「九条君、起きてるんでしょ?」 「ん、はよ」 一応ノックしてから扉を開けると、いつの間に持ってきたのか食パンをくわえて、パソコンに向かい合ってる彼がいた。 「ツナ熱だしちゃったから、看病でつきっきりになって今日は手伝えないんだけど」 「今日はいい、資料集めなくちゃなんねーし……で何だ?」 「忙しいとこ悪いんだけどね、天候が大荒れで雷とか落ちちゃうような日、調べといてくれない?」 「あ?何でだよ」 あたしが両手を合わせてお願い、と頼めば心底不思議そうな顔して、首を傾げる九条君。 「今は聞かないで欲しいですっ」 「?…まあ、いいけどよ」 何も言えずに頭を下げると、九条君は分かってくれたみたいで、あたしは安心するとお昼になったら呼ぶね、と声をかけてから部屋を後にした。 愛が部屋を後にした後、隠していた携帯を耳に当てた九条は、ある男と電話を再開した。 「一成さん、愛気づいたんじゃねえの?」 (─かもな、だがタイムリミットは近い。それは知らせん方がいいかもしれん) 「ああ、けどさ…アイツ等も帰りたくないって言ってたぜ?昨夜聞いたとき…」 (そうは言われてもな……、彼らがこちら側に出てきてしまったのは、偶然が度重なって非現実的な惨事を引き起こしたからそうなったわけで、留まる事は不可能だな) 「だよな…まあ、また後で連絡入れるわ」 (愛を頼んだぞ) 「任せとけ」 *** 九条君の部屋から戻ったあたしは、急いでお粥作りに取りかかった。思ってたより時間くっちゃったし。 「骸さん、白蘭さん!どちらでも構わないんで、買い物頼めませんか?」 作りながらの待ち時間、くつろいでる二人にそう問えば、明らかに嫌そうな顔を向けられた。 「骸君が行きたいって」 「言ってません」 「……はあ」 ダメだこりゃ、と二人を見比べてから料理に戻ったあたしは、卵でとじたお粥を一口味見。 「ん、完璧」 「お、見た目はバッチリだね」 「味見してあげましょうか」 満足な出来に出来上がったそれを、いつの間に来たのか、のぞき込んでくる二人に、あたしは庇うようにお粥を持ち上げてニコリと笑いかけた。 「間に合ってます」 「「──」」 「それにツナの為に作ったから、二人はお昼自分でお願いしますね!」 終始笑顔でそう告げると、二人はポカーンとしたまま立ち尽くしていた。 あたしはそんな二人を残して、自分の部屋で眠るツナの元へ向かった。 大丈夫、ちゃんと二人の分と九条君の分の目玉焼きとサラダは用意したから。後はパンで済ませてくれるよね、多分…。 パタン── .... (骸君、買い物…) (大丈夫ですよ、ほら) (いつの間に……) (愛らしいですね) (本当に用意しなきゃならなくなるかと思ったよ) (それでも買い物は行かないと、夕食はありませんね) (クスッ(二人とも気づいてくれたかな?) |