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02:(悲痛な再会)

「骸さん……」


「はい?」


「何であたしの隣?」


あの後、喧嘩には至らなかったもののどの手を使ったのか、あたしの隣は骸さんの席になっていた。ホームルームの際に自己紹介を含め、骸さんの紹介は終わったんだけど…。何故隣……?


ちなみに後ろは、美和と和磨、前は颯斗であたし達の固まりは窓際にある。


「僕の役目は君の見張りですから」


「…話し合いしたんですか?」


「はい」


ニッコリという効果音と共に向けられた作り笑顔は、あたしからしたらかなり怖かった。けど…?


「愛ちゃんと話してる人格好いいよね」

「ホントにっ!転校生なんでしょ?」


とまあ、骸さんの人気は凄かったみたい。代わりに男の子からはブーイングがきてたけど…。


あたしは、周りの視線を気にしながらも、前の席に座る颯斗の服を引っ張る。


「ね、颯斗…宿題やった?」


「あ?またかよ…、たまには自力でやれって」


「だって家のことで手一杯なんだもん」


そう、宿題なんてやる時間ない。骸さんと白蘭さんなんか別室なのに喧嘩するし、と骸さんに目を向ければひょいと、課題ノートを取られた。


「あ……」


「自分でやらないと身につきませんよ」


「わ、分かってますけど…一限からだし」


ごにょごにょと言葉を濁すあたしを呆れたように見返してくる骸さん。


「そーゆうお前は出来んのかよ」


「愚問ですね」


「あ、ははは…(汗」


そりゃあ骸さんもう成人してるし?(笑)また学校ではこの二人の間に火花が散って見えます…。


そうこうしているうちに一時限の授業開始のチャイムが鳴る。


「あー!化学の先生来るの早いし!今日だけ見せて!」


「あ」


「全く…」


二人が何を言おうと気にしないで、颯斗の課題ノートを自分のそれに書き写していく。


「なーな、品川今日いねーんだって?」

「つか、新しいセンコー来たんだろ?」

「六道といい今日は何か多いな……」


あたしが一生懸命ノートを書き写したというのに、クラスの男子から聞こえてきたその会話。これじゃやった意味ない。


「残念だったわね愛」


「美和も和磨にみしてもらったくせにー」


「愛じゃあるまいし、私はちゃんとやったわよ」


「えー…」


「愛だけですよ、ズルしたのは」


「うっ…」


美和と骸さんに責められて机に突っ伏する。何か今日はいつにもまして迫力あるな…!─そっか、今日は骸さんがいるから…。


「何か?」


「あ、何でもないですっ」


つい骸さんを凝視していたあたしを不思議そうに首を傾げながら見返す彼に、バッと顔を逸らす。


「…(分かりやすい反応ですね」


丁度その時だった。ガラッという扉の開く音がして、顔も上げていないのに何か危険信号が頭の中に響いたのは──…。


「起立」


ガタッ──…。


「礼」


「「お願いします」」


「着席」


いつもの様に交わされる挨拶が遠くに聞こえた。


「愛?」


隣で骸さんが不思議そうにあたしを見上げる。美和も和磨も颯斗も皆──…。


「な、んで──…」


だけどあたしは立ったまま動けなくなった。それどころか視線も教卓に立つ彼から離せない。


「どうしたのかな?楠木さん?」


ビクッ───
名前を呼ばれて、一気に集中するクラスメイトたちの視線。だけどあたしはそんな視線より、彼の視線があたしに向いている事が何より怖かった。


「愛座りなさい。いくら久しぶりに父と再会したからといって今は授業中だよ」


父───?
冗談やめてよ、誰がアンタを父親だなんて認めたんだよ。


でも彼の言葉にあたしの動揺ぶりを納得したのか、クラスメイト達は少しザワツきながらも視線を前に戻した。


「愛、どうしたんですか」


「やだっ……違うっあた、しはッ」


「具合が悪いのか?愛」


呼ぶな呼ぶな呼ぶな!!
お前があたしを気安く呼ぶなっ!


教卓から離れ、あたしの方へ歩み寄ってくる彼に腰が抜けて椅子に座り込んでしまう。よみがえってくる恐怖に、ガタガタと震える体。この場から早く逃げ出したいのに動いてくれない。


「愛どうしたのよ」


後ろから聞こえてくる美和の声にも反応できず、心配して振り返る颯斗にも何も言えない。


「俺に恥をかかせる気か、お前は」


グイッと引っ張り上げられた手に、忘れられない記憶がフラッシュバックした。


「い、いやぁあああ!!」


「愛!」


あたしの意識はそこで途絶える。




....
(思い出したくもない過去が)
(悲痛な再会と共に)
(よみがえり始めた──)


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あきゅろす。
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