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05:(薬の完成迫る)

俺が帰ってきたときに、聞こえてきたのは白蘭の悲痛な叫び。…はっきり言って、アイツ等3人とも、愛と過ごす時間が長過ぎたせいで、あんな別れ辛くなってるだけかと、そう思ってた。


だけど、それは俺の大きな勘違いだってことは、ここに居候させてもらってから嫌ってほど思い知らされたな…。


愛が本気で好きな俺も颯斗も敵わないくらい愛に想いを寄せてるアイツ等が、疎ましいとか、妬ましいとかそんな感情を感じる以前に、羨ましく思った。


「…俺、どこまで本気なんだろうな」


好きには変わりねぇんじゃねーの、って聞かれたら直ぐに頷ける。けどよ、そんな単純な事じゃねぇんだわ。


「…」


俺達は無条件で愛の傍にいられる。けど、アイツ等は期間限定だ。…愛にとったら、いつでもいられる俺らより、アイツ等3人と過ごす時間の方が貴重なんだ。


それはどう足掻いたって越えることのできない壁。増してや俺は、薬の精製を理由に愛との関係を繋ぎとめてるようなもんだ。


マジ、だせぇよな…。


「話って何?」


そんな俺の前にやっと現れた白蘭は、俺の座る前に腰を下ろした。


「ああ、…」


今は、そんな気落ちしてる場合じゃねぇ。一刻を争う事態なんだからな…。


「…、沢田の奴、薬の禁断症状が出てる」


「!…何だって?」


「薬っていやあ分かんだろ、personality destruction(人格破壊)…通称、PD…、俺らが作ってる解薬の元凶だ」


「!…だから愛チャン、あんなに必死になってたんだね…」


摂取されたとするなら、沢田が風邪で寝込んで愛も一緒に学校休んだ日だな。一気に熱が下がったのもそのせいか。


白蘭の言葉に、頷いて返すと、自宅から持ってきた研究資料と、愛が組み立てていた薬の資料を机に広げる。


「アイツが妙に風邪薬に拘るからおかしいとは思ってたんだ…、これで繋がる。薬は完成だ」


「…でも、どうやって禁断症状だって分かったの。私生活、あんまり変わってる気がしないけど」


「…最近、愛から距離おいてる」


「──」


「この薬、PDは理性を破壊するも同じなんだ。愛が今のアイツに取ったらその対象になる…だから距離を置く必要がある」


筋の通った説明。厄介なことになったね。残り九日だっていうのに…。気付かなかった僕もだけど。


まあ、解薬が間に合うみたいだからそんな心配する必要はないみたいだけどね、今のところは…。


「それ、2人は隠してるつもりなんだよね、きっと」


「そうだろうな…」


「それならそのまま隠し通せてるように思わせとこうか」


「!…だな」


僕の意図を理解して笑った九条君にホッと胸を撫で下ろすのと同時に玄関が慌ただしくなった。…帰ってくるの早過ぎじゃない?(笑)


「お早いお帰りだな」


「どうせ、1時間くらいしか学校にいなかったんだろうね」


「はは、どんだけ過保護なんだよ…」




....
(ただいま!愛は!)
(今眠ったところだよ)
(早く帰り過ぎだっつの)
(…落ち着かなかったんですよ)


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※薬関係の話についてですが、本作に出しているPDなんてものは現実には存在しません。オリジナルで症状も滅茶苦茶な設定なのでお気をつけ下さいませ。


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