「いっ─」 「ごめんなさいっ、大丈夫?」 「大丈夫です」 救急箱を取って戻ってきたあたしは、とにかく三人をリビングの椅子に座るよう、促して重傷な骸さんから手当をしていた。 大丈夫とニッコリ微笑んでくれた骸さんはやっぱり年上だからか、こんな大怪我を負っても人事のようで、場違いながら強いなって思ったりした。 「はい、とにかくはこれで─」 応急処置程度の手当を軽く施して、眼帯を当てる。痛々しいな……。 「ありがとうございます」 「いえ、」 お礼に笑顔を返すけど、内心混乱しまくりだ。まあとにかく、骸さんはかなり出血してたからあまり動かない方がいいと思う。床が血の水たまりみたいな感じだったから。よっぽどだよ。 「今は安静にしてた方がいいですよ。詳しいことは明日、今日は休んでください」 「それは──」 「休んでください」 あたしは有無を言わせないハッキリした口調で言って笑った。だって無理したら傷口に負担が掛かっちゃう。 「骸、今日は休んだ方がいいよっ」 あたしの言葉に加わりツナもそう言ったことで、骸さんは渋々リビングを出て個室に移動した。 「自由に使ってください」 「はい、ありがとうございます」 骸さんがベッドに腰掛けるのを確認してから、心配だったけどリビングにいる二人も心配だった為、直ぐに引き返した。 「あのっ…ありがとう」 「あ、ううん」 リビングに入って直ぐに駆け寄ってきたツナに笑顔を返すと、安心した彼からも笑顔が返ってくる。それからあたしとツナは、リビングの椅子に腰掛けた。 さてと、どうしようかな。明日は休日なんだけど、この様子からして逆トリップの場合……今日、明日で帰れるような軽いものじゃないだろうし…。 「白蘭…さん」 「なぁに?」 欠伸をしながらこっちを向く白蘭さんの向かいに座ってるあたしはさっきの手のことを思い出して、彼の前に手を差し出す。 「ん?」 「手首…怪我してたから」 そう言ったら面食らったような顔をして、ポカーンとする白蘭さんの手を取って、消毒するとガーゼをテープで固定する。ひとまずこれで大丈夫だと思う。 「もう大丈夫です」 「……ありがとう」 少し控えめに紡がれたありがとうに内心ドキッとしながら、もう一度手を差し出して表情を堅くする。 「リング、出してください」 「!──何のこと?」 笑顔を絶やさない白蘭さんはそれでいて余裕顔。リングというのは、彼らミルフィオーレ側が持つマーレリングのことだ。ボンゴレで言えば、ツナ達が持つボンゴレリングと同じ。 彼が持つそれが、今最も危険を及ぼすことになるだろうことは明白。 「──詳しいことは明日話すつもりですけど、骸さんやツナ君に手を出さないでください」 「俺?!」 「───」 驚くツナに対し、今まで笑っていた白蘭さんの表情が変わる。鋭く底冷えするその瞳に負けじと見返すけど正直怖いです、はい。 「何で此処に飛ばされてきたかは知りませんけど、此処は貴方達のいた世界じゃないですから」 「──じゃあ何で君はそんなに詳しいの?最初から僕等の存在知ってたみたいな言い方だね」 鋭い目がキツくあたしに突き刺さる。ぶっちゃけ、こんな間近でそんな風に睨まれたら逃げたくなる。 ツナはおろおろしてるみたいだけど、二人をこんなとこで死なせない為にもあたしは引けない。 「知ってます、貴方がどうしようとしていたかも全部」 「それってさ、死に値するって分かって言ってる?」 スッと伸びてきた手があたしの頬を滑る。笑顔でサラッとそんなことを言う彼にビクッと体が震えた。 「分かってますっ──でもっ」 彼の触れるところから凍っていくような錯覚を抱きながらも、きちんと目を見て口を開いた。 「────」 でも、こんなとこで、自分の目の前で救える命を見殺しにするなんて出来ない。少しでも可能性があるなら、それにあたしはかけたいんだ。 暫くの沈黙の後返ってきたのは意外な言葉だった。 「今は殺さないよ、殺しちゃったら帰り方分からないしね」 「え─?」 「名前は?」 「あ、愛…です」 「愛チャンね」 再度確認のようにそう繰り返して、今度はふんわりと微笑んでくれた。わ、綺麗な笑顔。 「ボンゴレ十代目は、綱吉君だったかな」 「何で俺のこと─」 そっか、本当はまだ出会うはずじゃないんだよね、この二人。 「僕がミルフィオーレのボスだよ」 頬杖をついてニッコリ笑った白蘭さんの言葉にツナは石化状態。そりゃそうだよね。 これっていいのかな? 漫画の世界壊れたりして。 あたしは二人を見守りながらそんなことを思っていた。何だかんだ言って冷静な自分に吃驚。 .... (愛チャン一緒に寝ようか) (──け、結構です!) (見張ってなくていいの?殺しちゃうかもよ?(ニコ) (白蘭さん!) (冗談だって) (──(冗談に聞こえねぇー) |