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12:(辛かったね)

シーンと静まりかえるリビング────。


「病院で目が覚めたと、き…パパはもう死んだって聞かされて、…ママはあたしに泣きながら謝り続けてた…」


あの頃の記憶は今も鮮明によみがえる。


「だけど…紫苑さんは逮捕されなかったの」


「え?何で…」


ツナの問いかけにそちらに目を向けて悔しい気持ちを言葉に表した。


「あたしをレイプして父を殺した時に居合わせてあたしだけ助けることが出来たって!泣きながら嘘吐いたの!」


「そんな…」


「だからママは紫苑さんに土下座までしてありがとうって…っ何も知らないでっ…アイツと再婚してっ!」


何を言いたいのか分からない。
どう伝えていいのか分からない。


「…それからも母の目を盗んであたしは何回もヤられた…だから海外に転勤が決まったとき、一人暮らしの道を選んだの」


そこまで話し終わると、あたしは白蘭さんから体を離した。


皆、最初は大丈夫だから話してって言うの。だけど聞いた後、黙り込んであたしから離れていく。それが現実。


「あたし…パパを助けてあげられなかったっ見殺しにしたのよ…」


いくら紫苑さんが悪いと言っても、あたしが口を開いて事実を告げていれば、アイツは逮捕されていただろう。父の仇だってうてただろう。全てはあたしが軟弱なせい。


「愛は悪くないよ」


「!─…」


「悪くない」


だけど、その沈黙は直ぐに破られた。ツナは、あたしの涙を拭ってハッキリそう言ってくれて…、辛かったね、ってそう言って…、


「ツナ…っ」


それでも流れてくる涙をツナは苦笑しながら拭いとって笑顔を向けてくれた。


「女の子が男に勝てないのは弱いからじゃなくて優しいからなんだよ」


「──」


そんなあたしの頭をポンポン撫でて、優しい声色でそう言ってくれるのは白蘭さんで、…さっきみたいにギュッと抱きしめてくれた。


「びゃくら、さ──…」


「もう我慢しなくていいから…」


あたしは、白蘭さんの温かい腕の中で堪えきれなかった涙をボロボロこぼす。


今日だけ、今日だけあたし──、
普通の女の子に戻ってもいい…?


「これで筋が通りましたね。明日からも僕が学校に行きます」


「…え、…」


「今日みたいに君が傷つかないようにですよ」


白蘭さんから少し体を離して、骸さんの方に振り返れば、そう言ってそっとガーゼの上から頬を撫でてくれた。


「本当だよ。何のために愛チャン任せたと思ってるの」


「貴方には言われたくないですね、癇に障ります」


「ふ、二人とも…」


終始笑顔であたしを板挟みに言い合う二人を、あたしはいつもみたいに止めることが出来ずにいた。


「だいたい骸君さ、余計な私情持ち込み過ぎなんだよ」


「おやおや、僕がいつ私情持ち込んだと?貴方と一緒にしないでいただきたい」


「僕がいつそんな素振り見せたっていうのかな?ね、愛チャン」


「え…;」


ねってあたしに振られても困るんだけど。というか白蘭さん怖いよ…;


「愛をこれ以上困らせないで下さい」


「困ってるの?」


「え、あ──…」


これをあたしにどうしろと?
誰か助けて──…。


そう思った瞬間、フワッとあたしの体が宙に浮いた。正確には、誰かに抱き上げられた。


「いい加減にしろ」


「!──ツ、ナ…」


あたしが、頭上から聞こえてきた声に顔を上げると、額に炎を灯したツナと目があった。ていうか、あたし姫抱きされ──!?


「あ、あのっ」


「…大丈夫か?」


「だ、大丈夫!」


あたしは超死ぬ気になってるツナに慌てて頷くと、彼はそっと下ろしてくれた。


「何してくれちゃってんの。綱吉君」


「君はいつもいいとこどりですね」


「愛を困らせるな」


ちょっと、ちょっと──…、
何か三人とも殺気立ってるんだけど…。あたしの話聞いて慰めてくれていた三人はどこに消えちゃったの?(困)




....
(ここでボンゴレボスを潰すのも悪くないね)
(その言葉そっくりそのまま返す)
(では僕も参戦しましょうか)
(あ、あのー…家が壊れるから)

(愛チャン賭けようか)
(負けない)
(渡しませんよ)

(……皆嫌い)
(((!?──)))


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