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04:(マシュマロゲット!)

白蘭さんに助けてもらって無事、何事もなく済んだあたし。まさか助けてくれたのが彼だなんて思いもしなかったけど…。


「愛、大丈夫?」


「へ、平気!平気!」


白蘭さんを見上げていると、横にいたツナが心配そうに顔をのぞき込んできた。無理につくった笑顔は、強ばったモノにしかならない。


「またそうやって嘘つくんだから…、素直に助けてって言ってくれればよかったのに」


ツナとは反隣にいる白蘭さんがあたしの頭に手を乗せながら言ってくる。


そんなこと言われたって──、


恥ずかしいしっと思考を巡らせているうちに、お目当てのスイーツ・フェスタに到着。


「あ、ほらつきましたよ!」


あたしは前を指さし、たくさん並ぶ出店の方へ駆けていく。


「…愛、大丈夫みたい…」

「…そうみたいだね」


だからあたしは、この時に交わされた二人の会話を知らない。




***

「わあ、綺麗なお菓子ー」

「凄い…」

「それよりマシマロ…」


あたしとツナは笑い合いながら、お菓子を見ては試食していた。どれも全部美味しい。


そんなあたし達をよそに、白蘭さんはマシュマロをお探しのご様子。そんな焦らなくたってちゃんとあるって(笑)


「ねぇ、ねぇ!格好良くない?」

「ほんとだー」

「外国人かな?」


そんな白蘭さんに釘付けになってる女の人たちが若干名……否、大勢いる。このままいくと、骸さんの二の舞になっちゃう気がするんだけど…。


「あ、あのっ!」


「ん?」


あーあー、返事しちゃ駄目だよ白蘭さん!後始末誰がするんですか!


「よ、よかったらこれどーぞっ」


「え?」


「あ、私もっ」

「貰ってください!」


「ちょ、ちょっと…(焦」


女の人達は、今買ったばかりだろうお菓子を白蘭さんに渡してキャーキャー言ってる。こういうのを他人の迷惑を省みない人たちって言うんだよね。


これは、当分収集つかないだろうとふんだあたしは、ツナに留守(?)を頼んで、マシュマロを探しに行くことにした。その為に、わざわざ隣町まで来たんだしね。…それに、白蘭さんには電車で助けてもらった恩もあるし。




***

「マシュマロはー…と」


「愛さん?」


「!?」


マシュマロを探してお店を回っていたら、後ろから肩を叩かれて聞きたくもない低い声で名前を呼ばれた。瞬間、あたしがまとっていた空気は冷たく凍ったモノに変わる。


「やっぱり!久しぶりッスね」


「……何か?」


振り向いた先には、明らかに柄の悪い連中の集団。周りにいる人たちはその群れから逃げるように去っていく。だけど、あたしは彼らを知ってる。

だからこそ、冷たい視線を向けた。決して関わるはずのなかった人たちだから。


「そんな、警戒しないで下さいよ。紫苑さんから様子を見てくるように言われてたんで」


¨紫苑¨─────
その名前が出た瞬間、あたしの体は金縛りにあったみたいに動かなくなった。それもそのはず、あたしが外国に行かなかった原因となった人なんだから。


「紫苑さん、心配してましたよ」

「お嬢さん、連絡入れてないみたいですね」

「あれだけ───」


「煩い!」


あたしは、叫べるだけの声を出して、そいつ等から逃げるように走り去った。なによっ!何で、あたしがこんな思いしなくちゃなんないのよ!


─「再婚が決まったのよ、愛」


ふと、ママの嬉しそうな笑顔と言葉が頭を過ぎった。あの時、あたしは自分の心に反して、母に祝福の言葉と、笑顔を送った。何もかも偽って。そうせざるを得なかったから。


「マシュマロー!今なら半額だよ!!」


「!」


どんどん落ちていく思考は、お店のオジチャンのその一言で、止まり、


「お嬢ちゃん、買ってくかい?」


あたしが顔を上げた先には、多種多様のマシュマロが並べられていて、オジチャンはあたしを見てにっこり微笑んでくれた。


「うん!全種ちょーだい!」


「どーせ、しまいだ!まけてあげるから全部持ってきな!」


そのオジチャンの言葉に、さっきまでの暗い気持ちが消えて、スゥと心が晴れた。


「ありがとう!」

「いいさ、いいさ!またきてくれな!」

「うん!」


あたしは、オジチャンに半額分のお金を渡すと、マシュマロが纏められた箱を4箱もらい、紙袋に入れてもらった。凄く得した気分。


オジチャンにお礼を言うと、手を振ってその場から立ち去った。




***

「あっ…」


戻ろうとしたあたしの目に止まったのは、綺麗に形作られたチョコレート。それを目にして頭に浮かぶのは、家で留守番してる骸さんで、


「お買いになられますか?」


女の店員さんに声をかけられたあたしは迷わず頷いた。















「あ!愛!」


「ごめん、ごめん!」


すっかり遅くなっちゃったね!と謝り、ツナの後ろをのぞくと、疲れ切った白蘭さんがしゃがみこんでいた。


可哀想に…。山積みに置かれたお菓子を前に今まであったであろう状況を想像する。うん、大変だったろうな…。


「白蘭さん」


「んー?」


あたしは、そんな白蘭さんの前に屈んで、呼びかけると顔を上げた白蘭さんの口に、さっき買ったマシュマロを一つ取り出して、放り込んだ。




....
(これ…)
(マシュマロいっぱいですよっ)
(いつの間に…)
(今さっきです(ニコッ)

(有り難う愛チャン!)
(わわっ!)

(…(俺いらないじゃん)


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あきゅろす。
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