─「何でそんなこと言うんだよ!」 ツナがあたしに初めて怒鳴った。あたしには何で彼が怒鳴ったのか理解できなくて、気が抜けたように、ベッドに腰掛けてそのまま横に倒れる。 「分かんないよ…」 布団に顔を埋めて、目を閉じる。あたしの頭を巡るのは、颯斗のこと、アイツのこと、三人のこと────…。いろんな考えがぐるぐる頭を渦巻いていて、それを全部振り払うかのように眠りに落ちた。 *** 「愛、遅刻しますよ」 ゆさゆさ揺られて夢の中から引き戻される意識。 「ん…」 目を擦って起きあがると、しゃがみこんで側にいた骸さんと目が合う。 「制服に着替えたなら二度寝しないで起きてきなさい」 「あ…はい」 「まだ寝ぼけてますね」 「いえ、…今日朝食いらないです」 ツナと顔を合わせずらいのもあるけど、食欲がないのもまた事実。あたしは骸さんから顔を逸らして小さくそう呟いた。 「…そうですか、でしたら用意し終わって学校に行く前に僕を呼んでください」 「え…?」 あたしの返事も聞かずに部屋を後にした骸さんの背中を見送り、呆然とする。何で呼ぶ必要があるのだろうか?でもとにかく遅刻はできないので、準備をしてからリビングに顔を出す。 「骸さん…」 「先に玄関行ってて下さい」 「はーい…」 何で?という疑問は切り捨て、リビングにいるだろうツナと、白蘭さんの姿も探せぬまま、玄関に向かった。 そうも時間を要さないで、現れた骸さんは───。 「…え」 「これで高校生に見えるでしょう」 「なっ、ななっ!」 そう、骸さんはリングの力を発動させてか、姿形はまるで高校生で、長かった髪も十年前の姿のより少し長いだけ─…。 「詐欺だ!」 「立派な幻術です」 キッパリ言い切った骸さんにあたしは訳が分からずオロオロしていると、グイッと腕を引かれた。 「さあ、行きますよ。転校初日から遅刻は嫌ですから」 「転校!?えっ待って下さい!」 確かに骸さんが着てるのはウチの学校の制服だけど、何の手続きもなしにいきなり転校だなんて無茶だ!しかも意味わかんない! あたしの手を引いて、さっさと家をでる骸さんに何も聞けないまま家を後にした。 「うまくいくといいんだけどね」 「うん…」 そんな二人を難しい顔をして見つめる白蘭とツナの二人。 *** 「骸さん!説明してくださいって!」 「おや、さっきの弱気な愛はどこに消えたんですか」 「なっ!話をはぐらかさないで下さい!」 ギャイギャイ騒いで近所迷惑な。愛を連れて学校に向かう為、バス停でバス待ちの間横から煩い彼女に方耳を押さえる。 「骸さん!」 「ほらバスきましたよ」 「あーもう!」 グッと手を引いてバスに乗り込めば、素直に従う愛。綱吉が心配するほどのこともないと思いますが、一応今日一日は…と心の内で思う。 「骸さん、あっち座って話してください」 空いてる座席を指さし、そう言う愛に溜息をついて、一番後ろの席に腰を下ろす。 「はいどーぞ」 「今日一日だけ暇つぶしってやつです」 「……嘘」 「ではどんな答えを望んでるんですか」 僕がそう問えば、一瞬見せる寂しそうな表情。それから直ぐに真剣な顔して僕を見つめる愛。 「ツナに何聞いたか知りませんけど、余計なお世話です」 「…よくもまあそんな強がりが言えたものですね」 「強がってなんか!」 「綱吉は最後まで口を割ろうとはしなかった。ただ貴方があまりにも無防備過ぎるから今日一日僕が付き添う…ただそれだけです」 「…あまりにもって…」 「ついたら起こして下さい」 「えっ」 愛とこれ以上口論を続けると、余計な感情が生まれかねない。そう判断した僕は、学校までの道のり寝るに徹した。 骸さんの一言一言があたしを救ってくれてるのは分かってた。今日一日付き添うだけと貴方は言ってくれたけど、 それはツナが言ったから? 貴方の意志は欠片もないの? 隣で眠る骸さんを見ながらそんなことを思った。彼が自分の意に反することはしないことくらい知ってる。 だから少し期待した。この人になら、ううん…、あの三人にならアイツの事ちゃんと打ち明けられるかもって…。 あのときツナが怒鳴った理由も何で頼ってくれないの!っていう訴えかけならいいなって…。 こっちの世界の人間じゃない彼らがあたしの心休まる場所になってしまった。 別れが直ぐに迫っているとしたら、あたしは泣いてそれを阻止しようとするかもしれない。 出会った当初に絶対深入りをしちゃいけないって思ってたはずなのに…。無理だよ…。 あたしは襲いかかる睡魔に勝てず、骸さんの肩に寄りかかって目を閉じた。 .... (終点、○●高校だよ!君たち!) (…、何で貴方まで寝てるんですか) (スー…) (愛!) (はいィ!) |