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02:(大きな嵐がもうそこまで)

今日はまた一段と寒いな…なんて──…。


「寒いっ」


「愛チャン、もう七時だよ」


「嘘っ!?」


ドア越しに聞こえた白蘭さんの声に飛び起きて、急いで部屋を飛び出した。


「おはよう」


「お、おはよー…」


白蘭さんは近くまできてニッコリ笑いながらおはようなんて言うもんだから、何だか意識しちゃって声が上擦る。


「今日は、午前で終わりでしたね?」


「あー、そだっけ?……あ!でもちょっと遅くなるかも、です」


「お昼はいらないんですか?」


「えっ…あー、はい」


ホントは骸さんの手料理が食べたいなんて口が滑っても言えない。それに今日は、ハロウィン祭。美和の家に集まって、パーティーが開かれる。


あたしは三人のこともあるし、できれば長居はしたくないんだけど…。お菓子作りもある為、最後まで参加しなきゃならない。


あたしが、うーんと頭を抱えていると、横から声がかかった。


「気をつけてね」


「え?」


ソファーに寝転がっていた白蘭さんが急にそんなことを口走るので首を傾げた。何に気をつける?


「先日、お見舞いだと称して家に来た彼のことですよ」


あたしにも伝わるように説明してくれた骸さん。だけど、それって颯斗のこと?


「どうして?」


「貴方が子供だからですよ、前にも言ったと思いますが」


「ひ、酷い!子供じゃないもん」


「とにかく、今夜の夕食担当は貴方ですから、早く帰ってきて下さい」


骸さんにうまく話を丸め込まれて、話は曖昧なまま終わった。何か逸らされちったなー。


「行ってきます!」


「行ってらっしゃーい」


白蘭さんに手を振られてそれに笑い返すと、そのまま家を後にした。だけど、あたしには気がかりなことがいくつかある。


どうして颯斗と実際対面していない白蘭さんが、彼を敵視するのか。対面した骸さんは、あまり近づくなと言うし…。


これまで何もなく、あの三人と仲良くしてきたんだし、その関係は今もこれからも変わりはしない。


この時はまだ、そう思ってた──…。




***

「愛チャンのあの無防備なとこ何とかならないのかなー…」


「無理でしょうね」


愛が学校に向かってから、ゆっくりティータイムを楽しむこの二人は、さっきから愛の話で持ちきりだった。


ツナはまだ寝ているのか、リビングには二人しかいない。


「それにしても…、あの颯斗とかいう男が来てから見つかったこの盗聴器の数は尋常ではないですね…」


「全部見つけたんだ」


「ええ、あの短時間にどうやって仕込んだのやら…」


テーブルの上に並べられた小型の盗聴器から監視カメラまでをリングの力を使い、一瞬で粉砕する白蘭を横目に溜息をつく骸。


「こっちの世界にだってマフィアはいるんでしょ?」


「そうみたいですね…」


「彼が回し者だと考えて危機感を持つべきなんだけどね…」


「愛とは、数十年の付き合いだというなら、今更距離を置くのは無理でしょう」


二人は、真実を知ったときの愛の悲しむ顔を思い浮かべ言い出せずにいた。


今朝、彼女が心底不思議そうな顔を自分たちに向けても、答えることが出来なかったのはその所以だ。


いつの間にか、自分たちが彼女のペースに巻き込まれていたのを理解していながらも、抜け出せない。


それが心地いいとまで思い始めている彼らに迫り始めていた嵐はもう直ぐそこまできている──。




....
(ふぁーあ…、あれ愛は?)
(とっくに学校行きましたよ)
(ここにも一人、危機感感じてない幸せ者がいたっけ)
(はあ……)
(え、俺?)


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