家を出る前に、白蘭さんとツナの姿を幻覚で誤魔化して、可愛いって褒めたのに、白蘭さんはあんまり嬉しそうじゃなかった。何でかは分かんないけど…、今はそれより──。 「着いちゃった…」 目の前に見えた学校にどんどん落ちていくテンションは、もう最悪だね。 「愛ー!」 「うわっ?!」 とうとう来てしまった学校の校門前で、複雑な心境のあたしに後ろから飛びついてきた美和。ってことは皆いる……。 「よお、六道」 「おはようございます」 和磨が骸さんに挨拶して、笑顔を返す骸さん。何か不思議な光景だなあ、なんて暢気なこと考えてると、美和が不思議そうにあたしの後ろにいる二人に目を止めた。 「あれ?」 「!──」 パチンッ──── バレると思った瞬間、あたしの隣で響いた指を鳴らす音。 「沢田じゃん!やっと学校出てきたんだね」 え───? 「え、あっうん」 ツナは美和の言葉に驚いていたけど、話を合わせて頷いていた。 全然怪しまれなかった…? あたしはさっき指が鳴った方を見上げると、笑顔を向けてくれる骸さんがいて─。 「よかったー…」 「何がよかったんだよ」 「は、颯斗…おはよ」 「おう」 あたしも笑顔を返して全身で息をついた。その時、横から顔を出した颯斗に挨拶をするけど、何か頭の中で引っかかってる事が──…。 あ…、そうか。九条君の言ってた黒幕のこと、それが今、あたしの目の前にいる彼かもしれないんだ…。 「何だよ」 「あ、ううん」 まだちゃんと聞いた訳じゃないし、本当かもわからないんだから変に疑っちゃダメだよね。 「つかさ…あれ誰だよ。また転入生か?」 「え……あっ」 颯斗があたしに耳打ちしてきた事に、今まで忘れていた白蘭さんの存在を思い出してハッとなる。 「あのね、留学生なんだって!ね!」 「Sia separato dai mio ai」 (僕の愛チャンから離れてよ) はい? えっ今のイタリア語? 笑顔で何かを言った白蘭さんに、颯斗は眉間にしわを寄せた。 *** 「…彼、イタリア語分かるんですか?」 「ん?ああ、アイツ、イタリアに留学してたからな…」 「──(それはまた…」 僕の愛から離れろ。とは、あの男らしい独占欲丸出しの言葉ですね。 一つ収穫もあったことですし、そろそろ助けてあげましょうか。 「Per favore non provochi un problema dai primo giorno」 (初日から問題起こさないでください) 「骸さん?」 「まだ何もしてないよ」 「する前に止めましたから」 あたしの前でイタリア語使わないでよ;意味がチンプンカンプンなんだから…。 未だに黙って口を開かない颯斗に、美和にいじくられてるツナ。睨み合う白蘭さんと骸さん。 何か、これから大変かも……。 .... (よ、愛) (九条君、おはよう) (朝から賑やかだな) (あ、はは…) (ちょ、ちょっと愛!) (は、離れろバカ!) (何、普通に会話しちゃってんだ!) (あれが先に愛チャン助けたって子?) (ええ…(何馴れ馴れしく(苛) (何か面倒見良さそうな人だね…) ((───はあ、)) |