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05.素直じゃないのはお互い様。

リョーマ君に引っ張られるがままにお寿司屋さんに足を踏み入れたあたしだけど、内心凄く焦ってる。


「可愛いじゃん♪」


「わっ//」


入った瞬間、テニス部レギュラーで女の子達から絶大な人気を誇る菊丸英二先輩が飛びついてきた。


「こら英二!美咲チャンが困ってるだろう!」


「えっえ?」


何で、大石先輩あたしの名前知ってるの?あたしが彼らの名前を知るのは有名だからだし…、あたし別に並の生徒だと思うんだけど…。


「美咲チャンは僕らの間では有名だよ」


「そうなんだ…狽ヲ」


ニッコリ笑ってあたしの疑問を取り払ってくれたのは天才不二先輩。でも有名って、…ていうか、その前に離れてほしいよ!


「リョ、リョーマ君っ」


「英二先輩、離れて下さい」


あたしがリョーマ君を振り返って助けを求めようとしたら、その前にあたしと英二先輩引き離してくれた。


「そんな怒るにゃよー」


あたしは、離れてくれた英二先輩にペコッと頭を下げて、カウンター席に着く。


「リョーマ様ー!こっちこっち!」


「ちょ、…」


何でかなんて聞かなくても分かると思う…。朋チャンがリョーマ君を引っ張って行っちゃったから──。


「君は、越前のこと好きなんだね…」


「えっ…」


そんなあたしの所に来てくれたのは不二先輩で、ポンッと頭に手を置かれたかと思ったら、何の前触れもなく、図星をつかれた。


「越前も素直じゃないからね」


「いえ…、あたしなんかよりずっと素直で真っ直ぐだと思います」


「好きなんだね」


「先輩//っ!」


上手く流せたと思ってたけど、二回も同じ事言う不二先輩に墓穴を掘った。


「言ったりしないよ。そういう大事なことは自分から言うべきだろうしね」


「そ、そんな簡単な事じゃないんですって//」


「不二ー!美咲チャン!二人でそんなとこ居ないでこっち、こっち!」


そんな微妙な空気を打ち砕いてくれたのは、英二先輩のハイテンション。何だかホッとした…。


「呼ばれてるし行こうか」


「あ、はい」


不二先輩はあたしに笑いかけてから、あたしの分の湯飲みまで持って皆が集まる座敷に移動した。


いつの間にか堀尾君達とバカ騒ぎを始めた朋チャンに代わって、あたしはリョーマ君の隣にストンッと腰を下ろした。何か緊張するっ。


「さっき、何話してたの…」


「え?」


あたしが座って直ぐにお寿司を食べながら、ボソッと呟いたリョーマ君。さっきって、不二先輩とのこと?


「不二先輩といたじゃん…」


「あ…、な、何でもない//」


始め、話の意図が掴めなかったあたしに、再度分かりやすく尋ねたリョーマ君に、不二先輩と話していた内容を思い出して顔が火照っていく。


「何、赤くなってんの」


「リョーマ君が変なこと聞くからだよっ」


本人前にして、貴方のことが好きだって話してましたなんて言えないよ。


「…変なこと聞いたつもりないんだけど…」


「ほーらそこ!二人の世界はいらない!」


「よくねぇな、よくねぇよ」


英二先輩と桃先輩に突っ込まれて、ポカーンとするあたしとリョーマ君。てゆーか二人の世界って何?


「理解していない確率80パーセントだな」


「どんなパーセントだしてンスか…、乾先輩」


眼鏡をクイッと上げて、意味深に笑う乾先輩に突っ込む海堂先輩。


でも、そんな先輩達のおかげで、喧嘩になりそうなあたしとリョーマ君に流れていた不穏な空気は消えた。何で、リョーマ君が怒りそうになっていたかは分からないけど、喧嘩にならなくてよかった。




***

結局何の集まりだったか分からないまま、解散して、帰りはリョーマ君に送ってもらうことになった。


「リョーマ君、何か怒ってるの?」


「…怒ってない」


怒ってるじゃない…。やっぱり不二先輩の言った通り素直じゃないかもなんて…、人のこと言えないけど。


「怒ってるじゃん」


あたしは、先を行くリョーマ君の前に回り込んで顔をのぞき込む。


「!……」


「膨れっ面だね!」


「はあ、……」


回り込んだあたしと目があったリョーマ君は溜息を吐いて、さっさと歩き出す。


「あ、待ってよ!」


「…置いてく」


「ごめんってば!」


あたしは、本当に置いてかれそうな雰囲気だったから、小走りでリョーマ君に追いついた。


「…ほら行くよ」


「あ、うん」


結局は待っててくれるんだよね。それが彼の分かりにくい遠回しの優しさ。リョーマ君なりの、ね…。


夕日が沈む先に二人で並んで帰って行く二つの影。


少しは、仲良くなってきたって思ってもいいよね?だからあたし、勇気を出してみようと思うの。


「リョーマ君、携帯教えて」


「…いいよ、別に…」


「じゃあ、今日送るねっ」


「…勝手にすれば」


教えてくれた後に、プイッとそっぽを向く彼を可愛いな、なんて思いながら、リョーマ君に分からないように笑いをこぼした。




***

「ただいま…」


「おかえりなさい」


香山を送ってから帰ってきて、直ぐに自室に入ってベッドにダイブした。何かいろんな意味で疲れた…。


それと同時くらいに鳴り響いた携帯のメール着信音。

──────────────
受信メール
08/05/13 19:28
aishite-ruyo@sora.ne.jp
美咲だよ
━━━━━━━━━━━━━━
リョーマ君!
今日は送ってくれて
ありがとう(*´д`*)ノ
地区予選近くなってきたよね!
応援行くから頑張って

-end-
━━━━━━━━━━━━━━


香山からのメールが届いていて、直ぐに登録してから返事を返した。


──────────────
送信メール
08/05/13 19:32
美咲
RE:美咲だよ
━━━━━━━━━━━━━━
別にいいよ…
地区予選くるんだ?

-end-
━━━━━━━━━━━━━━


敢えて香山じゃなくて、美咲で登録したのは、俺がいつかそう呼べるようにって意味なんだけどね…。


それから暫くメールのやり取りを繰り返してから、眠りについた。まさか、香山も俺と同じ事考えてたなんて思いもしないで───。




....
(リョーマさーん、夕食…あら)
(何だリョーマの奴、寝ちまったのかよーつまんねぇなー…)
(叔父様、リョーマさん携帯握ったまま寝てる……)
(!──…青少年にも春到来かー?)


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