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10:(嫉妬?そんなはずない)

愛が過去を話したと頷いたとき、俺たちは言葉を失った。


だけど俺が驚いたのはそれだけじゃない。愛の過去を聞いても普通に接してるこいつ等の姿に言葉を失ったんだ。


「愛、濡れてるんですが…」


「えっごめんなさっ」


「嫌なら貸してよ。骸君」


「お断りします」


それどころか愛の取り合いをし出す二人に俺はもちろん、美和も和磨も口を開かない。否、開けないんだ。


「ちょ、骸さんっ」


「あーそう」


愛を抱きしめて終始笑顔で対応する六道に白蘭。何でそんな普通なんだよ…。


「ツナーっ」


「愛困らせるなって」


「「僕じゃ(ないよ)ありません」」


「「……」」


何で…、笑ってられるんだよ?


「不思議そうな顔してますね」


「!…べ、別に」


ずっと口を開かなかった俺に、六道は不適な笑みを向けてくる。俺はそれに顔を逸らした。愛の顔、見てらんねぇ。


「愛の過去は並の人間と少し違うだけ。それは僕らとて同じ」


「そうだよねー」


「た、確かに」


「!」


三人は笑いながらそう言うだけで、一度でも愛を突き放すような冷たい言葉を発しなかった。


「それに、愛は愛だから」


「ツナ…っ」


ああ、俺たちがずっと言ってやれなかった一言をこいつ等は簡単に──…。


「愛チャンが僕のファミリーだったらよかったのに」


直ぐに恋人に昇格だよ、って愛の頭を撫でる白蘭に今までに見たことないような表情を見せる愛。


「──…」


「私たち…一度も言ってあげられなかったのに…ね」


「ああ…」


簡単なことだったはずなのに、俺たちは一度だって愛を安心させてやることはできなかった。


俺は、好きなんだぞっ。愛した女なのに、俺が守るとか。俺が傍にいるとか…、全然言ってやれなかった…。


「じゃ、皆で帰ろう!美和!和磨!…ほら、颯斗!」


「え…」


「…何シケた面してんだよってね?」


…適わない。お前には一生たったったって適いっこないぜ。


「誰がだよ」


愛の差し出した手を取り、立ち上がると、俺はいつかこいつを守れるまで強くなったらこの気持ちを伝えようと心に決めた。






***


「骸」


「何ですか」


帰り道、堂々と学校を抜け出してきた僕らは前を談笑しながらいく愛達を見守りながら口を開かなかった。それを破った綱吉が、少し不機嫌そうな声で僕の名を呼ぶ。


「さっき、霧島さんに妬きもちやいて愛引っ張っただろ」


「それを僕だけに言いますか」


「骸君はどうか知らないけど僕はムッとしたから」


頭の後ろで腕を組んで愛を見つめたまま、少し真剣な顔してそう呟いた白蘭に溜息をつく。全く直球的な男だ…。


霧島…いや、颯斗が愛を抱きしめたときに僕が感じたのは嫉妬…?


バカな…、愛は、犬や千種と同じ。クロームと同じ存在。少し心を許せる。ただそれだけの──、それ以上でもそれ以下でもない。


第一、人を愛することなど、とうの昔に忘れた。僕には必要のない感情なのだから。


「骸さん!今日三人泊まるって!ご飯頑張ってくださいね!」


「は──?」


「お、そう言えば今日の食事当番。骸君だったねー」


「狙ったんじゃない?愛」


隣で苦笑する二人に僕は一人取り残された気持ちになる。


──違いますね。
人が物思いに耽っているというのにそんな話を振ってくる愛が俗に言うKYなんですよ。


だが、───…


「あたしオムライスがいー!」


君の笑顔が今は輝いて見える。


「ガキ」


「なっ!骸さんのオムライスなめるなよー!颯斗のなんかより数倍美味しいんだから!」


「んだとー!」


いつからか愛が向けてくれる笑顔が僕の心を温めてくれていた。買い被り過ぎ、なのかもしれませんがね。




....
(オムライス対決決行!)
(やってやろーじゃねーか!)
(……つかぬ事を伺いますが、誰が誰とですか?)
(ん?骸さんが颯斗と!)

(──愛)
(狽ヨへへー、ツナ!ヘルプ!)
(え秤エ?!ちょ、ちょっと待ったー!)


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あきゅろす。
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