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07:(一つだけ約束して)

朝日が昇る。カーテンの隙間から差し込んだ日の光が眩しくて、体を起こした。


そこには、彼の風格に似つかわない殺風景に広がるいつもと違う光景。それに一つ溜息をつく。


「ああ…、そっか」


それと同時に納得した彼、白蘭はゆっくり立ち上がり、この家の主であり、唯一自分に意見した女である愛の部屋へと足を向けた。


だが、部屋を出ると同時に顔を出した愛に意表を突かれて、何度となく瞬きを繰り返した。


「──」


「おはようございます!」


そんなことお構いなしに、ニコッと笑った彼女は元気よく朝の挨拶をする。


「お、おはよう」


昨日の彼女からは考えられないくらいにっこり笑って挨拶をする様には、首を傾げるほかなかった。


「ご飯、庶民的でよかったら食べますか?」


「あ、うん…」


「じゃあ少し待ってくださいね!」


彼女はそう言ってキッチンに向かい、白蘭は食卓のテーブルについた。


そこには既に起きていた二人、つまり宿敵であるボンゴレの十代目沢田綱吉と、霧の守護者である六道骸の姿があった。


白蘭が起きてきたことで三人の間に不穏な空気が漂う。


「朝からそんなんじゃこれから保たないですよ」


そこに、食事を運んできた彼女は苦笑しながら席に着いた。


「これから…?」


ツナは首を傾げて、運ばれてきた食事から愛に目を向ける。これからと言うならば、そんなに短い時間なわけではないんだろうという予測はたつ。


「…一つ約束してください」


そんなツナの問いに答えるわけではなく、彼女は先に、言っておかなければならないことを口にした。


「─ここでは、敵とか味方とか、仕事とか目的とか、全部忘れて過ごしてください」


そんな重い枷は、今この世界には必要ないことだと思うから。


「──!」

「───」

「───」


そのあたしの言い分に、驚きを隠し切れていないのはツナただ一人だけ。骸さんは眉間に皺寄せてるし、白蘭さんは相変わらず読めない表情。


「あたしはただの家主で貴方達とはそれ以上の関係は持ちません。日常生活の面倒はみます。だから、あたしは貴方達の保護者みたいなもんで!」


最後は明るくまとめて、男と女ではなく、上司と部下のような主従関係へと意識を向けさせた。


だからどちらかと言うと、世話係の方が当てはまるのかもしれない。でもそれじゃ立場がおかしいからイヤ。


「君、面白いね」


そんなあたしにさっきまで漂っていた空気は消え失せ、代わりに珍しいものを見るような目で見てくる彼らの視線が突き刺さる。


「何がですか?」


白蘭さんの言葉の意味が分からず首を傾げると、隣で笑いを耐えていたらしい骸さんから笑いが起こる。


「クハハッ!」


クハハッて相変わらず変な笑い方するなーと思いながらも、突っ込んでしまいたい衝動は止まらなくて、


「そこ爆笑?!」


突っ込みながらの騒がしい朝の食卓となった。結局あたしの一人暮らしは一日も続かなかったわけだ。


いつかいなくなるであろう三人に余計な感情は抱かないこと。あくまで彼ら三人は、漫画のキャラなんだから。


深追いは禁物、それはきっとあたし達の暗黙の了解。
















別れが辛くなる道理はいらない。辛くなるなら最初から深く関わらなければいいんだ。


この時はまだ、そう思っていた。




....
(深く関わらない事なんて)
(簡単だと思ってたから)


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あきゅろす。
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