結局先輩達の盛り上がり様から歯止めが利かなくなり、放課後、絶対香山を連れて河村寿司に来いとまで言われた。 「ほんと?」 「うん、うん!」 その当の本人は、竜崎と小坂田と談笑してるし…、このまま誘えば間違いなく、俺が香山に気があるってバレる…。 「あ、リョーマ様!今日、部活ないんでしょ?一緒に帰りましょうよ!」 「え…」 またややこしいことになるって、香山だけでいーんだけど。つーか邪魔しないでよ。 「朋チャン、あたし先帰るね」 「何でさ!美咲も一緒に帰ろうよ!」 「え、でも…」 「折角、リョーマ様と帰れるのよ?勿体ないって!」 帰ること決定かよ…、俺は香山に用があるんだって…。 「…悪いんだけど俺、今日先輩達と別の用事あるから…」 「えー!…分かりましたー」 とにかく、これで小坂田達が来ることはないだろ。後は、香山にどうやって知らせるかなんだけど…。 そこで、香山と目があったけど直ぐに逸らされた。何か、傷つくんだけど。 「じゃあ…」 「さよーなら!」 「バイバイ、リョーマ君」 「…!」 俺は特に何も言わずに、教室を後にした。その通りすがりに香山の手に紙を握らせて。 *** 「はあ…、」 あれで伝わってれば、ここに来るはずだけど…。先に学校を出て、河村寿司の前で待ってる事にした俺は、まだ店に入らず、ドアに寄りかかっていた。 「ほら、そこよって!リョーマ様!」 「煤c」 何の冗談だよ…。俺、一人でって書かなかったっけ? 何でかしらないけど、小坂田と竜崎と一緒に来た香山に溜息がこぼれた。 「なーんだ!リョーマ様も此処だったのね!」 「…(もう誤魔化しきれない」 ガラッ───── 「越前遅ーなって…!あ…」 「桃先輩!」 「て、ことは皆さんいるんですか?」 桃先輩がいきなり出てきて、完璧に逃げ場を失った俺は香山に視線を向ける。別に怒ってるわけじゃないけど…。 「あ、えっと…」 「いいよ、別に…」 謝ろうとしたのか、そわそわする香山に溜息を一つ吐いて、先に入った竜崎達に続いて中に入ろうと香山に背を向ける。何だかんだ言って来てくれたことが嬉しかったし…。 「リョーマ君」 「…何?」 それを香山に遮られて、後ろから呼び止められた。何かと振り返れば、落ち込んでるのか、俯いている香山の姿が目に入る。 「あたし、帰るよ…」 「何で」 今、来たばっかじゃん…。 「だって、皆テニス部関係なんでしょ?あたし…」 「いいから」 俺は、グダグダ言う香山の手を引いて中に無理矢理連れ込んだ。…俺が会いたかったのは香山なんだし、帰られたら困る。 .... (好きな奴と一緒にいたいのなんて) (当たり前じゃん……) |