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03:(ただ見過ごせなかっただけ)

あたし達三人は、電車に乗り、隣町に向かっていた。


「ちょっと混んでる…っ」


「確かに──っ」


いつも以上に混雑しているのは、隣町で開催されるスイーツ・フェスタが原因なんだろうけど…、正直混みすぎだと思う。


「ツナ座って」


「でもっ」


「あたしは慣れてるから!」


あたしは、怠そうにしてるツナにそう言って笑顔を向けると、彼は渋々と座って笑顔を返してくれた。


心配してくれたみたいだけど、あたしにはツナの方が心配だからさ。


「愛チャンは大丈夫なの?」


「はい!」


白蘭さんも、多分、心配して声をかけてくれたけど、あたし的に白蘭さんの方が心配。


だって、電車乗るの今日が初めてなんだよ?ビックリだよね!!


「電車って面倒なんだね……」


「あー、人多いですからねー…」


少し苛々してるのか、落ち着かないのか、大きな溜息をつく白蘭さん。それでもマシュマロの為ならって意地があるから大丈夫なのかな?


流石に、スイーツ・フェスタと言うべきか、隣町に行く人が多いみたい。こんな所で友達なんかと会ったら最悪だ。


そんな事を考えていた矢先、人が多いせいか、あたしのお尻に誰かの手が触れた。


やだなーと思いながら、少しツナの方、前に移動する。だけど、その手は追いかけるようにまた触れる。しかも、触れただけじゃない。


「!…」


嘘っ、もしかしなくても痴漢って奴?!何でこんな時にそんなことに巻き込まれなきゃなんないのよーっ。


バッと振り向いても、触っているのが誰か分からなくて気持ち悪い。怪しい人が多すぎてしぼりこめない。


「どうかした?」

「愛…?」


首を傾げる二人に、あたしは何も言わずに首を横に振った。


隣町まで後少しなのっ───
バレたくないっ!


あたしは、ギュッと唇を噛みしめ、鞄を痴漢の手の前に回す。これで隣町までなら保つよね…?


だけど、そんなあたしの考えは甘かったみたいで、その手の動きは一瞬止まったものの、さっきより酷くなり、スカートまでめくりあげられた。


「っ」


「?…(…成る程ね」


愛チャンの様子がおかしいと思ったらそう言うことか──。


「っ!」

「…(ニコッ」


愛チャンに触れていた腕を掴みあげ、捻り上げれば男は苦痛に顔を歪めた。汚い手で何堂々と触ってるの。


僕は男に笑顔を向けた後、鋭く見返した。それを見た男はそのまま愛チャンから離れて、人混みに消えた。


「…?」


「スカートなんか穿いてくるからだよ」


ポンッと頭の上に手を置いて、愛チャンにしか聞こえない声で囁く。


手を乗せたときは首を傾げていた彼女だけど、僕のその言葉に目を見開いた。


「怖かったね…」


グッと頭を抱えて引き寄せれば、愛チャンは、小さいその手で、服の裾を掴んで震えていた。


「?」


その時、状況を把握していない綱吉君と目が合ったけど、あいている片手の指をたてて静かにするように合図した。


「…(何かあったんだ」


彼は分かったよと言うように、頷いて僕たちから視線を外してくれた。今はそれが最良の判断だよ。
















何で、助けちゃったかな──?
泣きそうな君を放っておけなかったんだよ。




....
(何故だか分からないけど)
(助けた君が安心したことに)
(僕も安心したんだ……)


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あきゅろす。
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