愛とは小さい頃からずっと一緒だった。あの子の一番は私で、私の一番もずっとあの子だったのに──。 アンタ達が現れてから生活が一変した。いくら遊びに誘っても、いくら話を聞いてあげるって言っても、あの子は直ぐに家に帰りたがった。 一人暮らしだって言い切るのに、熱を出した日も必死に隠し通そうとするし、ずる休みなんかする子じゃなかったのに、簡単に一日休んじゃうし──…。 今も必死にあの三人のことを隠そうとしてる。私には分かる。あの子、早坂君じゃないじゃない…。¨沢田¨なんて人私たちのクラスにはいなかったわ。 「ねーね!美和!」 「え、あうん?」 「聞いてなかったなー!」 「ごめんごめん」 愛が何であんなにあの三人に懐いてるかは知らないけど、この子の過去を知ってもなお同じ態度で接することができるの? 無理よ。赤の他人が、愛を支えるなんて事絶対に無理。私だって、颯斗君だって、和磨だって─、初めはやっぱり対応が変わった。 それで愛を追いつめたこともあったわ…。それを乗り越えて今の関係があるのに、いきなり出てきて愛の傍にいるだなんて許せない。 「愛チャン、ついてるよ」 「え?」 「これですよ」 「なっちょ!」 愛の頬についたご飯粒を指摘した白蘭君と、取ったそのご飯粒を食べて頭を撫でている六道君に、私の怒りはおさまりそうになかった。 だってあの二人…、 私から愛のこと奪う気だものっ。 「神童さん、どうかした?」 「!…え?」 私が二人を睨みつけていると、横から顔をのぞかせた沢田が首を傾げた。 「さっきから何か深刻そうな顔してるけど…」 「な、何でもないよ!勘違いだって!」 アンタなんかに心配されるなんてごめんよ。私が憎んでるのはあの二人だけじゃないんだから…。 「美和、どうした?」 「何でもないってば…」 ほら、沢田が変なこと言い出したから、和磨にまで心配かけさせちゃったじゃない。 「……彼氏の俺を欺けると思うなよ?」 「和磨…」 私の頭を抱いて、小さい子をあやすように撫でてくれる和磨の温かさに、さっきまでの怒りは退(ひ)いた。 「ここでイチャツくなよ」 「羨ましいだろ(ニッ」 「和磨っ」 「誰がっ!」 「あたし羨ましー」 「なっ!何だよその目は!」 「颯斗も羨ましいくせにー。素直じゃないなーと思って」 「てめーは一言多いんだよ!」 「わー!颯斗が怒った!」 「二人とも!」 「ほら、いつも通りだろ」 「!──和磨」 喧嘩を始める愛と颯斗君。隣で笑って私の全てを分かってくれてる和磨。こんな日常的なこと、暫くなかったな…。何だかこの中に愛がいてくれることが私は何より嬉しい…。 チラッと横を見れば、愛が笑っているのにつられて笑っている三人。何だかそれも、あっていいのかなって─、そう、思えたのはきっと、愛と、いつも一番に私のことを理解して助けてくれる和磨のおかげだよ。 だけどやっぱり私…、愛にはありのままでいてほしいから、嘘はなしだよ。 「愛、もう隠さなくていいよ」 「え?」 話してくれなきゃ私たちだって彼らの存在を庇いきれない。でもそれは愛のためなんだからね。 颯斗君とじゃれていた愛に真剣にそう言えば振り向いて動きを止めた。 .... (私はただ、大好きな貴方の為に) (嘘を共有してあげるだけよ) |