「……」 「……」 ハヤト君が変な気を回して退散した後、あたしと骸さんの間にはこれでもかってくらいの気まずい沈黙が流れていた。骸さんと二人になってこんな気まずい空気なんて初めてかもしれない。 「愛、」 「は、はいっ!」 どうしよう、どうしようと思い悩んでいたあたしは、いきなり沈黙を破った骸さんの言葉にハッと我に返り、素っ頓狂な声を上げてしまった。は、恥ずかしい、! 「クフフ…、何をそんなに緊張しているんですか、貴方は」 「うっだっだって……」 一世一代の告白をした後だよ?変に緊張しちゃうのは仕方なくないですか? 「愛、顔上げて下さい」 「む、無理ですっ」 そっとあたしの肩に回った骸さんの腕に余計羞恥心が増して、顔なんてとんでもないけど上げられないよ。 そんなことを考えながら首を横に振ったあたしの頬に伸びてきたのは骸さんの手で、ゆっくり顔を強制的に上に向かされた。 「骸さ──!」 一瞬、何が起こったのか分からなかった。ただ凄く近くに骸さんの顔があるなとか、唇に何か触れてるなとかって、客観視してるみたいな感覚しかなくて…。 「素直じゃないのはお互い様ですね」 「え、?」 「僕も貴方を愛してます、愛」 唇にあった温もりが離れてから、今までに見たことないくらいの骸さんの穏やかで温かい笑顔があたしに向けられて、紡がれた言葉に完全に思考回路がショートした。 愛してる──? 誰が誰を──? 「別れが近くとも、僕が貴方の傍にいたいという事実は変わりません」 「───」 「ただ、愛と気持ちが通じている上で傍にいたいですから」 「───」 「いい逃げなんて許しません」 何だか視界が歪む。ああ、泣いてるんだって気がついたときには、もう貴方の腕の中にいた。 「うわぁああっ」 「辛い思いさせてすみませんでした」 骸さんがあたしを好きって、傍にいるって言ってくれた。あたしが願っても望んでも口に出せなかったことを彼は気がついてくれた。 あたしの心の叫びに気づいてくれた。 ギュッと握ったシャツがしわくちゃになっても、涙に濡れてしまっても、彼は何も言わずにただあたしを落ち着かせるために、あたしの大好きな温かい手で頭を優しく撫でていてくれた。 それがどれだけあたしの心を救ったか分かりますか?どれだけあたしの支えになったか、骸さんには分かる? 「大好きっ」 「クフフ、…僕も愛してますよ」 聞いちゃいけなかったのかもしれない。あたしが気持ちを告げたのがまず間違いだったのかもしれない。 だけど、夢であたしに何を迷うの?と問いかけてきたあたしに対しての答えが達した今なんだ。 あたしはもう迷わないよ。離れなくちゃならないとしても、骸さんがあたしを好きだと言ってくれるのなら、傍にいてくれると言うのなら───、 あたしは素直になってその気持ちを受け取る。あたしもそうだと、貴方と一緒に笑っていたいって言えるから。 それが今のあたしの素直な気持ち─。 .... (骸さん、さっきあたしに何した?) (キスですか?) (えっ) (今頃気づくってどうなんですかそれ) (だっだって!) (いいですよ、もう一度してあげますから顔上げなさい) (む、無理ですからーっ!) ─── (二人共、集まってきてる人に気づいてないよな…) (はあ、見てるこっちが恥ずかしいよ。綱吉君、連れ戻しに行ってきて) (な、何で俺!?) |