愛が学校に行ってからと言うもの、ピリピリ張りつめた空気がずっと続いていた。無理なんだけど!俺、こういう空気耐えられない! 「…(怖いっ」 白蘭は白蘭でテラスにでてボーッとしてるだけで、骸は昨日の買い物でついでに買った本読んでるし。 俺は肩身の狭い思いをずっと続けて、縮こまっていた。何か何話しても答えてくれる気しない。 「あ、あのさ…骸」 「…何ですか?」 それでもこの空気に耐えかねて、骸に躊躇いがちに声をかけたら、本から目を離して俺を見て一言。よかった…、返事返ってきて。 「怪我…もういいの?」 「…一応は」 でも怪我のことを聞いたら、少し伏せ目がちになって曖昧な返事をした。やっぱまだ痛みが残ってるんだろうな…。 「ねぇ、骸君」 「…」 その時、テラスに出ていた白蘭が上から身を乗り出して骸を呼んだ。骸は特に返事を返すわけでもなく、顔をそちらに向けるだけ。 「あの子、愛チャン殺ったら帰れるんじゃない?」 「「?!」」 白蘭のいきなりの言葉に俺たちは目を丸くして言葉を失った。だって、状況も分からないまま傷だらけの骸を手当してくれて、面倒みてくれるって、一緒に住まわせてくれてる愛を殺すなんて…おかしいよ。 「君はどこまでも愚かな人間だ」 「どういう意味」 笑ってはいても二人の間に流れるのは険悪なムード。こんな時に怯えて何もできない俺は臆病者だ。 だけど俺は、骸の言うこと正しいと思うよ。愚かの一言に込められた感情が俺と同じならいいなって、今はそういうことしか思えない。 「愛を殺したところで何も変わらない…僕らが此方に飛ばされた意を汲み取らなければ帰ることなど出来ませんよ」 「それさ、愛チャンに手を出すなって意味?」 「貴方が言うと違う意味に聞こえますが、余計なことはするなということですよ」 「余計な事ね…」 まだ腑に落ちないのか、白蘭と骸の間には不穏な空気が漂ったまま。何だか止めないと戦闘になりそうな勢いの二人に、俺は立ち上がる。 今、止められるのは俺だけなんだ。俺がしっかりしないと! 「もうやめ───」 「ただいまー!」 俺が止めに入ろうと声をかけたら、それを遮って聞こえてきた愛の声。 「「「?!」」」 まだお昼過ぎなのに、帰ってきた愛に一気に険悪な空気は消えた。助かったっていうか、逆に今来たら……。 「…皆してどうしたの?」 「…え、まだお昼だよ?」 二人の様子を伺いながらも、何もなかったように取り繕って笑うけど、愛も何かが変だって分かってるみたい。 「何かね、今日さ…午前で終わりの日なんだって」 それでも、俺の問いにマジ何のために学校行ったんだろうね、と苦笑する愛にホッと一息ついた。どうにか誤魔化せたみたいだけど…。 「試してみようか」 俺が安堵したのも束の間。白蘭がいきなり呟いてリングの力を発動させた…。 「何を?」 愛はさっきの会話を聞いていないから、まるっきり状況が分かっていないのか暢気に首を傾げてるし!焦 「!愛、伏せなさい!」 「えっわ?!」 ガバッ──── 白蘭の意に素早く反応した骸は、愛の手を引き自分の腕に抱き込んだ。 俺は死ぬ気弾の玉を飲んで、超死ぬ気モードに代わり、愛と骸を庇う形で二人の前に立った。 「へぇ、それが君の戦闘体制てわけだ」 「…愛は関係ないはずだ、巻き込むな」 元より愛に危害を加えて今置かれているこの状況がいい方に変わるなんて思えない。 俺は、今目の前にあって、守らなければならない者を守るだけだ。 .... (骸が愛を助けた) (だったら俺と同じ気持ちだって) (思ってもいいだろ?) |