都大会も終わり、あたしも無事に退院して普通の学校生活に戻っていた。
今日は席替えの日──…、
やっと堀尾君から放れられるーってちょっと酷いけど、もしかしたらリョーマとなれるかもって朝からワクワクしていた。
「美咲」
「あ、おはよ//リョーマ」
「はよ、…一緒にいこ」
「うん//」
登校中に多分偶然遭遇したリョーマが差し出してくれた手をとって一緒に歩き出す。
最近では学校でもオープンに付き合っているあたし達は、たまに反感も買うけど、前以上に幸せに学校生活を送っている。リョーマは隠すの嫌いみたいだしね。
「怪我もう平気?」
「うん、何ともないよ」
「…もう、あんな無茶しないでよ」
「し、しないよっ」
もうあんな痛い思いしたくないし…狽ナも亜久津さんは悪くないと思うけど…。心配してくれるリョーマの優しさに感謝しながら、握られた手にそっと力を込めた。
「…それと、亜久津さんから伝言(言いたくなかったけど…」
「え?」
リョーマがあたしに応えて手をギュッと握ってくれたのかと思えば、そういうもんだから、反射的に見上げてしまう。亜久津さんから伝言て何だろ…。
どこか言うのを躊躇っているようにも思えるその表情にあたしは段々と不安になってくる。
「…また会いに来るとか言ってた…」
「へ?」
「けど会わなくていいから」
「……リョーマ(汗」
あー、これってひょっとしてヤキモチなのかな?(笑)だから言うの躊躇ってたんだよね?
「何?」
「ヤキモチ妬いてるみたいだからちょっと優越感」
ニコッと笑ってそう言うと、リョーマの大きく見開かれた目がムスッとしたモノに変わる。
それが¨嫉妬¨を物語っていたことに、本人は気がついてないみたいだけど。あたしはそれが凄く嬉しかったよ。
「妬いてない」
「じゃあ亜久津さんとこ今度行こっか」
「ダメ」
「クスッ//…嘘!」
「……(ハメられた…」
繋いでいた手を離して、リョーマの腕に抱きつくと、ハメられたのが気に障ったのか悔しそうに顔を歪める彼。
ヤキモチやきなリョーマだけど、自分の気持ちをちゃんと表に出してくれるからあたしは安心できるの。
それに、いつも負けてばかりだからたまにはお返ししたってバチは当たらないよね?
「美咲、歩きにくいんだけど」
「いーの//」
「……(何か素が出てきた気がする」
いつもみたいに謝って放れたりしない。何だか今日は、少しもリョーマと離れたくなくて…、
何だか胸騒ぎがする……、
まるでこれから大きな嵐がくる前の静けさ、のような奇妙な感覚がした。
***
「何で男といるんだよ、美咲…」
そんな二人の様子を物陰から睨みつける金髪の少年が一人いた。
後に彼が美咲と越前の関係に影を差す人物となるのは、もう少し先の話────。
止まっていたはずの運命の歯車が今ついに動きだし、断ち切られたはずの糸が複雑に絡み合いだした。
....
(今日、やけに甘えたがるんじゃない?(笑)
(うんっ//今日は何だかリョーマと離れたくなくて)
(!──へぇ、(可愛い、) |