I wish (私は願う) that I'm here with you. (貴方と一緒にいることを) 骸ハッピーエンド あれから、骸さんや白蘭さん、ツナと別れてからどれくらいたったのかな。あたしには凄く長い時間のように感じるけど、あんまり時間は経ってないのかもしれないね。 「愛ー!遅れんぞ!」 「待ってよ!」 あたしは晴れて高校三年最後の日を迎えました。今日はね、卒業式なんだ。 今、あたしの傍には、迎えに来てくれた颯斗を含めた馴染みの深い美和と和磨に加えて、今ではもう親友同然の夕吏君もいます。 そして、あたしはちゃんと平穏な日々を取り戻しました。紫苑さんは、ママとパパ、それからあたしの証言により、本当は重いはずの罪も軽い罪になり、今は刑務所で刑期が終わるまで過ごしているみたい。 たまに面会に行くと、紫苑さんだったり、もう一人の紫苑さんだったりして、あの頃に抱いていた憎しみや、恨みなどの負の感情は一切なくなったよ。 今じゃ、面会に行くのが楽しみだったりしてる辺りあたしも成長(?)したな、なんて思っちゃったりさ。 「愛!鞄忘れてるわよ!」 「姉貴平和ボケし過ぎだろ」 「あでっ!何すんだよ!弟の分際で!」 あたしの家族も今は一緒に生活してる。何だか前より騒がしくなったみたいで、退屈しないんだ。弟は相変わらずムカつくけどね! 「ははっ、弟に言われてちゃ世話ねーなあ」 「夕吏君、うっさい!」 夕吏君、あの頃は九条君て呼んでたかな?彼は今、あたしの隣の部屋に部屋借りて、時々一緒に食卓囲んだりしてる。家族同然なんだ。 「朝から元気ねー、愛は」 「それでこその愛だろ」 美和と和磨の二人は、相変わらず仲睦まじく恋人やってる。高校出たら結婚するんだって言うんだから吃驚しちゃったよ。だけど、あたしは笑顔で二人を祝福するんだ。 「ほら、そんな叫び散らしてっと転けるぞ」 「何にもないとこで転けないよ!」 颯斗はあたしの気持ちを知ってる今でも、当たり前のように傍にいてくれてる。そのおかげで救われたことは数え切れないくらいだよ。 でもね、時々思うんだ──。 また、何かの拍子に皆があたしの元に現れたら、今度はちゃんとお礼言えたらいいなって──。 それで、出来たらもう一度、皆でバカやって大騒ぎしたいなって──。 そんなバカなこと考えてるんだよ。全く笑っちゃうよね。 高校生最後になる学校の校門をくぐって、卒業という証明書、卒業証書を受け取ったあたしたち五人は、校内を一周して机に落書きして、思い出深い屋上を最後に訪れた。 ガチャッ─────、 屋上に続く扉を開いて、そこに踏み込んだ瞬間、あたしの頬を撫でる心地の良い風はあの頃と全然変わらない。 ねえ、覚えてる?ここで皆でお昼食べたよね。ここで笑いあって、バカ騒ぎしたよね──? 「ずっと傍にいるって、……そう、言ったじゃない!!!」 「愛…」 あたし、我慢して頑張ったよ?ねえ、頑張ったらご褒美あるんじゃないの? 卒業して、思い出深い場所にきて頭に蘇るのは懐かしい記憶だけじゃない。あたしが愛して、さよならさえ言えなかった、ありがとうさえ言えなかった貴方の事が頭を支配するんだよ。 忘れようと努力した。もう会えないんだって必死に自分に言い聞かせて、今まで頑張ってきた。 だけど、だけどあたしにはやっぱり貴方がいなきゃだめ、なんだよっ。 ポタポタとあたしの頬を伝って屋上のコンクリートに染みていく涙は、染みの面積を増やしていくばかり。 「傍にいてよ!骸っ!!」 「おやおや、また随分と生意気な口を利くようになりましたね」 「!っ───」 あたしが叫んだ瞬間だった。まるでタイミングを見計らっていたかのようにあたしの身体が何かに包まれた。懐かしい声と、懐かしい感覚に───。 「骸ー……っ」 「遅くなってすみませんでした」 振り向かずともわかる。あたしの前に回された腕をギュッと抱きしめると、それに応えるようにあたしを抱きしめる腕に力がこもる。 今度は幻覚なんかじゃない。今度はお別れなんてしなくていい。 「お帰りっ……」 「!ただいま」 振り返った先に広がったのは、あたしの大好きな貴方の笑顔。そして返ってきた言葉に、これから先、別れはない事を安心させる確かな確証があった。 I wish.. (あたしが願うのは) that I'm here with you (貴方と一緒にいること) ずっとずっとこれから先も、 あたしの傍にいてくれるよね? あの時のあたしの言葉は、ちゃんと彼に届いていました。その答えが今あたしの目の前にあるでしょう? ....ハッピーエンド!! (僕らもいるんだけどなー) (あはは…) →続 |