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02:(夢なら醒めないで)

「うっわ、広ーい」


「ホントね。ところで愛、プレゼントちゃんと渡せたんでしょうね?」


「もちろん」


颯斗からの情報で、やってきたゲレンデの側にある高級ホテルの一室に荷物を置きに来たあたしと美和は、窓から外の雪景色を一望していた。


そんなあたしに聞きたかったであろう事を直球的に問いかけてきた美和に、あたしは窓枠に寄りかかったまま笑って頷いた。









─────────────

「あ、プレゼント!」


「え?」


あの後、プレゼントをまだ渡していなかったことを思い出して、ツナから勢いよく離れたあたしは急いで自分の部屋に駆け込んだ。


ものの数分で帰ってきたあたしに訳の分からないといった顔をしてる四人に、ニコッと笑いかけると、用意していた四人へのプレゼントを一人一人順番に手渡していく。


「改めてメリークリスマス、ツナ」


「え──?」


「ツナには、一杯助けてもらった。いつもあたしの味方でいてくれてありがとう」


ペンダント用の箱にしまってある、美和と一緒に買いに行ったリングをチェーンに通したモノを手渡す。実は店員さんに無茶言って、彫ってある文字の色は一人一人変えてもらった。ちなみにツナはオレンジ。


「骸さんには、一杯怒られたし、迷惑ばっかかけてるけど、いつもさり気なく助けてくれたりしてくれてるのも分かってました。…ありがとうっ」


「愛…」


骸さんに渡したモノもツナと同じだけど、文字の色はちゃーんと守護者の色になぞらえたインディゴなんだよ。──貴方はもうちゃんとしたボンゴレの一員なんだから。


「白蘭さんには、いろんなとこで勇気もらってました。いつも一番早くにあたしの様子の変化に気づいてくれた。…それが凄く嬉しかったっ。…ありがとうっ」


「!──、愛チャン…」


白蘭さんに渡したリングの文字の色は、白色。白蘭さんもミルフィオーレだったらボスだし、大空だからオレンジなんだろうけど、あたしは白が一番似合うと思ったから。


「ラストは、九条君!──はいっ」


「?──帽子?」


あたしが彼に贈ったのは、茶色のニット帽。本当は九条君も三人と一緒にしようと思ったんだけど、何だかこっちの方が貴方に合うと思ったんだ。


「いっつも寒そうにしてるし、温かいでしょ?」


「…サ、サンキュ」


「それとね、薬の精製もそうだけど、こんなあたしを助けてくれてありがとうっ」


少し赤く染まった九条君の頬に喜んでくれたんだと悟ると、今までのお礼を一気に言葉にした。


四人にそれぞれ渡し終わると、一歩下がってもう一度精一杯の感謝を込めてお礼の言葉を贈る。


そんなあたしに返ってきたのは四人からの温かいお礼の言葉──。









─────────────

「それでその時に三人から貰ったのがこのオルゴール」


一通り話し終わったあたしは、片手にのるくらいの長方形の小箱を取り出して開く。


「これ、愛の好きな……」


「うんっ」


そう、三人はあたしの好きだと言った曲¨絆¨を覚えててくれたんだ。でもそれだけじゃない。このオルゴールの箱の上に刻んである文字は、あたしが三人のリングに刻んだモノと同じ。


──Un'obbligazione(絆)


それを見た瞬間、ちゃんとあたしと三人の間にはその名の通り、¨絆¨っていう架け橋が架かっているんだと、そう確信できた。


「この写真どうしたの?」


「皆で撮ったの。…いつだったかは覚えてないけど、それも入れてくれたみたいっ」


嬉しくて自然と頬が緩んでしまってるあたしに追い打ちをかけるかのような美和の問いに、写真を撮ったときのことを思い出して、余計に嬉しさがこみ上げてくる。


「愛、幸せぼけすんじゃないわよ?」


「し、しないよっ」


美和の言葉を慌てて否定すると、オルゴールをそっと閉じて、鞄にしまう。


あたしには幸せぼけしてる暇なんてないもん。窓の外に見えるゲレンデの頂上。その少し奥に行った所にアイツの別荘がある。


タイムリミットは二日しかない。スキー合宿を楽しんでる暇なんてないんだよね。


「あ、そう言えば九条からのお返しは?」


「あー、何かね。今日、この部屋行けば分かるからとか何とか言ってて…」


「何よそれ」


曖昧すぎでしょ、と続ける美和に苦笑しながら部屋を見渡すけど、特に変わった様子は見受けられない。…ってことは九条君が何か持ってきてくれるとか?


コンコンッ───
そんなあたしの考えを肯定するかのようなタイミングで、あたしたちの部屋にノックの音が響いた。


「九条じゃないの?」


「まだ分かんないじゃんっ」


ニヤッと笑う美和に苦笑しながら、部屋の扉をゆっくりと引いて、ノックした誰かを部屋に通そうとした。


でも、見上げた先にいた人物に、声はおろか何の反応を示すことも出来なかった。いや、驚きすぎて言葉を発せなかったというほうが正しいかもしれない。


それは美和も同じ様で、振り向かなくても後ろで息を呑んだのが分かった。


「久しぶりだな、愛。元気そうで何よりだよ」


ニコリと微笑んであたしの頭を撫でる目の前の人に、頭が理解する前に体が勝手に動いて、あたしの瞳からは大粒の涙が溢れ出た。


懐かしい声と、懐かしい香り。ずっと手の届かない場所にあったと思いこんでいたそれが今、あたしをしっかりと抱き留めて、抱き返してくれた。





「パパっ!!」




....
(夢なら醒めないでと)
(切実にそう願った)


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