「ただいまー!」 玄関から聞こえてきた愛チャンの声に時間を確認するけどまだお昼前…。何で?今日って午前で終わりの日だったっけ? 「愛、どうかしたのかな…」 「骸君が騒動起こしたから連れ帰ってきたんじゃない?」 「貴方じゃないんですからそれはないですよ」 「あ、お帰り骸」 僕の会話に突っ込んできた骸君はスルーして、愛チャンを探すけどリビングには来てない。 「骸君、愛チャンどこ?」 「……洗面所にいますよ」 「ふーん…」 今の間は何かな? やっぱり何かあったみたいだね…。 「怪我したの?」 「えっ」 「……」 僕の問いにどう答えていいのか分からないのか、眉間に皺を寄せるだけの骸君に鋭い視線を向ける。 「あれ、皆!何もめてんの?折角早く帰ってきたのに!」 「おかえり、愛チャン」 元気よくリビングに顔を出した愛チャンはいつもと変わりのないように見えるけど、頬にガーゼが当ててあった。 僕が笑顔を向けると愛チャンからも笑顔が返ってくる。 「愛、どうしたの…それ」 「あー、これね…体育でドジ──」 「愛の父親が負わせた傷です」 「骸さん!!」 だけどその柔らかい雰囲気も次の瞬間の綱吉君の問いかけで、ピリッとした冷たいモノに変わった。 父親?状況を飲み込めない僕は口を開かずその場を見守る。その隣で、¨父親¨という言葉に酷く反応した綱吉君も気になるけど…。 「約束したはずです。帰ってきたら話すと」 「してない!あの時は今話さなくていいってっ」 「もう隠し通せる状況ですか!」 机を叩くバンッという音がリビングに響き、珍しく声をあらげる骸君に愛チャンは押し黙った。 あーあ、女の子脅しちゃだめでしょ。 「愛…電話の人と関係あるんじゃないの?」 「ツナ…」 「盗聴器に監視カメラ、家の外で24時間見張ってる連中…」 「白蘭、さんっ…」 僕はソファーから腰を上げると、愛チャンの頭にポンと手を置いて笑顔を向ける。 「何も知らなかったら守ってあげたくても何も出来ないでしょ?」 「え…」 君から話さないのに無理強いすることなんて出来ない。でももうそろそろ話してもらわないとこっちも動けないからね。 「今日、骸君を君と学校に行かせたのも、ハロウィンパーティーから呼び戻したのも全部、心配だったからだよ」 「!…」 僕の話を聞き入るように見つめる愛チャンに終始笑顔で言い切る。作り笑顔じゃなくて、安心させる為に自然とでた笑顔。 「愛チャン危機感ないうえ無防備だから」 そう言って笑顔でね?と同意を求めれば、大きく見開かれていた瞳が揺れて、俯く。 そのとき、僕と愛チャンのとこまできて口を開いたのは綱吉君だった。 「俺…朝、愛に怒鳴っちゃったのとか…上手く言えないけど…頼ってくれないのが何か悔しかったからで…っ」 「…ツナ」 きっと怒鳴っちゃったのずっと気にしてたんだろうね…。 「僕らは気に入らない人間と何ヶ月も生活を共にするほど、出来た人間ではありません」 「骸さ…ん」 そしてやっと落ち着いたのか冷静に戻った骸君が遠回しに話しても大丈夫だと、誰も愛チャンを嫌うはずないと伝えてくれる。ま、確かに気にくわない子だったら会って直ぐのあの時に殺しちゃってたかな? 二人の言葉に揺れ始めた愛チャンを説得する様に最後は僕が口を開いた。 「ゆっくりでいいから話してみない?」 僕のその問いかけに、愛チャンは少し思い悩むような顔をしてから小さく頷いた。 .... (今までずっと一人で抱え込んできた) (そんな彼女が頷いたことに) (少なからず、それを聞いてもいい) (その対象になっていた事が) (何より嬉しかったよ──) |