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11:(いいとこどりしちゃお?)

「愛チャンは目隠しね」


「何でですか?」


「見た目で誰が作ったか分かっちゃ、意味ないでしょ?食べさせてあげるから」


凄い楽しそうにバンダナを持つ白蘭さんに冷や汗が流れる。何か危険だ…。


「そんなもの必要ないって…ていうか出来たみたいだよ」


そんな白蘭さんに手首を掴まれたところで、ツナがひょこっと顔をのぞかせて知らせてくれた。


実はあの後、あたしが口走ったことで本当にオムライス対決が決行となり、あたしは自室に白蘭さんと引きこもっていた。


「うん、今いくー」


「食べさせてあげるって」


「自分で食べますって」


白蘭さんの手をそっとすり抜けると、先に皆がいるリビングに足を踏み入れた。


「わあっ」


そこには、美味しそうな香りむんむんのオムライスが二つ並べて置かれていて、どちらがどっちを作ったかなんてあたしには分からなかった。バカだし?


「愛だけずるいわよ」

「文句言うなって」


あたしには、二人が作ったオムライスを食べる特権があるみたいだけど、美和や皆は普通のオムライスみたいで、ちょっとした優越感を感じる。


「早く食べろよ」


「彼の方が美味しいと言ったら、どうなるか分かりますよね?」


「!──」


「脅すの卑怯だろ!」


「脅してません、ただ忠告しているだけです」


ああ言えばこう言うの繰り返しの言い合いをし始める二人に、あたしは席について手を合わせる。あんなの止めてたら時間の無駄無駄。


「いただきます」


そう一言を呟いただけで、急にしーんと静まりかえるリビング。白蘭さんは、そのタイミングにリビングにはいってきた。


「やってるね」

「楽しそうね」

「そりゃあね」


骸君が負けたときの表情、想像したら楽しくて仕方ないよ、と笑う彼の言葉を耳に入れながら、オムライスを口へ運んだ。


「──」


これ、颯斗だ。あたしの大好きなモノ加えて凄い懐かしい味。ということはと、もう片方の骸さんのオムライスを口に運んだ。


「──」


ふわっと広がる味に、自然と緩む頬。このふわふわ感が大好きなんだよね。


「幸せそうな顔しちゃって」

「颯斗が負け?」

「愛、骸のオムライス大好きだもんなー」

「僕のチャーハンも大好きじゃない」

「対抗しなくても」


確かにそうだったような気もするけどと続けるツナに、あたしは骸さんと颯斗を見上げてニコリと笑う。


「引き分け!」


「え─?」

「はい?」


目を丸くする二人に、あたしは競わせて悪い気もしたけど、どちらがどれだけとは言わなかった…ううん、言えなかった。


「どっちも好きだから」


「「!」」


味がね、


颯斗は、昔からよくあたしの面倒を見てくれていたから、変わらないオムライスの味は懐かしくて温かい。


骸さんは、あたしが初めて彼に食事を作って欲しいと強請ったときに作ってくれたモノだから格別に大好きで、美味しい。


どちらもあたしの¨大好き¨の条件に当てはまるから引き分けなんだ。


「ふ、ふざけんな!」


「勝負させといてそれはないですよ」


机をバンッと叩く颯斗に対し、溜息混じりに呟く骸さん。そんなこと言われたってどっちかなんて選べないんだもん。


「愛は優柔不断だもの」

「確かにそうだっけな」


「外野は黙ってろ!」


小声で呟き合う二人に突っ込む颯斗。にしてもあたしが優柔不断て何だそりゃ。


「愛チャン、正直に骸君の方が不味いって言っちゃいなよ」


「白蘭さん…」


「僻みですか、男の嫉妬は醜いですよ」


口角をつり上げて、皮肉で返す骸さんに首を傾げる。嫉妬ってどういうことだろう?


「食べちゃわないと冷めるよ」


「ツナ…」


そんな二人をどう止めようか、美和と和磨、颯斗をどうやって止めようかと左右を交互に見やっていたあたしの隣に、ストンと腰を下ろしたツナはニコリと微笑んだ。




....
(二人で食べよっ)
(俺が怒られる気がするんだけど…)
(その時はあたしが守ってあげる)
(!…それ、普通逆じゃんか)
(気にしない気にしない!)


(─(また、綱吉君か)
(─(また、綱吉ですか)


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