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07:(一通のメール)

最近、ツナがあたしの部屋で寝る順番が回ってくると、寝ている間にいなくなることが多々ある。


パタン────
ほら今日も─。閉まった扉に体を起こしてツナが寝ていた布団を見下ろせば、しわくちゃになってるシーツ。…それを見れば大方の推測はたつ。


─薬の副作用が大きくなってきてるんだ…。


ギュッと布団を握って何も出来ない自分を責める。何で、あたしのところに飛ばされちゃったんだろ…。あたしじゃなきゃ、こんな事に巻き込んだりしなくてすんだのに。


そんなあたしの頭を過ぎったのは、生理で寝込んだ日の夜、試作品が出来たと九条君から受け取った反作用の薬。


もしもの時に、どうしようもなくなったら使えって言われてた…。もう、今使わなきゃダメだよ。ツナが苦しむのなんてあたし見たくないっ。


思い立ったらすぐ行動、あたしの性格の基盤であるそれに、机の引き出しに保管してあった錠剤を一錠取り出すと、ツナが出て行ったリビングにでる。


「っく、──は、あっ」


案の定、発作を必死に押さえ込んでるツナの姿に何とも言えない感情が沸き起こって、その苦しむ背中に駆け寄ろうと足を踏み出す。


「!ツ──」


「来るなっ!─…来ちゃダメだ…」


そのあたしの気配をいち早く察知したツナに強く止められて、その迫力に一瞬怯むも、ギュッと拳を握ってから、水を淹れたコップと薬を手にツナに近づいた。


「ツナ、」


「っ!?」


あたしが近づくと、大きく脈打ったらしい心臓を押さえて、あたしの肩を掴むツナの背中にそっと腕を回して支える。


「愛っ!」


「いっ──、大丈夫、大丈夫だから…これ飲める─?」


肩に強く食い込む爪に激痛が走ったけど、ツナの発作に比べたらこんなの大したことないんだ。──あたし、我慢できる。


「ん、──…っく」


「ツナ!」


ガクンッと膝をおったツナの全体重があたしにかかって、支えきれなかったあたしはその場に座り込んでしまった。


「薬……貸して」


「あ、はい…っ」


ツナに言われて薬と水を手渡すと、彼はそれを水で流し込む。まだ試作品だから効き目とかも全然分かんないし、まだ苦しまな、きゃ…?


ポス─────


「…すー…zzZ」


「へ…?」


飲んでほんの数分も経たないうちに寄りかかってきたツナからは、規則正しい寝息が聞こえてきて──、ね、てる?


「ツナ…?」


「ん…zzZ」


呼びかけても何の反応も示さないところを見ると、熟睡みたい。──効き目絶大?もしかしたらこれで発作も全部治まるかもしれない。


「──、おやすみ」


久しぶりに見たツナの幸せそうな寝顔に安堵して、あたしより少しばかり大きいツナを部屋まで運んで、ベッドを明け渡す。きっと、そっちの方がよく眠れるでしょ?


あたしはツナに布団を掛けてから、机の上に置いてあった携帯を開き、電話帳から¨霧島颯斗¨のアドレスを引っ張り出す。


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送信メール
09/12/**/ 02:37
霧島 颯斗
大事な話
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颯斗と二人だけで話したいの…
少しでいいから時間頂戴…

紫苑には言わないで
あたしも誰にも言わないから

返事、待ってます

       -end-
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そう、メールを送ったあたしはパタンと携帯を閉じると、枕元において、体育座りをしてベッドに背を預けた。


返ってくる自信はあった。条件をのんでくれるような気もした。だって、颯斗自身はまだ消滅してないもん。


それから暫く、大して時間はかからずに、静かな部屋に携帯のバイブ音が響きわたった。


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受信メール
09/12/**/ 02:43
霧島 颯斗
RE:大事な話
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分かった
明日の朝、学校の屋上で待ってる

       -end-
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「やっぱり屋上なんだね…、」


返ってきたメールに指定された場所を確認したあたしは、中身は颯斗なんだって確証を得られた気がした。昔っから颯斗は何か話があると、学校の屋上って指定してたから…。


懐かしい、今じゃあの幸せだった平凡な日々が全部懐かしく思える。あの頃を取り戻す為に、あたし頑張るから…。


そっと閉じた瞳から頬を伝った涙は、シーツに小さな染みを作る。


いつかその涙が嬉し泣きに変わるように、三人とも笑顔でさよならが交わせるように、…明日の話は絶対に聞き入れてもらう。




....
(愛チャン、大丈夫だったみたいね)
(やはり綱吉は薬を投与されていたんですか)
(うん──、解薬は完成したみたいだけど?)
(まだ試作品だ。結構効いたみたいだけどな)

───────
(それにしても綱吉君っていつもいいポジションだね)
(──、確かにそうですね)
(おいおい)


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