「頭痛ー……」
昨日は遅くまで定番とか言われて、枕投げに付き合わされた。ま、たまにはいいけどよ。
頭を押さえながら、自分の近くで寝ていた愛に目を向けると、気持ちよさそうに寝てやがるし。
昔と変わらない愛の寝顔が可愛いって思っちまうのは、やっぱあの頃からお前に対しての気持ちに、変わりがないからだよな。
そう思った瞬間、急に頭の痛みが強くなり身を縮めると、頭に直接響く声。
─いい加減、目を覚ませ、
「!だ、誰だっ」
痛いのを我慢して、声のする方を見上げれば、真っ白の空間に、一緒にいたはずの愛も他の奴らもいなくなってる。
どういうことだよ……。
─愛が欲しくてたまんねえんだろ?
「!っ誰だっつってんだよ!」
また声だけが届く中、立ち上がり怒鳴りつける俺をあざ笑うかのように、目の前に一人の男が現れた。
─俺はお前、お前自身が嫌って抑え込んでるもう一人のお前だ。
「なっ!俺だと…?じゃあ最近やたら意識が飛ぶのは─」
おい、マジかよ…。
目の前にたった男は、俺にそっくりで──。
─そう、俺が表に出てっからだな、けどお前も大分俺と一体化しはじめてんな。
「は?!ふざけんなっ!誰がてめーとなんか!」
一体化ってなんだよ、俺は俺だ。もう一人の俺なんか認めねえっ。
─愛に対しての醜い感情が俺なんだよ、ハロウィンのとき、手あげたのはお前の意志だ。
「!違うっ、やめろ!俺はただアイツが笑ってくれてりゃ、それで─」
それだけでいいんだ。愛が笑ってくれるだけで俺はっ。
─言い訳してんじゃねえ、惚れた女なら全部奪っちまえよ、紫苑みたいにな。
「!?」
紫苑…?愛の義父──。なんでこいつがそんなこと知ってんだよ。
─お前が出来ないなら俺がやってやる。
「やめろ─!!」
ドクンッと心臓が大きく脈打って、俺の意志とは逆に、含みのある笑いを残したそいつは、この空間から姿を消した。
愛っ!
....
(俺は、俺はただ──、)
(お前の笑顔を失いたくなくて) |