今日からいよいよ一人暮らしがスタートする。高校生になって、両親が半年間の海外出張となった。 兄弟も皆、ママやお父さんについて行った。だけど、あたしは社会勉強という名目で残ることを選んだ。 海外は楽しそうだけど、何かと大変だろうと思う。だって、あたし英語大嫌いだし…。 それにどうもあたしには平凡に過ごす生活の方が合うみたいだから。 何も起きないのは退屈だ。でもさ、今ハプニング起こっちゃったじゃん? 「一人暮らしだなんてー、快適ー…」 新しく自分の家となった、一人で住むには勿体ないくらいの広さがあるマンションの一室。 何だかちょっとだけ大人になれたなんて思ってみたりする。独り立ちだもんね。 「しっかし、広いなー…」 あたし的に、リビングとお風呂それから自分の部屋。 これだけあれば満足だったんだけど、最上階でテラス付き。リビングには、何故か四脚の椅子に長方形のテーブル。 そして個室が三つときたらもう一人じゃ勿体ないと思うね、うん。 今度友達でもよんでお菓子パーティーでもしよっかな(笑 気も使わせなくて済むし。 いっそのこと誰か同居人になってくれたらいいのにね。 何だかんだ言ってちょっぴり寂しい気がする。だけどこの一人暮らしを選んだことに後悔はない。 そんな考えは吹き飛ばして、早速部屋を片づけだした。 荷物を整理して、少しは近くなったであろう学校の準備をする。 「ふぃー…」 それから数時間弱、大分片づいて、隅に追いやられた段ボール達を横目にあたしはソファーに腰を下ろし、テレビをつける。 『今夜は雷警報が出ています。停電の恐れがありますのでご注意ください』 「う、そっ────!」 ダメダメダメ────! あたし雷苦手なんだよっ! しかも引っ越し初日に停電かよ。やだやだ! 爽やかに笑って天気予報を告げるお姉さんを憎いと思いながら、気を紛らわす為チャンネルを回す。 でも中々いい番組にたどり着けなかったあたしは停電になる前にお風呂!と決め込んで、シャワーだけ浴びにいった。 その間、雷が鳴り響き天候は益々悪くなる。 「ポッカポカ♪」 お風呂では、シャワーの音であまり聞こえなかった雷だが、リビングに戻ってきてみれば稲妻まで見える始末。 「ひィっ!」 身を縮め、ハイハイ状態でMDプレイヤーを流しにいく。音さえ流れてくれれば、気が紛れるし。 「よ、よかった───」 音楽を流したあたしは、雷の音が遠くなった事に、一息ついた。 床にへたりこんで、ふと視線をあげると、妙なことに気づく。 「これ、血───?」 リビングの床に垂れて、水たまりみたいになっている赤い液体。まさかとは思ったけど確かめないと気が済まないあたしはそれに手を伸ばす。 ベチャ──── 「───?!」 間違いなく、本物の血だ──。 リアルに触れたそれに、あたしの手にある赤。 本物を目の当たりにして、声にならない叫び声をあげたあたしは後ずさり何かにぶつかった。今度は何? 「君、誰?──ここ、どこ?」 頭上からふってくる声に顔を上げたら、返り血が飛んだのか白い服を血に染めた一人の男の人がいて、 あたしは知ってる── この人、REBORNの白蘭だ。 どうして、彼が此処に──? これはまた夢でも見てるの? 何でこんなリアルな夢見て…、 そこまで考えてたら、いきなり手首を掴まれて強引に引っ張り上げられた。 「いった…っ」 「悪いんだけど夢じゃないみたいだよ?」 そう言ってニコッと笑う彼が怖くて震える口を無意識に動かし、呟いた。 「白蘭──?」 「?!」 そう呟けば目を丸くして、掴んでいた手首への力が弱まったけど震えが止まらない。掴まれてる手が段々痺れてくる。怖い。 目を丸くしたまま固まってる白蘭にあたしの頭の中が恐怖心一色に染まる。 そんな時、あたしの後ろ、つまり血の水たまり付近から物音がした。まだ誰かいんの?! 「「?!」」 「いってー!」 「何故ここに──」 「骸?!よかった!生きてたんだな!」 骸───? この声、ツナ──? どういうこと? あたしは後ろから聞こえる二つの声に後ろを振り返る。それと同時にふっと気が逸れ恐怖心は薄れる。 「え─?」 そこには右目から血を流す骸さんと、生きていてくれてよかったと喜ぶこれまたREBORNキャラのツナがいた。 一体、どんだけリアルな夢見てんだあたし(違) 「骸血が!」 「何ともありません、それより此処は──」 バチッとぶつかった視線に、あたしは目を逸らすことが出来なかった。 ねぇねぇ、これってやっぱ現実? あたし、今骸さんとバッチし目合ってる気がするんだけど。 「ああ、まだ生きてたの?骸くん」 「え──?」 スッとあたしの手を離したかと思えば、ズカズカ土足(怒)で血を流す骸に近づいていく白蘭。ツナは目を丸くしてから怯えた表情になった。 これはあくまで憶測に過ぎないけれど、未来──九年と半年くらいに10年バズーカで飛ばされたツナと、ミルフィオーレに忍び込んで正体がバレた骸を殺す寸前の白蘭って状況? 何かの拍子に、こっちにトリップしてきました的な? いや、逆トリップっていうのか。 何、今から実演しますってやつ?! ちょ、ちょっと困る! 「や、やめて!」 あたしは怯える心と裏腹に、白蘭の腕を掴み引き止めていた。 「「「?!」」」 それには、目の前にいる二人はもちろんのこと、掴まれた本人、白蘭でさえ驚き目を見開いた。あたしが一番吃驚してるから! 「こ、此処はあたしの家です!人殺されたら困るから!」 半ばヤケクソで叫んじゃった。あー…、あたしの人生終わった。心の中は死んでいて、グッタリしているのに掴んだ手はギュッと握ったまま。 「手」 「え?」 でもそんなあたしの意識は彼の一言で現実に引き戻される。 「手、痛いんだ」 あたしが掴んでる手首を指さし苦笑いを浮かべる白蘭に、ハッとして慌てて手首を見れば流血していた。 「ご、ごめっあたっ!」 パニック状態に陥ったあたしを愕然として見ている骸とツナの二人。 「いや、そんなに慌てなくてもね…(何なんだ一体」 「っ……」 何でかは分からないけど、殺気みたいなモノは消えたみたい。それはよかったんだけど…傷の手当てが必要なわけで、 だけど彼らはこの世界の人間じゃないし、救急車呼んじゃいろいろ拙いだろうし…。 「あのさ!救急箱あるかなっ?」 「あ、うんっ待ってて!」 そんなあたしに掛かったツナの声にハッと我に返り、リビングを飛び出し救急箱を取りに行く。とにかく傷の手当て優先!話はその後! 「───」 「───」 「?」 愛が慌てて飛び出していった方向を見つめながら、ポカーンとする二人に首を傾げるツナ。 .... (あの子、人疑うこと知らないんだね) (哀れですね、貴方のような人間に騙されるのは) (まだ騙してないんだけど) (――(何なんだー!この二人ー) |