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15:(薬に没頭する君が)

授業中、必死に書き出すのは薬の調合に失敗する薬品。どうにも上手く反作用物質が働かない。


「……」


「愛…」


こっちをこうしても、結果的に結びつかないものが出てくるから…。


「愛…っ」

「愛チャン」


「……」


これは九条君に聞くとして──、


ベシッ──


「いった!何す、ん…だ……あ」


いきなり頭に走った痛みに、そこをさすりながら顔を上げると目の前にとっても綺麗に笑ってらっしゃる先生。やべー、今授業中だったー。


「楠木さん、今日何度目ですか!」


「ご、ごめんなさいっ」


ノートをバシッと叩かれて、何度目かになる注意+お説教を受ける。


でもそんな事さえ耳に入らないくらいに、あたしは薬の精製のことしか考えられないでいた。時間が足りない、今のあたしには授業を受けてる時間なんて邪魔にしかならない。


結局その日は、何度となく授業中に怒られて、放課後職員室まで呼び出された。


「皆、先帰ってていいから」


あたしは教室に迎えに来てくれた九条君を含め、いつものメンバーにそう言ってから職員室に向かった。皆の心配したような顔を見ない様にして──。


ガラッ、ピシャン──


「愛チャン、切羽詰まってるね」


「昨夜も一睡もしてないですよ」


「…………」


愛が職員室に向かってから、帰っていいといわれた俺たちだけど、その場にとどまったままでいた。


皆、愛を置いて帰ったりする気なんて初めっからないから。


俺は白蘭と骸の会話を聞きながら、胸が締め付けられる思いだった。愛、まだ気にしてんだろうな。


未だに消えない注射の痕に目を落とし、何日か前に起きた出来事を思い返す。




***

「窓ガラス割れてんじゃねーか!」


「怪我はなかったで──」


「どうしたの、愛チャン」


三人が帰ってきた時には、愛は泣き疲れて俺の腕の中で眠っていた。


それでも涙を流し続けてる愛を不思議に思ったんだと思う。拭っても拭ってもそれが止まることはなかった。


それだけ俺のことで自分を責めてるんだと思うと、胸が苦しくて痛くて…、注射なんかより何倍も痛い。


「今はそっとしておいて」


ギュッ────
愛を抱く腕に力を込めて、そう言うのが精一杯な俺に三人は何かを察して深追いはしてこなかった。


でもその日からだ。愛が薬に没頭しだして笑わなくなったのは──。


全部俺が悪いのに、あんなに思い詰める愛を見てるのは辛いんだよっ。俺だけじゃない、骸も白蘭も、九条さんも神童さんたちだって、皆、愛のこと心配してるんだ。




....
(愛が一人で突っ走るのは)
(おかしいだろ──?)


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