですかねこの態度は── 話し終わってから、深刻な顔をする二人に比べ、いつもの様に振る舞う彼の気が知れない。 そんな空気の中、開いた愛の部屋の扉に目を見張る。 「……」 僕らが一斉にそちらを向いたからかは分かりませんが、ドアノブを握ったままそこから出てこない愛。心なしか、出ずらそうに僕らを見回す彼女は怯えているように思えた。 「愛」 「!」 「誰も怒ってませんから、出てきなさい」 僕が声をかければ、大きく肩を揺らす彼女に、一言付け加える。愛はその言葉に安心したのか、部屋から出てくる。 それでも、こちらに近づいてこようとしない彼女の動きはこんな時に何というか、可愛いと言い表すしかありませんね。 「愛チャン、おいで」 「……」 「どうした、愛」 「……」 二人の呼びかけにも戸惑ったように瞳を揺らすだけで、こちらに来ようとはしない。 「愛?」 「……」 綱吉が呼びかけても同じ。これは呼ぶだけじゃ来ませんか。 僕は立ち上がって、彼女の傍まで行くと抱え上げ僕らの集まる場所までくると、ソファーに腰を下ろす。 「骸さっ…」 「心配してる彼らに言うことがあるでしょう」 隣に座らせた彼女に、そう言って促せば、目を見開いてから目の前にいる三人に目を向けた。 「!あ…、その……ごめん…なさいっ」 骸さんに言われて、周りを見渡せば心配そうにこちらを見ていた皆の顔。 本当は家についた時から目は覚めていた。だけど、骸さんと白蘭さんにあんな反発した手前、どうしていいか分からなくて暫くは寝た振りを決め込んでいたんだ。 皆の顔を見ていられなくて頭を下げそう口にするのが精一杯だった。だって、あんなに取り乱してっ。 ギュッと結んだ唇を噛みしめて、目から溢れ出そうになる涙を必死に耐える。 「謝らなくてもいいのに」 「あー安心した」 「俺、無視されたかと思った…」 「え…」 三人の反応に吃驚してバッと顔を上げると、何故か安堵の溜息をついている皆。そしてあたしの頭に乗る温かい手。 「よかったですね」 「!……はいっ」 くしゃと頭を撫でられて、笑いかけてくれた骸さんに、泣かないように笑顔で頷く。 あの時、骸さんと白蘭さんが止めてくれてよかった。彼らがいたからあたしは血迷ったことをしなくてすんだんだ。 間違ってたのはあたしなんだよね。どんなに根詰めて薬の精製を頑張ったって、体を休めなきゃ頭だって働かない。 まだ残された時間はあるんだ。大丈夫、皆がいてくれたらもう間違った頑張り方はしない。 .... (骸さん……) (はい?) (ごめんなさい…それから、ありがとうっ) (!───、どういたしまして) |