─「休んでください」 何故か言い返せなかった彼女の言葉。それが怪我の手当をしてもらったからかは分かりませんが。 ミルフィオーレに潜り込み、今日まで殊の外、肩身の狭い思いをしてきた。 あの白蘭という男─── 内に秘めている力は果てしなく、強大で、まだ油断は出来ない。この訳の分からない世界に飛ばされてきたのが僕とあの二人とは──。 それに加え、ボンゴレは10年前の姿ときた。これはまた困ったものですね。 「骸さん、起きてますか?」 僕が溜息を吐いたのと同時くらいに突然聞こえた声。それに少し驚いたが、直ぐに彼女の声だと分かるとドアを開けた。 「やっぱ起きてたんですね」 ダメですよ、と苦笑する彼女に何をしに来たんだと心で呟いた。いきなり休めと言われて、何一つ分からぬ状況で安心など出来ない。増してや敵である白蘭までもがここにいるのだから。無理でしょう。 「ツナ君、心配してます」 そんな僕に、心配気な表情でそう口にした彼女にだから何だと言ってしまいそうになる。 「心配ないと言ったんですがね」 自分でも分かるほど冷たくなってしまった声色に、彼女を見るも表情は先程と何一つ変わらぬままで。 「仲間だから心配するんでしょう。分かってて突き放すのは酷です」 酷─?別に僕はマフィアなどと馴れ合うつもりなど毛頭ない。虫唾が走るだけだ。 「仲間?彼は僕の標的であって─」 「仲間ではない─ですか?」 「───」 何故、僕が言おうとしたことが分かったんですか─? 「でも、彼はそう思ってませんよ。今日はもう遅いのでゆっくり体休めてください」 「!──えぇ、そうさせていただきます」 「おやすみなさい──」 「──おやすみなさい」 結局何をしに来たのか分からない彼女。何をしにきたんでしょうか。 あんなに怯えて震えていたのに、ズバズバとものを言う彼女の言葉は自然と頭の中に入ってくる。 何でも知ってると言いた気な瞳は、悲しみと孤独を強く表していた気がした。ただの錯覚かもしれませんが、ね。 だが、今日は少し疲れましたね。久しぶりに体を休められる、これは素直にそうしておいた方がよさそうだ。 お言葉に甘えて、休ませてもらいますよ。 「大丈夫だったみたいよ」 「よかった──」 ツナに頼まれて様子を見たけど、具合が悪そうには見えなかった。反論する元気があるなら大丈夫だよ。 それを伝えたら、ツナは自分のことのようにホッとした顔をする。よっぽど心配してたんだな。 「ツナ……君てさ」 「ツナでいいよ」 「あ、うん。あたしも愛でいいから!」 「うんっ」 ああ、癒されるなこの可愛さは。 白蘭さんにはもう一つの個室を使ってもらうことになって、部屋がないツナは必然的にあたしと同じ部屋になってしまった。 「ごめんね、部屋なくてさ…」 「全然!俺こそお世話になっちゃってっ」 本当いい子だ。印象が全く変わらないや(笑)慌てるツナにニコッと笑って布団をたたく。 「とにかく明日に備えて寝よう!」 「ん、そうだね…(ちょっと気まずいなっ」 年頃なだけあって、少し抵抗のあるツナだが、もう瞬時に寝てしまった愛を見たら何も言えなかった。 「おやすみ──」 そっと呟いて目を閉じると、不思議と直ぐに夢の中に落ちることが出来た。 .... (不思議な安心感) (それはキミだからだろうか) |