「四人分だしな…しかも、あたし料理苦手なのに…」 やべーと、口にしながらぶらぶらと見て回りながら買い物をしていた。簡単なカレーライスとかでいーかな…。 「あ、愛じゃん」 「!?……美和か、焦ったー」 突然後ろから聞こえた馴染みの深い声に反射的に振り返ると、案の定、一番仲の良い親友の神童美和の姿があり、安堵の溜息をつく。 「何よ、折角声かけてやったのに」 「言い方ヒドいな、おい」 「テンション高いな、おい♪」 なんなのこの子は…。何をそんなに楽しんでいらっしゃるの。 「で?」 「でって何さ…」 話の振りが今一分からない。買い物かごを持ち直して、再度問いかけると美和はニヤニヤしながら、話を切りだした。 「えー、昨日から一人暮らしじゃない?颯斗くんと一緒に住むんじゃなかったっけ?」 「は?!誰情報ですか?」 「私のダーリンよ」 そんな自慢げに言われても困るんだけどな……。しかもあたしと颯斗はただの友達だよ?まあ昔っからの馴染みで並より仲良いけどさ。 「それ和磨の勘ちだから」 ヒラヒラと手を振って買い物を再開させた。一々美和の言葉に反応返してたらきりないってのよ。ちなみに和磨は美和の彼氏。あたし達四人は、俗にいう幼馴染みって奴だ。 「でもでも!颯斗くんと私と和磨で泊まりの計画合ったよね?」 わ、忘れてた。今の現状で、お友達を招くなんてそんな余裕ないっての。 「それって今日とか明日じゃないでしょ?」 「ま、まあね」 「てかね、暫く家に人呼べない、まだ片づけとか終わってないし。余裕ありません!」 「あ、そっか…」 「うん、だからまた今度ね!」 「そだね、時間あいたら連絡ちょうだい!」 「あいよー」 美和に笑顔を向けると納得したのか、またね、と手を振り去っていった。 うん、今こられたら確実に困る。あの人たち隠しきれる自信ないし。 買い物も済んだあたしは、二人の様子を見に二階の服売場へと向かった。恐れている状況になっていないことを願いながら。 *** そこにはやっぱりと言うほどの光景が広がっていた。ほらね、だから言ったのよ。気をつけてくださいって。 「お一人なんですかー?」 「私たちと一緒に遊びに行きましょうよー」 たくさんの女の子に囲まれちゃってまあまあ…。苦笑しながらもきちんと断ってる骸さんに、流石ーと思いながらも溜息を一つ。 「おにいちゃーん!」 「あたちと遊んでー!」 こっちはこっちでちっちゃい女の子に囲まれちゃって。何だか複雑だねツナ。わたわたと慌てているツナに親御さんは申し訳なさそうに謝っていて、こっちも溜息一つ。 予想してたにしても、超綺麗な女の子にモテモテな骸さんに、小さい女の子に懐かれてるツナ。そんな光景を目の当たりにして、どう助けていいか分からない。 「あ、愛!」 「?!」 ツナがあたしに気づいて声を上げたら、にこやかに笑みを浮かべ、美女に対応していた骸さんがこっちに目を向けた。明らかに、これ何とかして下さいとでも言いたげな視線を向けてくる。 そんな美人さんを前に、あたしみたいなのが普通に声かけたら絶対凄い目で見られるって。 だからあたしはちょこっと演技を入れて骸さんの所へ向かう。 「お兄ちゃん!買い物終わったから帰ろうー!」 「?!…はい、今行きますよ」 「えー」 「遊ぼうよー」 あたしの見事な演技をこの女どもは!意味ないじゃないか!折角あの骸さんも合わせてくれてるのに! 「すみません、妹が拗ねてしまうので、また今度誘って下さい」 それだけ言ってポーッとする女の子の輪から出て、あたしのところまで来た骸さんは、あたしの頭に手を乗せた。 「さあ、帰りましょう愛」 「!う、うんっ」 いきなり名前を呼ばれた上、頭を撫でられたことで不覚ながらときめいた。本当のお兄ちゃんみたい。 「愛?顔赤くない?」 「き、気のせい!ちゃんと服買えたの?」 「えっと…」 「あんなに集(たか)られて買い物なんて無理です」 つーことはお前等何も買ってないのか!あたし小一時間近く時間やったよね! 「開き直らないでよー;ほら、じゃあさっさと決めちゃお!」 二人の背中を押して、女の子たちが群がってない場所での服選びをすることになった。 まあ、いいんだけどさ。こんなのも。 「ホントに繋がらないな…」 携帯で連絡をとろうも繋がるわけもなく、仕方なく彼女の帰りをおとなしく待つ白蘭。 「はあ──…」 彼が溜息をつき、ソファーに寝転がった頃、玄関が慌ただしくなった。 .... (細かいですね、君も) (あんたが言える立場か!) (ふ、二人とも!) (――(これじゃ仲良くなったのかわかんねー!(焦) |