「くしゅっ」 「風邪?」 「ううん、きっと誰かが噂してるんだよ」 少し寒気がしたような気もしたけど、風邪とは違うだろう。ツナに心配かけまいと笑顔を向けたら笑顔が返ってきた。 「愛の噂ということはよくない事でしょうね…、何やらかしたんですか?」 「し、失礼ですよ!骸さん!」 骸さんはこの間、一人になりたいと言った後、あたしがお土産を渡してからいつも通りに戻った。いつも通りというか、部屋にこもるのをやめた。 今は、少し肌寒い中、皆でテラスに出て星空を眺めていた。と、言っても白蘭さんはうたた寝してるし、骸さんは洋書読んでるんだけど──。 お土産のチョコ食べながら─、 この甘党め! 「おや、心外ですね…これはそこまで甘くはありませんよ」 食べてみますか?とあたしの前に差し出されたチョコ。それを貰おうと思いながらも一つ引っかかることがある。…口に出してなかったよーな…。 「顔に書いてありますから」 「なっ!」 「俺でも分かったかも…」 「えっ」 ツナが苦笑しながらそんな事を言ってくる。読心術かと思っていたあたしはそんなに顔にでていたのか、と軽くショックを受けていた。そんなあたしにそのチョコは元気をくれた。 「おいひーっ」 「口に物を含んで喋るものではありませんよ」 「いーのー」 多少呆れている骸さんをよそに、口の中に広がる何とも言えないチョコの味に酔いしれる。 骸さんの言ったとおり、そこまで甘いわけでもなくて、小さい子から大人まで堪能できる味だと思った。 そんな時、ふいに思い出したように口を開いたツナの言葉にあたしの思考回路は停止する。 「そういえば愛って家族は?」 ちょっと、気になってたんだけど…と続けるツナにあたしの心臓は、大きく跳ねる。 「僕らを養うほどの大金もどこからわいてくるんですか?」 その骸さんの言葉に目を覚まして話に入ってくる白蘭さん。 「僕らの事だけ知ってるなんてズルいよね?」 「うっ……」 た、確かにそうだけど、今出来る話じゃないような…、うん出来る話じゃない。あたしはどうしものかと、考えを巡らせる。そして星空を見上げて深呼吸をした。 「今はまだ詳しく話せない…けど、ママとアイツ…家族は今、アメリカにいるんだあ…」 実際口に出して言ってみると、何だか寂しさを実感しちゃうな。アイツと離れられたのは嬉しいけど、やっぱり家族の皆と離れるのは寂しい。 「ご、ごめんっ…何か変なこと聞いちゃってっ」 そんなあたしの周りの空気を察してか、ツナが罰の悪そうな顔をして頭を下げてきた。ああ、気使わせちゃったな; 「ち、違うよ!そんなの不思議がるの当たり前だしっ」 あたしが慌ててそう言うと、大人組の二人はふぅ、と小さな溜息をついた。 「さあて、寒いしそろそろ中に戻ろっか、愛チャン温かいココア入れてー」 「そうですね、愛頼みましたよ」 「ちょ!二人とも!」 先にスタスタと中に入っていく二人を見ながら叫ぶも、二人はあたしに背を向けたまま手をヒラヒラと振っている。 これは二人なりの優しさだとでも言うの?あたしは心の隅で、返ってくるはずもないその問いを静かにこぼした。 もしかしたら、彼らも心を開き始めてくれたんじゃないかって──、 この時はそう、思ったんだ。 .... (はーい、おまたせー!) (う゛)←ツナ (……トイレ行ってくる)←白蘭 (……何入れたんですか…)←骸 (え?ココア粉とビタミン剤?) (何でビタミン…っうぇ) (綱吉、吐くなら外行きなさい) (え、えっだって体にいいしっ) ((………)) |