あたし達三人は、電車に乗り、隣町に向かっていた。 「ちょっと混んでる…っ」 「確かに──っ」 いつも以上に混雑しているのは、隣町で開催されるスイーツ・フェスタが原因なんだろうけど…、正直混みすぎだと思う。 「ツナ座って」 「でもっ」 「あたしは慣れてるから!」 あたしは、怠そうにしてるツナにそう言って笑顔を向けると、彼は渋々と座って笑顔を返してくれた。 心配してくれたみたいだけど、あたしにはツナの方が心配だからさ。 「愛チャンは大丈夫なの?」 「はい!」 白蘭さんも、多分、心配して声をかけてくれたけど、あたし的に白蘭さんの方が心配。 だって、電車乗るの今日が初めてなんだよ?ビックリだよね!! 「電車って面倒なんだね……」 「あー、人多いですからねー…」 少し苛々してるのか、落ち着かないのか、大きな溜息をつく白蘭さん。それでもマシュマロの為ならって意地があるから大丈夫なのかな? 流石に、スイーツ・フェスタと言うべきか、隣町に行く人が多いみたい。こんな所で友達なんかと会ったら最悪だ。 そんな事を考えていた矢先、人が多いせいか、あたしのお尻に誰かの手が触れた。 やだなーと思いながら、少しツナの方、前に移動する。だけど、その手は追いかけるようにまた触れる。しかも、触れただけじゃない。 「!…」 嘘っ、もしかしなくても痴漢って奴?!何でこんな時にそんなことに巻き込まれなきゃなんないのよーっ。 バッと振り向いても、触っているのが誰か分からなくて気持ち悪い。怪しい人が多すぎてしぼりこめない。 「どうかした?」 「愛…?」 首を傾げる二人に、あたしは何も言わずに首を横に振った。 隣町まで後少しなのっ─── バレたくないっ! あたしは、ギュッと唇を噛みしめ、鞄を痴漢の手の前に回す。これで隣町までなら保つよね…? だけど、そんなあたしの考えは甘かったみたいで、その手の動きは一瞬止まったものの、さっきより酷くなり、スカートまでめくりあげられた。 「っ」 「?…(…成る程ね」 愛チャンの様子がおかしいと思ったらそう言うことか──。 「っ!」 「…(ニコッ」 愛チャンに触れていた腕を掴みあげ、捻り上げれば男は苦痛に顔を歪めた。汚い手で何堂々と触ってるの。 僕は男に笑顔を向けた後、鋭く見返した。それを見た男はそのまま愛チャンから離れて、人混みに消えた。 「…?」 「スカートなんか穿いてくるからだよ」 ポンッと頭の上に手を置いて、愛チャンにしか聞こえない声で囁く。 手を乗せたときは首を傾げていた彼女だけど、僕のその言葉に目を見開いた。 「怖かったね…」 グッと頭を抱えて引き寄せれば、愛チャンは、小さいその手で、服の裾を掴んで震えていた。 「?」 その時、状況を把握していない綱吉君と目が合ったけど、あいている片手の指をたてて静かにするように合図した。 「…(何かあったんだ」 彼は分かったよと言うように、頷いて僕たちから視線を外してくれた。今はそれが最良の判断だよ。 何で、助けちゃったかな──? 泣きそうな君を放っておけなかったんだよ。 .... (何故だか分からないけど) (助けた君が安心したことに) (僕も安心したんだ……) |