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03:(引く事を覚えようね)

愛が意識を手放した後、彼女と九条夕吏をリビングまで運び、目覚めるのを待った。


「っ……!愛っ」


「君の方が目覚めは早かったようですね」


「愛チャンは無事だよ」


起きあがっての第一声が、愛とは……、それほど彼女のことを大切に思っているのでしょうね。


愛が眠っている方に視線を向け、眠っているのを確認すると安堵の溜息をもらした。


「ああ、傷の手当て……悪いな」


「い、いえ!それより、起きあがって大丈夫なんですか?」


「これくらい慣れてる。それより─」


もう一度、愛に視線を向けてから僕ら一人一人の顔を見回して、口を開いた。彼女の耳には入れたくない話、というわけですか。


「愛が寝てるなら好都合だ。六道、颯斗はもう覚醒したのか?」


「ええ、覚醒と言うかは知りませんが、以前の人格はもうありませんでしたね」


「愛、知っちまったんだったな」


予想外のことが起きすぎて頭がうまくついていかね、と髪をくしゃっとしてから、持っていた鞄からパソコンを取り出し、電源を入れた。


「何するんですか?」


「起きてたらやべーだろ、とにかく画面見とけ」


綱吉の問いかけに顎で愛を指すと、カタカタと何かを打ち込んでいく彼に、僕らは画面に見入った。


¨愛の実の父親が生きてる。¨


「え!?」


「しっ」


「す、すみませんっ」


指摘されて慌てて口を閉じる綱吉に、また何かを打ち込み出す九条夕吏。どっからそんな情報が回ってくるんですかね…。


¨俺は元々兄貴なんか大嫌いだしよ、愛のこと聞いて力かそうと思ったわけ¨


成る程、それで愛の傍にはりついていたわけですか─。


¨そん時、愛の父親、一成さんが──


「ん、」


そこまで打ち込んだその時、愛が意識を取り戻したため、その話は打ち切りとなった。


「愛、大丈夫?」


「うん、あたしなんかより、九条君は─」


「おう、心配かけたな」


あたしが目覚めた先に、笑顔を向けてくれてる九条君がいて、ホッと一息ついた。颯斗が縁起でもないこと言うから不安だったんだよね…。


「よかったー…」


「それはこっちの台詞だよ、何で直ぐに扉閉めなかったの」


安堵したあたしの隣にストンッと腰掛けた白蘭さんに頭をグイッと引き寄せられて、いつもより少しキツメの口調で叱られた。


「え、あっ…ごめんなさい、」


「素直だね、珍しく」


「一言余計ですっ」


相変わらずからかわれてるのか、本当に心配されてるのか分からなくなるけど、白蘭さんの温かい言葉は本物で、笑ってくれる彼の笑顔も本物だと、その時は確信を持って頷けた。


「愛、急で悪いが話いいか?」


「あ、うん。実はね、今日骸さんと行く予定だったの」


「そっか、……なあ六道」


あたしがそう返すと、何故か骸さんを振り返って苦笑する彼につられて、あたしも骸さんに視線を移す。


「何か?」


「何でそんな機嫌悪いのお前」


本当だ。いつにもまして笑顔に迫力が;九条君のその問いかけに向けられる視線はあたしのお隣さん。ああ;白蘭さんかな?


「悪いですよ、物凄く」


「お、おい」


「愛、多分さ、」


「え?」


否定なく頷いた骸さんに、ツナはあたしの隣を指して冷や汗を流してる。


「白蘭さん」


「んー?」


白蘭さんはあたしが呼んでも一向にこっちを向かず、声に似つかわしくない鋭い視線を骸さんに投げかけてる。


「あたしもう大丈夫ですから…その」


離してと言う前に、反対側の隣に骸さんが腰を下ろした、え。


「愛から手を離しなさい」


「イヤだよ」


「愛」


「ひっあ、あたし?!」


そんなあたしに離せとか言われても、男の人の力に適うわけないじゃないか(涙)それでもあまりにも骸さんの笑顔が怖かったもので、小さくながら抵抗を示す。


「びゃ、白蘭さんっ」


「イヤなの?」


「え、その…」


うえーん!そんな哀しそうな顔されたら、離して下さないなんて言えない;それでも少し力を緩めてくれた白蘭さん。少しホッとしたのも束の間で、隙をついた骸さんに横から引き寄せられた。


「そんな弱い抵抗では何の意味もありませんよ、愛」


「む、骸さんっ!」


「ちょっと骸君」


白蘭さんの方に身体を向けていたあたしは必然的に後ろから抱きしめられてる形になって、その肩に骸さんの顎が乗るもんだから、赤面どころの騒ぎじゃない!てか近いってー!




***


「はあー…いつんなったら話せんだよ」


俺の隣で目頭を押さえて溜息をつく九条さんの声を聞きながらも、俺の心は大きく揺さぶられていた。いつも見てきた光景だけど、愛に簡単に触れられる二人が羨ましくて、同時に悔しかった。


「はあ、…(俺、愛には一人の男として意識してもらえてないんだろうな;」


京子ちゃんが好きなはずじゃんか。何で愛が他の奴に笑顔向けてたり、照れてるだけでこんな苛々すんだろ。だからいつだって俺が三人の仲裁にはいるんだ。




....
(いい加減にしろよ…)
(ツナあっ)
(綱吉は黙ってなさい)
(骸君が手を離せば終わるでしょ)
(それは貴方も同じです)
(だからいい加減にしろって!)


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