中々帰らない愛を探しに三手に別れて探していた僕らは、相談室から聞こえてきた教師の声に顔を見合わせ、中に飛び込んだ。 「返してよ!あたしの家族も、あたしの大事な人も!全部返してよー!!」 「「?!」」 そこで聞いた見た光景に耳を、目を疑った。それは白蘭も同じようで、入り口に入ったまま目を見開いて固まっている。 僕らの目の前に広がるそれは、今まで我慢していた糸が切れたように叫び散らす愛と、それを必死に止めようとしている教師の姿。 そんな状態を見ていた僕は、胸を握りつぶされるような感覚に無意識に飛び出していた。 「愛、落ち着きなさい」 「放して!!」 僕らが止めに入ればいつもの様に落ち着くと思っていた彼女は、目に涙を溜め溢れ出るそれを拭うこともなく暴れる。 ここまで取り乱して暴れる彼女は目にしたことがなく、どうすればいいか分からなかった。 それでも僕らが止めなければ、彼女を宥められる者は誰もいない。それが分かっていたから少し手荒な真似をして彼女を止めた。 「これ以上、彼女を傷つけるのなら……愛が泣こうが喚こうが貴方を殺します」 本当は今すぐにでも殺してしまいたい。その気持ちを必死に押さえ込み、愛を抱き上げる。 「冗談と思わないことだね、ここまで愛チャンを追いつめたんだから、それ相応の覚悟できてるでしょ」 白蘭もかなりきてますね、ここまでの殺気を感じたのはこちらに来て初めてです。 必死に耐えてる彼を見れば、握った拳から血が滴り落ちていた。 「長居は無用です」 白蘭にしか聞こえぬように声をかければ一瞬だけ視線が絡まり、彼の手から例のあの薬の瓶が落とされる。 実は先日この学校で配られたものにこの薬が混じっていた。すぐさま飛び込んできた九条夕吏により、僕らがその薬を体に受けることはありませんでしたが。 「愛チャン、暫く見張っとかないと危ないね」 相談室を後にして、落ち合うことになっていた場所まで向かっている最中に、何の前触れもなく話を切りだした彼には、先ほどの殺気はもうない。 「…ええ、今夜は僕が同室ですから嫌でも寝かしつけますよ」 「あはは、怖いなあ、骸君は」 「どっちがですか」 すっかりいつもの様子に戻って、愛を心配気に見つめるその表情は、あちらの世界にいる時には見たこともないモノ。 人は変わるものなのだと、昔誰かが言っていた事を今となって思い返す。 「あ!骸!……って愛!」 「愛っ、」 やっと落ち合うはずだった場所までたどり着くと、既に待っていた彼らが駆け寄ってくる。おやおや、神童美和など今にも泣きそうですよ、愛──。 「何ともありません」 「ここ暫く寝てなかったから、気疲れしたんだよ」 本当は誰かさんが気を失わせたけどね、と僕にしか聞こえないように皮肉をぶつける彼を一睨みしてから、ひとまず帰ろうと促す。 まだ心配してるらしい彼女には悪いが、一刻も早く帰って愛を寝かしてやりたかった。 最後まで渋った彼女だが、やっと分かってくれたのか頼むと頭を下げる彼女に頷くと、帰路につく。 .... (思っていたよりも) (愛の抱えているモノは) (大きかったようですね…) |