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06:(アメリカで動く影)

アメリカ────


「紫苑さん、愛さんの様子見てきましたぜ」


「ん?どうだった?」


「特に変わった様子はないッス」


真っ暗にした部屋に、月の光だけが差し込んで、部屋のある一点を照らし出す。そこに座っている男は、ワイングラスを片手に報告に来た自分の部下に目を向ける。


「変わってない、か──」


その報告にニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる彼は、日本に残してきた愛を思いだしていた。


「ただ、今まで使っていなかった紫苑さんの金がここ一ヶ月でいくらか引き落とされてますね」


「…一人暮らしだしな、そろそろキツくなってきたんだろ?強情だからな愛は」


くくっと、嘲る様にして笑う男が紫苑。愛が最も嫌い、家族と離れてまで一人暮らしをしようと決めた原因でもある男。


そして、唯一愛の弱みを握る人間でもある。そこからくる余裕は、彼女にとったら仇以外の何ものでもない。


「確かに…、声かけたら睨みつけられましたよ」


苦笑を漏らす部下に、紫苑はある事を思い出し、グラスを机においた。


「そうか、そういえば…あの男はどうした?」


「はい?」


紫苑の言葉に首を傾げる部下。だが、直ぐに思い出したように声を上げた。


「ああ、¨キーラ¨ッスか!」


「ああ…上手くやっているか?」


「まあ、仲良くはしてるらしいッスよ?」


¨キーラ¨
紫苑の部下として、裏社会で働く時の呼び名。


¨キーラ¨は現在、日本で愛の監視及び、警護を任された紫苑直属の部下の一人。彼女にいらぬ男(ムシ)が寄りつかぬ様に紫苑が派遣したのだ。


「ならいい、愛に男は俺だけで十分だ」


そう言って、声を上げて笑う紫苑の正体を知るのは部下である彼らと───






























娘である愛のみ──


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